『マスコミ真理教』への疑惑と不満は尽きぬ

『マスコミ真理教』への疑惑と不満は尽きぬ

 被害者が行方不明になった5月24日の神戸は,雨が降ったり止んだりのぐずついた 空模様だった.この当日と同じ条件で,産経新聞の記者は,犯人が逮捕される前に, 通称タンク山に登る現場検証をしたとされている.                 山の高さは五十メートルとされ,遺体が隠されていた中継局舎へは4つのルートが あるとされている.最短距離の東側はコンクリートが敷かれており,二・三分歩くと 舗装が途絶えて,貯水タンクの前に出るとされる.                 いずれにしても急坂で,子供の遊び場になっていたり,付近の中高校生が,足腰を 鍛える場所にもなっている状況があるという.人の目を気にするなら,ここは犯人と 被害者が通ったルートではないとされたのかも….                 タンク北側のルートは,急勾配で,土肌が剥き出しのまま,アンテナ基地へ続く, 高さ15メートル程度….然し,ぬかるみに滑って記者は斜面にへばりついたまま, 動きが取れない状態となってしまったと記される.                 貯水タンク南東側のルートが雨の中でも比較的進みやすいとされている.それでも 雑木に足を取られたり,いばらで手足がかなり傷つけられるという.下からは死体を 担いでは上がれない.然し,頂上では可能なのか?                 周辺は,無数のけもの道に枝分かれしていて複雑であるようで,他のルートからは 中継局にたどり着けない様子が伺える.人目に付かぬ場所で殺害し,その場所から, 抱き抱えてでも背負ってでも,運搬は可能なのか?                 いずれにしても小柄な中学生には,かなりハードな作業には違いない.現場検証が 車の中からという異例な状態で行われて,殺害現場が特定された印象もない.漠然と 山中で殺害,中継局内で首を切断と簡単に終わる.                 極めて不確定な状況の中で,中学生が逮捕されて,証拠も後から揃える体たらくで 供述も二転三転した.通常,こんな供述は信用できないとされる.然し,精神異常の 所為であるとして,現行犯逮捕したように裁いた.                 犯人がなかなか逮捕されず,住民もマスコミも警察も苛立った事件であった筈だ. 少なくとも,犯人逮捕の記者会見は,警察自体が捜査が長引いたことを詫び,意外な 犯人逮捕に十分な説明をしなければならなかった.                 少なくとも未成年者を猟奇殺人の犯人として逮捕したのである.本当に犯人である 十分な説明と裏付けが説明されなければならない.実際,逮捕された時には,何一つ 証拠はなかった.警察は記者会見から逃げ出した.                 愚かな記者どもは,何とか容疑者の周辺に接近しようと浮足立って,警察発表には 何一つ疑念を持たなかった.個々の記者は,信じられない思いがあっても,ともかく 記事のネタを掴まねばならず,発表に忠実になる.                 兵庫県警は,事件を軽く見ていたのだろう.だから安易に容疑者逮捕を発表した. 警察庁長官狙撃事件では,具体的な供述をした現職警察官の存在をひた隠しにした. 発表を抑えて十分な裏付けをする配慮はなかった.                 誰も気がつかない内に,取り敢えず警察署に引っ張り込んで,徹底して監禁する. 絶対的な聖域の中で,容疑者は,とてつもない精神異常者へと変身させられて行く. 報道は,視聴者読者を犯行の目撃者にしてしまう.                 今や,A少年の犯行を疑う者はいない.全ての人間が,あたかも自分が彼の犯行を 目撃したかのように彼の犯行を確信している.彼の犯行を冤罪だと考えないまでも, 客観的な視点で,状況と供述を整理すべきである.                 世の中に,どれだけの評論家・識者・作家がいるのか知らぬが,履いて捨てる程の 世論をリードする筈の職業人が,皆,少年を犯人と断定して,そこから一歩も動かぬ 固執振りには,呆れる前に鬼気迫るものを感じる.                 金を貰って世間に情報を伝えるこれらの輩は,自らが感じることを素直に表出せず 取り敢えずマスコミの意向を伺って,それに逆らわない視点を模索して,マスコミに 取り上げられるように意見を調整して商品化する.                 作家であるとされる佐木隆三は,時折,TBSのニュース番組に出演して,少年の 心の闇を説いている.脇では,ジッとキャスターが目を光らせている.とても作家の 意見を拝聴する姿勢ではないところが恐ろしい….                 言論の自由が保障されている筈の日本の社会だが,本当に自由な視点から,自らの 本音を語れる作家や評論家がどれだけいるのか.全てマスコミの論調の前に沈黙して 自らの著作を鐘(金)にしてマスコミに打たせる.                 自分からは決して鳴らぬ鐘である.マスコミに打たれ,マスコミの警鐘に共鳴して 同じ音を出して鳴り出す.得体の知れぬ長いものに巻かれて,個を滅して魂を抜いて マスコミ寺の中で打ってくれるのを待つばかり….                 現代人は,テレビがないと生活が出来ないそうだが,俺様には単に煩わしいだけの 騒音でしかない.主婦は,テレビに心を奪われている典型的な存在だが,これが為に 夫は大黒柱の地位を奪われて信用を無くしたのだ.                『あんたがそう言っても,テレビがこう言ってたモン…』世のオッカァどもは,一番 身近で頼りになる夫を忘れてテレビと浮気に走る.妻の身も心もテレビに奪われて, 夫は情事が済むまで寂しくベランダで煙草を吸う?                 たった一つの側面だけでしか事件を語らぬマスコミに不満を持つ俺様も,何処かで マスコミに心を奪われている.それでも事件を多角的な視点で捉えて,様々な立場で 事件を自由に語るなら俺様の不満は消えてしまう.                 マスコミが様々な視点からの情報を,個を捨てて報道する本来の使命が全うされる 現実があれば,敢えて俺様が書く必要もない.然し,全ての報道機関がたった一つの 視点だけを絶対的な真理として語る異常さは何だ?                 まさしく今の世の中は『マスコミ真理教』が支配する世界である.これに逆らうと 手厳しく断罪される.地元にばら蒔かれたとされる冤罪説に対し,これは核マル派の 陰謀だと断定した週刊誌の例は,その典型だろう.                 テレビのニュースに頼る連中は『そんな話は知らない』という.カーラジオでも, そんなニュースが流れた記憶もない.マスコミの論調に合わないものは無視されて, 特異な事件であっても報道もされない実体がある.                                        ** 悪魔 **       ・目次に戻る