緊急声明の印象からの雑念

緊急声明の印象からの雑念

 前回のタイトルを,大げさに『…衝撃の…』としたのだが,俺様自身の感覚では, やはりこの程度の幼児並みの判断能力で弁護をしていた…とする合点を感じたのだ. 弁護士の無為無策ぶりは,以前からも感じていた.                 A少年が大人であれば,当然,無罪の主張を展開するところを,珍妙なる教育的な 配慮とやらで,医療少年院送りに同意してしまう.警察,検察,弁護士,判事ドモは 独立した組織でも人でもなく仲良しクラブだった.                 ここで『非行事実』という用語に戸惑うのだが,文脈からして一般に言うところの 『犯行事実』と考えてよさそうだ.猟奇殺人を『非行事実』と軽く受け流し,気軽に 医療少年院送りに同意する安易さが鼻につくのだ.                 それも自らの調べでA少年の犯行事実を確認したのではなく『どうも事実として, 彼の犯行には間違いないのではないか?』とする推測で,起訴事実を簡単に容認して 有罪を認めて医療少年院送りとして一件落着した.                 自分たちの職権を犯され,先行して出されたマスコミの有罪判決に,弁護士ドモは これに従わないと自分たちの立場が危うくなるのではないか? そんな保身の術から 判決理由を提示しないマスコミの裁きに追従した.                 要するに,唯一,A少年の味方であった筈の弁護士までが,警察発表に加担して, 事実関係の調べを,言わば敵側に依存して『どうもやったらしい』と,顔を見合せて 世間にいい顔するにはどうしたらいいかを考えた.                 警察の幼児並み作文を金科玉条のごとく押し戴いたマスコミが,何の検証もせず, これを大々的に世間に垂れ流して尾ひれを付けた.そのウンコを押し戴いた弁護士が それを丸飲みにして,使命を忘れて少年を叩いた.                 ここに至ると,警察に逮捕されたら,その事実だけで,最高裁判決が出されたのも 同然の結果となる構図が見えてしまう.密室の取調室が出した結論はマスコミの手で 判決として報道されて,裁判所はそれを追認する.                 俺様の当初からの懸念は『神戸事件の真相を究明する会』の緊急声明を信じるなら 歴然とした事実として,これが裏打ちされた.世の中全体の,自らの使命の前に死す 誇りと潔さを忘れた風潮の一端を見る思いである.                 マスコミも弁護士も,最終的には裁判所までもが,事件に関する事実関係の調べを 警察に任せて,独自の調査を放棄しているのである.あくまでも被告を護る弁護士の 立場からの調査,判事の公正な調査を欠いている.                『A少年は夢でも見ているのではないか?』との弁護士の印象も,宮崎勤のケースと 似ている.強い暗示を受けて犯行を植えつけられた痕跡の一端と見ることも出来る. 孤立無援の環境で,連日責め立てられれば当然だ.                 冷静な判断力を有するのは,当然だと思っていた弁護士までが,実は,マスコミの 下した判決に影響されて,本当は展開したかった筈の無実の主張を引っ込めた.誠に マスコミの影響力は強力で,正義の心まで歪める.                 そのマスコミが,インターネット上で起こる非難中傷,名誉棄損など瑣末的事件を 取り上げて『ホームページは便所の落書きにも等しい世界だと言われている』などと インターネットを仮想敵国の一端と認識している.                 マスコミにとって,個人が勝手に情報発信することに敵対感情を抱いているのだ. 報道は自分たちの独壇場で,唯一真実を発信する場だと一般に錯覚させてきた伝統が ここに来て崩壊しようとしているからでもあろう.                 例えば,一般の人間がマスコミを通じて情報発信するには,投稿が唯一の手段で, 然も,そこには厳しい規制がある.二重投稿禁止である.採否すら知らせないことで 都合の悪い情報が,拡大する不都合を防止出来る.                 