打倒、GUNDAM MILLENNIUM!!

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まったくとんでもないサイトができたもんだ。


与謝野折檻さんが主宰する「GUNDAM MILLENNIUM」は、俺が知る限り日本語ガンダム考察系サイトの最高峰である。「人文系ガンダム」を旗印に、ミリタリーや歴史、博物学、言語学等々の豊富な知識を総動員し、ガンダム世界の諸矛盾へ切り込んでいく姿勢は雄々しく、美しい。アカデミックな姿勢もさることながら、それを遂行していく手法も誠実で、信頼がおける。なによりガンダムに対する「愛」と「誠意」がこちらにもビシビシ伝わってくる。こんな優れた才能に出会えただけでも「インターネットやっててよかったあ」としみじみ思えるってもんだ。


1994年頃、大学生だった俺はゼミ論や卒論を書くためにワープロを買った。ゼミの担当教授が、手書きを認めない方針の人だったからだ。とりあえずは「膣」や「陰茎」を変換して遊ぶ毎日だったが、やがてブラインドタッチの練習がてら、長い文章を打つ必要を感じるようになる。とはいえ作家を志してる訳でもなく、何をどう書いたものか、見当もつかない。

そこでポツポツと書き始めたのが、好きなモビルスーツについてだった。最初は記憶だけで書いていたが、やがてのめり込み、資料を調べたり買い求めたりするようになる。こうしてフロッピー1枚分のテキストができあがった。これが「MS天国」の原型である。

ネットサーフィンを始めたのは1997年の初頭だった。なんの考えもなくパソコンを買い、なんとはなしにマスコミに乗せられて、プロバイダーに加入した。サーチエンジンに最初に打ち込んだ単語は「オマンコ」だったが、まじめに見てまわったのはやっぱりガンダム関係であった。個人が世界中に情報を発信できるインターネットだから、さぞかしコアでマニアックなガンダムサイトがゾロゾロ出てくるんだろーなーと思っていたのだ。でも正直言って、それは期待はずれであった。

MSデータベースのようなものもいくつかあるにはあったが、多くはMSのスペックに数行程度の解説がついている程度。それなら既存のガンダム本と、大して変わらない。「ああこの記述、あの本のあの部分を丸写しにしてるな」というのも少なくなかった。ましてやそれぞれの機種について、原稿用紙数枚分を費やして深く追求しているようなものは皆無だったのである。

「なーんだ、コレだったら俺の方が全然すっげーじゃん」。お調子モンの俺は正直そう思った。MSデータ系のサイトは数あれど、ココまでやってる奴ぁそうそういねえだろう。こうしてウェブ版「MS天国」は始まった。大して人気があったとは思わないが、それでも一定の評価は得られたと思う。少なくとも1997年後半〜98年前半の間、「MS天国」はウェブ上の日本語MSデータサイトの極北であったと自負している。ま、自負しているだけだけどさ。

しかし「MS天国」を始めて半年ほど経った頃、俺はトップページの紹介文を変更する。「モビルスーツの研究」という言葉を「研究ごっこ」に変えたのだ。やってて段々、辛くなってきたんである。「MS天国」を進めていけばいくほど、「研究」と名乗るほどのアカデミックな素養も才能も、自分の中にないことがハッキリしてきたからだ。それはもう、イヤというほど。その事実を自分で認めるのはそれなりに辛いことだったけれど、今ではそれに気づいただけでもマシだと自分を慰めている。シコシコ。


そんな時に華々しく登場したのが「MILLENNIUM」であった。「考察」という言葉の本当の意味を、思い知らされたような気がしたものである。「ああ、『ごっこ』に変えといてよかったあ。とんだハジかくところだったぜ」心の底からそう思った。まだコンテンツが豊富、という訳にはいかないが、それでも現在アップされているテキストだけで、圧倒されることは間違いないだろう。

そこで、そこでである。ひるがえって思いを寄せるのは俺と俺の「MS天国」だ。今まではお山の大将でいられたかも知れないが、最早こんなすげえサイトが出来ちまった。それじゃあ俺はどうするんだ? 負けを認めてあきらめて辞めちまうのか? エグエグ泣きながら尻尾巻いて逃げちまうのか? そもそも勝ち負けの概念を持ち込んでること自体、俺は間違ってるとは思うのだが、それにしても、だ。

それはイヤだ。俺だってガンダムが好きだ。モビルスーツが好きだ。確かに「ごっこ」だったかも知れないが、それでも俺なりに出来ることをやってきた。考察を進めてきた。なにより負けを認めるのが悔しい。ムカつく。腹立たしい。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。エヴァじゃないけど逃げちゃダメだ。ガンダムだって逃げちゃダメだ。

絶対ブッ殺す。 


まずはtelnetとかcgiとかを勉強して、向こうのカウンターをリセットするという嫌がらせを計画したが、面倒くさいのであえなくパス(あくまで面倒くさかったから)。続いて掲示板に「死ね死ね死ね死ね死ね死ね」って5000回くらい書いて荒らしてやろうとも思ったが、やっぱり面倒くさいのでパス。

とりあえずヤツ(既にヤツ呼ばわり)にかなう点はなんにもない。少なくともアカデミックな面においてはかなわない。だとすれば、俺が勝てる要素はなんだろう? いろいろ悩んだ結果、それは「娯楽性」ではないかという思いに至った。そうだよ、お笑いだよ。お笑いなら俺、ヤツには負けねえよ多分。

アカデミックよりペダンチック。これは「衒学的(げんがくてき)」と訳され、文字通り「学問を衒う(てらう)」つまり「学問ぶる」「学問風に気取る」という意味である。自ら「ごっこ」であることを、再び認める訳だ。「ごっこ」を認めた上で、今度はそれを逆手にとって、思い向くまま気の向くままに、つらつらとやっていけばいいと悟ったのである。

「生まれてきてすいません」におけるガンダム系コンテンツは、こうしたポイントオブビューにもとづいて再出発する所存である。もちろん「MILLENNIUM」から学べるところは学びつつ、おいしいところだけ頂いてくつもりだ。そのうえ俺様の「お笑い要素」がプラスされれば、再びウェブ上に敵なし、となるに違いない。

覚悟しとけ。 

(1999/2/4)


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