証拠書類開封の重罪

証拠書類開封の重罪

 十月二日の朝日新聞夕刊を読んで,大げさに言えば仰天した俺様である.何しろ, A少年の精神鑑定書は,マスコミが発表した時点では,依頼主である神戸家裁の手に 渡っていなかった.この日の午前中に提出された.                 一体,鑑定に当たった精神科医は,そうした情報をマスコミに漏らしても,罪には ならぬのだろうか? マスコミから取材を受ければ,ホイホイ患者の情報を漏らして 依頼人の手にその結果が渡る時には手垢だらけ….                 神戸家裁は,手元に鑑定の結果が届けられる前に,その情報がマスコミに流されて 徹底したA少年裁きに使われてしまった現実に抗議はしないのか.俺様には,情報の 窃盗を天下のマスコミが行うことが信じられない.                 事前に漏れた情報に基づいて,マスコミが勝手な裁きを下して,散々大騒ぎをした お祭りの後で,公平な審判など,本当に行えるのか? もし結論が違って来た場合, マスコミは,それを報じるのか,口をつぐむのか?                 実際,未だ審判は開始されておらず,事件書類の証拠調べなどもこれからである. 然し,マスコミでは,この断片的な情報から,A少年に対する攻撃を行う.つまり, 執拗に『犯行時の精神状態』を強調して報道する.                 そこで執拗に強調されるのが,反社会的行為の繰り返しがなされたとする表現で, A少年の印象を更に悪くする報道である.然し,繰り返される報道の中で,俺様には 『生首のお持ち帰り』へと繋がる印象が薄くなる.                 盗み見た鑑定結果を恥も外聞もなく報道するマスコミは,もっともらしく『いかに 事件の再発を防ぐか…』などと危惧するのであるが,その辺のガキ共が,好き好んで 『生首お持ち帰り』など,本当にすると思うのか?                 事件の後,動機が千変万化する不自然な形態は何なのか? 当初は,どうしても, 捜査が開始される前に校門の前に首を展示したかった.それだけ学校に対する恨みが 強いとされたが,今や性的快感を感じていたとか?                『酒鬼薔薇』という名前への執拗なこだわりが性的快感の後に訪れたのか? 一字も 書き損じのない手書きの犯行声明などは,その内容に強いこだわりがあると思える. 事件の様相は,報道によって支離滅裂にされた….                 マスコミ報道は,一度としてA少年の犯行に疑問を持ったことがない.審判までは しっかり事実の冷静な確認が必要だった.マスコミは,A少年を異常な犯罪者として 強調するのだが,鑑定はそれに追いついていない.                『病気という程ではないが,これを放置すると将来云々…』であって,この程度では 『首斬りお持ち帰り』と言う異常な事件へと結びつく必然は感じられて来ないのだ. 異常性を強調するマスコミ騒ぎが空回りしている.                 さすがに,これだけでは不十分と考えたのか,新たに異常な性的な衝動を,動機に 加えた.本当に鑑定は,そんな観察を得たのか? マスコミは,次々に異常な内面を 伝える.一人の中学生の心に全部が入り切れるか?                 客観的に中学生の犯行が可能だったのか否かの検証は全くなされていない.まだ, 審判が開始される前からの徹底したA少年裁きには何か裏があるのか? それとも, 宮崎事件以後,マスコミは裁きの権力を得たのか?                 審判の前に,これだけA少年を徹底して裁く報道があった後,神戸家裁は,冷静な 判断を下せるだろうか? 何からか理由で,A少年の犯行に疑惑が出た場合,事実に 従えるものか? 報道は十分家裁への圧力となる.                 再発防止という大義名分で,A少年叩きに徹するマスコミだが,その本当の意図は 何処にあるのか? 犯行とは直接関係のない,A少年の印象を悪くするだけの情報が 矢継ぎ早に流される.家裁への圧力としか思えぬ.                                        ** 悪魔 **       ・目次に戻る