未熟な判断力が下す死刑判決が恐い

未熟な判断力が下す死刑判決が恐い

 八月一日,永山則夫に死刑が執行されたと言う.最終的な死刑判決を受けたのが, 90年だという.彼が事件を起こしたのは68年である.当時,彼は19歳だった. 4人も殺した人間が,その後29年も生きられた.                 俺様は,永山則夫に死刑が執行されたことに異議はない.彼が4人の人間を殺した 現実に疑いの余地はない.弁解の著作活動まで行った.『生きる希望を与えておいて 殺すのか』と憤った彼であるが被害者とて同じだ.                 そこに全く冤罪の疑いのない事件ならば,例え十九歳と言えども,犯罪の残虐性を 考えて死刑に処することにも異議はない.案外,死刑にならないとする法の規定が, 安易な殺人へと走らせた原因になった懸念もある.                 俺様は,法律の規定を悪用する意識が芽生えた時点で,大人と断定すべきであると 考える.法律が未成年者を保護するのは,適応能力の未熟さに十分配慮して,教育の 至らざる部分を補正し更生の道を開く意味がある.                 永山則夫の場合,結局,自分が殺した四人の人生に配慮した雰囲気がない.俺様は 犯罪者の弁解など聞く耳は持たない.そこには因果応報,信賞必罰,目には目をが, 正しく実践されることに期待をかけるだけである.                 ただ,神戸首斬り事件の場合,容疑者の少年Aが犯行を行ったとするには,まだ, 様々な疑問が残されていると俺様は感じている.警察発表が鵜呑みにされるだけで, 一度として,検証や分析が加えられていないのだ.                 既に一審判決で死刑が下された宮崎勤の場合も,捜査段階の取り調べには,分析や 検証がなされぬまま,さながら聖なる儀式でもあるかのごとく扱われている.実際, 彼が上申書を提出した経緯も知らぬ判決だった….                 結局,いかなる根拠に基づいて流されたのかも解らぬマスコミ報道を真に受けた, およそ本物の裁判らしからぬ死刑判決であった.先行するマスコミ報道が,事実上, 結審を導く.容疑の真偽は検証されることなく….                 この時期に,当時未成年者であった永山則夫が死刑を執行されたのは,未成年者の 犯罪に対する恫喝の意味合いがあるのだろう.暗に,宮崎勤,少年Aも絶対許さんと 死刑にせんとする睨みを効かせているかのようだ.                 犯行そのものに,下される判決は,極刑以外に考えられぬ.然し,それはあくまで 真犯人に対して正しく裁きが下されてこそ意味がある.ほんの少しでも冤罪の疑いが 考えられるならそれを徹底して検証されるべきだ.                 これと比較して妙に冷静な報道を続けているのが,奈良・月ガ瀬村の女子中学生の 殺害事件である.一向に犯人裁きに進展しない.十四歳の少年には徹底して厳しく, 成人の犯罪には,冷静な報道に留める理由は何か?                 状況を考えれば,犯行の目的は,ひとえに強姦目的であり,顔見知りである以上, 犯した後は,生かして帰す訳には行かないから殺したとする推測が俺様の中にある. 強姦殺人などありふれているから騒がないだけか?                 おりしも喫茶店のテレビが,少年Aに対する審判が開始されると報じた.そこで, 最大の焦点は『犯行の動機の解明』にあると,勝手に断定している.そうではない. 本当に彼の犯行か否かが真先になされる筈である.                 一体,誰が少年Aの犯行だと決めているのだ? どれだけそこに根拠があるのだ? 報道がここまでA少年裁きに徹しているのをみると,やはり,これは国家的な陰謀の 疑いさえ持ちたくなる.冷静な報道が一つもない.                 警察は,最初,学校に対する恨みからの犯行だと発表した.然し,弁護士の接見で 学校に恨みはないと報じられるや,今度は,それを修正してしまった.少年は,自ら 二重人格を言い訳にしようとしたが,見破ったと.                 もし少年が何とか罪の言い逃れをしようと画策していたのであれば,社会に出たら また殺したいとか,何年の間に何人の純粋な魂を奪うとか,出所後の殺人計画まで, 平然と語るものか? 矛盾だらけ謎だらけである.                 校門前に首が置かれた事件で,学校への恨みが原因と考えられたこの事件も,今は 完璧に,少年Aの心の中に巣食ったバモイドオキ神の所為にされてしまった.学校に 何の責任もなく,犯行は,少年Aの心にあると….                 今回の事件は,少年が犯したとされているのに,教育の責任でもなければ,学校の 責任でもない.こういう異常な人間が出てしまうことは,避けられない必然であると 処理されようとしている? 結局,神が悪いのか?                 俺様に言わせれば,警察のでっち上げ事件が,神の所為にされたんじゃ堪らない. これが壮大なる計画の下に実践された陰謀であれば,家裁でも,彼の犯行は覆る訳も なかろう.報道を疑う報道は何処にも存在しない.                 警察発表という,犯罪摘発の原点に対して,何らの検証も分析もなされぬままで, 裁判が進行し,有罪が確定し,時に,その行く末に死刑執行があるのだ.警察発表に 厳然とした査察手段なくして死刑には賛成できぬ.                 週刊朝日8/15・22合併号には『誰もが抱く13の謎を解く』と題する記事があった. 然し『本当に少年は犯人か』とする基本的な疑問は指摘されていない.ただ報道陣が 警察発表を誰も信じなかったとするのが面白い….                 彼らは,自分では何も考えることが出来ず,警察発表に従って捜査員の真似をして その裏付けを取るだけの取材活動をしていた.唐突な警察発表に,それでも彼らは, 即座に順応して忠実な番犬となり容疑者に吠えた.                 この記事の冒頭にも,現場の大量の血痕の存在を無視して,首を風呂場で洗って, 天井裏に保管したと執拗に書き立てる.全ての報道陣が警察に寝首をかかれたのに, 信じられぬ現実に,何処もこれに疑問を持たない.                 犯行メモをスクープした朝日新聞は,地検から会見への出席を禁じられたとか?  取材が出来ない致命的な立場に陥ることを恐れて,記者が警察と検察の忠実な番犬に なってしまう.スクープは警察に利用されたが….                 宮崎勤にしてもA少年にしても,一度も取材記者と面談していない.全ては警察と 検察の一方的な発表だけが事実として伝えられ,それを鵜呑みにして徹底した裁きが 行われている.この先に現実の死刑が存在する….                 この現実が本当に法治国家なのか? 人権の面では完璧に放置国家である.もはや この国は,国家としての体をなさなくなっている.一社の保険会社が潰れただけで, 大蔵省が契約者保護も出来ぬ現実が象徴的である.                 もしも俺様が冤罪だと主張する二つの事件が,事実そうであったなら,この日本は 世界から,国家としても認めて貰えなくなる可能性がある.今からでも遅くはない. 自浄作用を以て,警察発表を徹底して裁くべきだ.                 これら二つの事件が欧米先進国の手によって,日本の未熟な冤罪事件の典型として 暴かれぬことを願うばかりである.この国は民主主義国家に値しないとして.日本に 英国東洋艦隊壊滅の恨みを持つ英国が統治する…?                 人間が犯した犯罪に対しては,相応の刑罰が必要であり,人を殺した者に,死刑が 執行されることは当然であると考える.ただ,マスコミの幼い判断力が,司法判断に 狂いを生じさせることを最も強く恐れるのである.                                        ** 悪魔 **       ・目次に戻る