処分決定に伴う疑惑

処分決定に伴う疑惑

 A少年の処分は,弁護側も母親も彼の罪を認めた上で,一切の抗告がなされぬ形で 円満に結論が出た.大きな存在に言い含められた….無実かも知れないと言う俺様の 思い込みの視点では,そんな印象が拭い去れない.                 発表される内容の中に,不自然な内容を盛り込んで,将来,冤罪を晴らせるように するから,今は,このまま医療少年院送りで納得しては貰えまいか? もしかしたら そんな裏取引がなされたかも知れない疑惑を持つ.                 遺体となったガッシリした体格の小学6年生を,小柄だと伝えられるA少年の力で 本当に施設の中に運び込めるものだろうか? 遺体の運搬方法は,捜査の上で重要な ポイントである.運び得ぬ者の単独犯はあり得ぬ.                 更に,筆跡の問題もある.犯行声明はマスコミで紹介されたが,少年自身の筆跡は 全く公開されていない.『あたかも筆跡が一致したかのように云々』して,自供へと 追い込んだ部分が記録から削除されたとするが….                 この部分も曖昧な表現で,筆跡は一致していないとも受け取れる.もし犯行声明が A少年の書いたものではないとしたらどうなるのか? 単純に結論付ければ,少年の 犯行ではないことの証に繋がる重要な事実である.                 通常,犯行声明には,犯行の動機が盛り込まれてしかるべきだが,内容を重視せず 単純にマスコミ受けを狙った作文だったと,少年の本当の動機と切り離してしまった 不自然な経緯が,一致しない筆跡に連動してくる.                 最近になって,A少年は『直観像素質』なる能力をもっていたと報道されている. 一度見たものを写真のように記憶する能力だとか? A少年は,捜査員に犯行声明を 諳んじてみせたと,少年の犯行を更に強調する….                 だが,ちょっと待てよ? 自分の書いたものに,果して直観像素質が働くものか? あり得ても,諳んじてみせたこと自体,彼の犯行を裏付けるものには繋がらない…. 一人の普通の少年に特異な性質が山盛りにされる.                 先に購入した産経新聞の本に依れば,生首が発見された時,口に挟まれた文書は, 血染になって,はっきりと判読出来ず『鬼薔薇』と黒板に書いて記者に発表された. 生首からは,まだそれだけの血液が流れていた….                 最終的な異例の裁判所の発表でも,首は斬られて二日経過したものが,置かれたと 日時の経過からはっきりしている.両親と自分の他に,二人の兄弟がいる家に生首を 持ち帰って風呂場で洗って保管したとは思えぬ….                 マスコミは,誰一人検証のしようがない『少年の心の闇』など,ひとまず置いて, 検証が可能な,これらの疑惑について,納得の行く説明を試みたらどうか? 然し, 彼らもまた,猿ぐつわを噛まされた囚人に過ぎぬ.                 この本の中に,生首が発見された朝,正門前に黒の車が頭を突っ込む形で止まって 30歳位のガッシリした体格の男がいたと,近くの高校生の目撃談が,間違いのない 事実として書かれているが,報道はされなかった.                 本の中で,結果的に報道しなくてよかった.少年が逮捕されたのだから,その車は 事件とは関係がないことが明らかだから…との結論を出している.結局,マスコミの 判断力とは警察ベッタリから抜けきれないものだ.                 記者の印象として,首の存在に気がつかなかったのか? それとも気がついても, 作り物だと思ったのか? などと自問自答するが,彼が置いた可能性については深く 沈黙する.車を隠れ蓑にすれば,置くのも楽だが?                 あるいは,警察は早くから,この車の所有者と人物を特定して犯行を確信したが, 逮捕して発表する訳には行かない何らかの事情があって,ダミーとして逮捕するに, 都合のいい人物を物色して,少年を標的にした….                 処分が決まった今,果して事件に関心を持った多くの人間は,本当に少年の犯行に 間違いないものだと納得出来ているのだろうか? KKCの未常識的論理のような, 怪しげな説明に本当に全ての人間が納得したのか?                 前回,購入したことに触れた産経新聞の本の中に,記者が想定で書いた冒頭陳述の シミュレーションがある.冒頭陳述は,こんなものになるだろうという記述である. これとても肝心な部分はサラリと通過してしまう.                 遺体を中継局の中に運び込んで云々….首は,家族が寝静まった真夜中に風呂場の 水道で洗った….筆跡は,変えて書いたが,頻繁に使用する「す」「は」に,自分の 筆跡が残ってしまったと問題の箇所を書いている.                 遺体の運搬について,容疑者逮捕の前には,小学6年生とは言え,体が大きいので 大人でも一人で運び込むのは大変だと考えられていた.それを中学生がどんな手段で 運び込んだのか? 火事場の馬鹿力が出たとでも?                 家族が寝静まった真夜中に風呂場で生首を洗ったと簡単に言うが.いつ誰が起きて トイレに立つか分からぬ.水音に気づかれれば,当然,何事かと様子を見に来られる 危険が伴う.そこまでして洗う勇気があったのか?                 この事件に関する取材をまとめて記者が本にしたものとは言っても,結局,既成の 事実と,供述された犯行の経過を緻密にたどって検証を試みた迫真に迫る内容からは 程遠い.警察発表には何一つ疑念を抱いていない.                 中学生が犯行を犯したとは,とても信じられぬとしても,警察発表を疑うところに 発展することは絶対にないのである.加えて,新聞社自体が他社の動きを重視して, 他社が絶対的に見向きもしない視点には立てない.                 つまり,多くのマスコミがA少年の犯行と断定する中にあって,これに逆らって, 大手マスコミが冤罪説を打ち出すようなことは絶対にないのだとの確信が得られた. 何百社あろうとも結論は皆一つで独自路線はない.                 一時期,久米宏が冤罪説を唱えたとされたが,その後,そんな様子は全くないとの 知人の話である.とどの詰まりが,マスコミ全体の意向に逆らってまで,ささやかな 自分の地位を危うくしたくない保身の術を使った?                 どうやら,この国は弁護士から裁判官,更には烏合の衆たるマスコミまで,警察の 発表に対しては,これをいささかも疑うことなく,辻褄合わせに奔走して,協力する 体制が整っている.正に警察国家さながらである.                                        ** 悪魔 **       ・目次に戻る