マスコミは,各社横並び同一内容を連日報道しておきながら,個人には二股掛けた 情報発信を許さない.同じ情報で二つのところから謝礼を受け取るのはけしからんと 言いたいのか? 然し,それも微々たる額だろう?                 マスコミ自身は,幾らでも同じ内容を繰り返し報道するが,末端の庶民ごときが, 天下のマスコミ様に向けて,同一の情報を大量にばら蒔くのは無礼であるっ! と, 叱り飛ばすのである.庶民をゴミ扱いにしている.                 それでも執拗に二重投稿を繰り返すと,ブラックリストが作成されて,以後,一切 採用されなくなったりする現実もあるのだろうか? 然し,マスコミ自体が,巨大な ゴミを吐き出し続ける『マスゴミ』の実体もある.                 独自の視点を失って,横並び報道に徹するマスコミは,判断力も画一的であるから 二重投稿に簡単に引っ掛かって,同じ情報を取り上げてしまう弱さもあるのだろう. 似たり依ったりの画一キャスターが並んでおる….                 その遙か昔,俺様も一時期,新聞などへの投稿をしていたことがある.二重投稿の 体験はない.それは倫理にもとるものだと固く信じていた.然し,採用されないなら 他に…とは考えた.然し,問い合わせも出来ない.                 これに熱中すると,採用される快感と謝礼への欲が出て,新聞社の論調に合わせて 迅速な投稿をするテクニックを覚えてくる.それは,自己主張を失って,マスコミに 忠実な思考力を培養してしまうことにも繋がる….                 ものを書いて生活することを目指せば,必然的に売れる内容にこだわる傾向が出て マスコミが買ってくれる内容に限定した執筆になろう.もしマスコミに健全で自然な 自浄力があれば批判を積極的に受け入れるだろう.                 然し,今,そんな期待は全く持てない時代である.例えば,神戸の事件で,果して マスコミの見解と違った主張を展開出来る作家がいるのか? 話題は,他に幾らでも ある….マスコミの逆鱗を避ける作家ばかりだ….                 これほどマスコミが煽って世間を騒がせた事件にもかかわらず,マスコミの主張に 疑問を投げかける作家の記述が見当たらない実態は,マスコミの主張に異論を唱える 論理が明らかなタブーになっている背景が見える.                 一度,週刊誌で野坂昭如が,A少年を犯人だとは思っていないと,誌面にぎっしり 思いの限りを綴った事実がある.納まる字数だけでは,とても語り尽くせない内容で 連載になっても不思議はなかったが以後は沈黙….                 翌週の記事は『作者の都合により…』という理由で,彼の作品の掲載はなかった. 前週の勢いからすれば,幾らでも続きは書けた筈だし,当然,それ位の原稿の用意は あっただろうと推測出来る.俺様はボツを疑った.                 そんな経緯などを考えると,俺様は『神戸事件の真相を究明する会』の活動を高く 評価するものである.俺様の主張に耳を貸さなかったヤツが,二冊の冊子を読んで, 考えを改めた.短くても内容に説得力があるのだ.                 俺様のうだうだした記述を読むよりも,遙かに真相を突いた迫力がある.俺様は, 今,この会に,この冊子を置いてある全国の書店の一覧表はないかと問い合わせた. そして一両日中に送りますとの返事を受けている.                 テレビ局が徹底して無視する冤罪冊子,週刊誌が過激派の陰謀と断定した二冊が, 本当に信憑性のない内容なのか否か,是非とも,俺様の世界を訪ねた人々に,自分の 目で確認した上で判断して戴きたいと考えている.                 改めてマスコミに問うっ! 何か重大な事実を隠したまま,お前たちは必要以上に 神戸小学生首斬り事件に関して沈黙を守っているのではないか? いい加減に全てを 吐いて楽になったらどうなんだ.スッキリするぞ?                                        ** 悪魔 **       ・目次に戻る