救い難い『行為障害』

救い難い『行為障害』

 週刊文春10/2号に『ついに版権を引き上げた灰谷健次郎にこれだけの後ろ指』と 題して,彼を批判する記事が掲載されていた.まず新潮社からは,雑誌の編集方針が 許せないなら最初からうちから出版するなと言う.                 ともかく神戸首斬り事件に関して,週刊文春とか週刊新潮は,特にA少年裁きには 力を入れている.少年法の建前で詳細な情報が入って来ない状況と言いながら,彼の 犯行には,何故か絶対の確信を持っているようだ.                 文藝春秋社とか新潮社は,それぞれ文学の新人賞を設けて,作家の登竜門としても 知られている部分もあるが,応募した入選作の版権というのは,それぞれの出版社に 帰属するとされる.作家には,逆らう道とてない?                 何とか作家になろうと,必死に努力して入選しても,結局,このようなところから 作家の第一歩を踏み出してしまうと,その編集方針に逆らえない軟弱な作家に育って 自らが本当に主張したいことは書けなくなるのか?                 彼に対する批判は,更に,カメラマンの言葉を借りて,彼は24時間風呂に入れる 豪邸に住んでおり,清貧のイメージから程遠いとする.記事は,これを受けて更に, 四谷に高級マンションの仕事場があるとしている.                 仲間を引き連れて海外旅行に繰り出して豪快に奢ったりしていると,金持ちぶりを 揶揄する.更に,彼は,自分で出版社も持ち,著作は学校の課題図書に指定されて, 自社で出版すれば丸儲けだと,しきりに悔しがる.                 極めつけは,インタビューライターの体験だ.インタビュー記事を見せたら,私の 言いたいことが書かれていないと激怒され,書き直すと謝れば,無能な者が例え何度 書いても同じだと罵られたと泣き言を入れている.                 記事に穴を空ける訳にも行かず,拝み倒して書いてもらったとして,傲慢な態度が 生意気だとばかりに批判する.結局『後ろ指』とはこの程度である.先のライターは 匿名ながらテメェの無能と恥を晒しただけである.                 A少年の逮捕は,人権への配慮という視点で,全くこれを無視した形で行われた. 本当に犯人かという徹底した検証を警察自身も行っていない.記者会見も僅か7分で 逃げ帰るようにして強制的に終わらせてしまった.                 この事件に関して,マスコミの反応は一様に,A少年を真犯人と断定した視点で, 全ての報道がなされている.昨日は,精神鑑定の結果が発表された.『行為障害』と 病名が付けられ,治療が必要だとされてしまった.                 未だ審判は下されていないのに『犯行時,責任能力があった』と断定できるとか. 一体,これから行われる審判というのは,どんな意味があるのか.今朝の朝日新聞に 依れば,性的な衝動も関連していると報じている.                 つまり,A少年は『殺害時や遺体切断の際に性的に興奮していた』と話したとか. すべては,彼の犯行が絶対的なもので,もはや疑いの余地はないように見えて来る. 『懲役13年』の作文は変に浮き上がってしまう.                 俺様が,精神鑑定の結果とされる内容から感じることは,例え何がどうあろうと, つまり,無実であっても,治療が必要だとして隔離する口実を設けたのだと思える. 『行為障害』とは便利な病名で誰にも当てはまる.                 俺様は,毒ガスや武器を使って,鼠,ゴキブリ,ハエ,蚊などに対する惨殺行為を 繰り返し平然と行う.いずれも神の産物である罪のない小動物である.その行為は, 衛生上の配慮という大義名分を固く信じた結果だ.                 A少年が,猫殺しをしたとされるが,動機は可愛がっていた犬の餌を横取りされた 恨みからだとされる.鼠は駆除してもよいとされるが,猫は,その対象から外されて 『行為障害』とされてしまう.何とも解せぬ話だ.                 俺様は,もしかしたらA少年は,何の罪もない一人のつまはじきにされただけの, 気の毒な少年なのかも知れないと思う.然し,マスコミは,彼を徹底して害虫として 断定して,幾ら裁いても罪にはならぬ人間にした.                 マスコミ報道を鵜呑みにして,審判も下されていない少年に対して徹底した裁きを 下す世の全ての人間もまた,救い難い『行為障害』に陥っているのである.もはや, 精神科の医者までが,精神病を患った社会である.                                        ** 悪魔 **       ・目次に戻る