犯行声明と犯行メモ

犯行声明と犯行メモ

 俺様は,神戸首斬り殺人事件で,犯人が書いたとされる『犯行声明』については, 警察当局から,何一つ,明確な説明がなされない点に不審を抱くのである.例えば, 自分の名前について全体の三分の一を割いている.                『暗号でも謎かけでも当て字でもない、嘘偽りないボクの本命である』と強調する. 否定する三つの単語を並べて,自分の本来の名前を強調した以上,逮捕されて警察の 取り調べに際しても明確な説明をする筈だと思う.                 ただ『本命』に特別の意味が込められているのか,それとも『本名』をホンメイと 読み間違えていた前提で,ワープロ変換にかけた結果なのか? 警察発表への信頼は 犯行声明の謎が解き明かされるところに生まれる.                 然し,犯行声明の内容に対しては,ほとんどその説明がなされない.犯行声明で, 強調されているのは,本来の名前で呼ばれたことがなく,それを使うことを許さない 義務教育と社会への復讐から晒し首にしたとある.                 俺様の脳裏にくすぶる違和感は,義務教育の現場で現実に教育を受けている生徒が 義務教育を批判する姿勢である.今を認識できぬ人間の特性を見るに,義務教育への 復讐は,生徒の中から生まれて来るとは思えない.                 然も,教師に叱られて学校へ来るなとまで言われて,教師への恨みがあったとか, なかったとか,容疑者は,本当は学校へ行きたがっていた,学校の出来事を気にして いたとあった.義務教育という次元に立てるのか?                 文面をよく読めば,この犯人は,以前から殺人を繰り返している雰囲気を臭わす. ただ今回,晒し首にしたのは,自分の名前を広く世間に知らしめるためと強調する. 殺人罪でマークされながら逮捕できない存在とは?                 犯行声明は,警察の動きが『ボクの存在をもみ消そうとしている』とするばかりか 『警察も命をかけろとまでは言わないが、もっと怒りと云々』とする.犯人逮捕に, 命を賭けるとは,単純な象徴的表現なのだろうか?                 俺様は,その真犯人を警察が捕らえることは,同時に警察自身も命取りになると, 文字通りに解釈したくなる.中学生を徹底して犯人と断定した一連の警察発表とか, マスコミ報道の意味は,そんな推測を満足させる.                 俺様は,この犯行声明から更にこんな連想をしてしまう.どこかに『酒鬼薔薇』の 名前が現存するが,それは,何かの理由で,表向き使うことが許されず,やむを得ず 別の名前を使わざるを得ない状況が実在している?                 その『酒鬼薔薇一族』は,代々殺人鬼の家柄で,取り締まる側は,いつの時代でも それを知りながら,手出しが出来ぬ恐ろしい呪縛の罠が仕掛けられている.時代が, 平成へと変わっても,その伝統は受け継がれた….                 だが,遂に一族の中に反乱分子が現れた.このまま世間に本当の名前も知られず, 黙々と殺人を繰り返すだけの宿命を担わせられることに,我慢が出来なくなった者が ここに来て,突然,プッツンと切れてしまった….                 人間が,壊れやすい存在だとか意外に丈夫だとか,通り魔事件で発表される程度の 低次元の殺人の話とは思えぬのである.事件の犯人が,表舞台に現れた唯一の痕跡は 犯行声明である.徹底検証されない理由は何処に?                 俺様は,以前この事件について横溝正史の『悪魔の手毬唄』を連想するとしたが, 改めて犯行声明の背後にあるものを連想してみると,感覚的に似た雰囲気を感じる. バモイドオキ神云々の世界とはまるで違っている.                 容疑者宅から,連続通り魔事件に関する犯行メモが発見されたとして,今になって それが公開されている.ならば首斬り殺人について,更に詳細なメモが書かれている 可能性が高いと思われる.然し,その情報はない.                 マスコミ報道では,通り魔事件のメモにある記述の延長線上に,何の違和感もなく 首斬り殺人が起きているとする.当然,自らの内側に向けた犯行メモと,一般社会に 向けた犯行声明では,書き方も違うとは思うが….                 生まれた時からついていた名前を使えない怨念が渦巻く犯行声明と,犯行メモでは まるで別人の書いた内容のように思える俺様である.容疑者とされた少年が,本当に 首斬り殺人を行ったのか一度も疑問は持たれない.                 その割に,証拠が十分に揃っているとも思えない.それをカバーするかのように, 通り魔事件の容疑について,警察もマスコミも,執拗に犯行メモを話題にして,彼の 犯行と首斬りの証拠能力の弱さをカバーしている.                 警察から発表になった犯行メモの内容には,容疑者の周辺から聞かれた情報とは, まるでかけ離れている.オカルトめいた話題など,まるで出て来なかった.つまり, 警察発表は,一般の情報とかけ離れた内容である.                                        ** 悪魔 **       ・目次に戻る