無実とする根拠について

無実とする根拠について

 俺様が,『替え玉』と称する小説を書いたのは,91年1月発行予定の「抒情文芸」 57号への投稿に間に合う時期だった.真犯人を捜査本部の警察官であるとした設定も 全くの思いつきであった.                            だが,その小説がボツになったずっと後になって,一冊の本を購入した.それは, 『宮ア勤裁判(上)佐木隆三著 朝日新聞社刊(91年8月1日初版)』である.俺様は この本を読むうち『小説の通り…』との確信を持った.               それは,犯行声明と称する,朝日新聞本社に宛てられた手紙の記述の一節だった. これは警察内部の人間にしか書けないと思える箇所があった.それは,新聞紙上では 割愛された部分であったのかも知れない.                     それは,今野真理ちゃんの遺骨を段ボールに詰めて置いたのは自分であるとする, 告白の手紙であり,手紙の主はその中で,警察の発表について『狭山警察署長が嘘を 言い,捜査員には真実を明らかにしていない』と言明している.           つまり手紙の主は警察の発表を『署長』と『捜査員』と二手に分けて考えている. こんな発想が,普通の犯罪者に生まれるだろうか? 発表に嘘があれば,警察自体が 嘘をついたと考えるだろうが,こんな区別はしにくい.               この識別は,警察内部にいる人間が,その環境に染まった常識で,世間にそのまま 通用するものと錯覚して,新聞社宛に投稿したものだと思える.それが,警察宛では ない点に,手紙の主の心情が隠されている.                    更に,この手紙の文面には,人間の骨に関する記述があり,単純に死体を観察した 結果だけではない,死体一般の特徴のような記述がある.何処か,警察職員の臭いを 感じさせるものがある.                             加えて,この著書の内容からすれば,手紙が到着した時点では,公表されていない 骨の鑑定依頼の必要を匂わす記述まである.つまり、歯科医は,歯の専門家であり、 骨そのものを調べた訳ではないと…。                       俺様が,この箇所を読んだ瞬間に,その手紙は,警察内部の人間が書いたものと, 直観した.それは俺様が過去に,警察内部にいた人間が事件に関して新聞に投稿した 遠い昔の事例を知っているからである.                      客観的に書いたつもりでも,どうしても警察内部にいる人間のクセは出てしまう. この手紙が犯人からのものであるなら,これは,明らかに警察内部の人間であると, 俺様は確信せざるを得ない.                           また,マスコミでも伝えられた,疑問点として,88年12月の,絵梨香ちゃん殺害の 行動について,ラングレーを現場付近で脱輪させたとしているが,この脱出を助けた 会社員の証言では,車は断じてラングレーではなかったとした.           この目撃者は,車に詳しい人物で,自分の証言に自信を持っていたようだったが, 結局,それでは,現場で2台の車が脱輪した不自然な形態になるので,思い違いだと された経緯があるようだ.                            俺様は,この事件は,真犯人が犯行を認め,全てを自供して,証拠も揃えた上で, 別の人間,宮ア勤氏に,証拠をそっくり持たせて,犯人に仕立て上げたと推察する. このラングレーではなかったとする証言は重要である.               どんなに証拠を揃えようと『替え玉』は真犯人ではないが故に,後から,無理矢理 辻褄を合わせれば,何処かに必ず矛盾が出て来る.この車種の違いこそ,その一つの 例である可能性もある.                             宮ア勤氏が逮捕された直後,マスコミは,その手の障害と犯行を結びつけることに 必死だった.ところが,最近になって,『24人のビリーミリガン』と言う多重人格の 犯罪者が話題になると,今度は彼を多重人格にした.                俺様も,この本は読んだのだが,もし彼が多重人格であれば,真先に彼の異常な, 言動が周辺で注目された筈である.何故,今,宮ア勤氏は,多重人格にされるのか? 同一の人格では,犯行に辻褄が合わないからだろう.                辻褄が合う訳がない.真犯人である警察官と,その身代わりにされた二人の人間が 絡んでいるからだ.一人の人間に多重人格を見るのではなく,現実に複数の人間が, 関わっているとみれば説明は付く.                        ところで『宮ア勤裁判』では,そのあとがきに『一審判決が出るのは92年夏以降に なりそうだ』としている.今は,96年夏である.然し,未だ一審判決は出ていない. 余りにも長すぎはしないか?                           証拠も明らかで,問題がないのであれば,何故,こんなに一審判決が長引くのか? 俺様の印象では,ほとぼりを冷ましているとしか思えない.事件の公判が開かれても それが全く報道されない時もある.                       『覚めない夢の中で犯した犯行だ』とか,『鼠人間が現れてマネキンのようなものを 落としていった』とか,俺様に言わせれば明らかに強度の催眠術にかけられて犯人に 仕立て上げられた容疑者の言葉である.                      或いは,何度も『鼠によく似た』取り調べの警察官に,マネキンを使って,犯行の シミュレーションがなされて,犯人であると思い込まされて来た経緯も考えられる. 彼は,決して直接犯行を認めている訳ではない?                  何よりも宮ア勤氏は,未だに単なる容疑者に過ぎず,決して真犯人だと断定された 訳ではないのだ.然し,世間では,もはやこの事件は決着が付いたと思われている. ほとぼりは覚めている….ここから彼はどう扱われて行くのか? ** 悪魔 **
 冒頭に戻る