『宮﨑勤裁判』(上)を読んで(3)

宮﨑勤はＯＡ機器に精通していない　容疑者が捕まる前の幼女連続殺人事件に関わる報道は、犯人像として、ＯＡ機器に精通した、印刷関係の仕事に従事する人物が想定されていた。然し、それは何処から類推されたことなのか？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　改めて考えると、例えば、犯行声明として朝日新聞社に郵送された文面は、コピーされたものとは言え、その実態は手書きである。父親の経営する会社は、ＯＡ機器の最新の機械を導入していた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　だが、この著書に因れば、宮﨑自身は、それらのＯＡ機器を使いこなせず、単純に電子複写機で拡大コピーをしていた程度とされている。何故、犯人像として、こんな的外れな想定がなされたのか不思議である。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ちょっと拡大コピーを使ったと言うだけで、ＯＡ機器に精通となるのか？　まして印刷関係の仕事に従事とは…。全ては宮﨑勤の生活環境を、そのまま犯人に想定した推測なのである。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　公判も最初から、宮﨑勤の犯行自体を容認した前提で進められている。二ヶ月も、全く、弁明の機会も与えられない中で、犯行を自白した経緯だけが伝えられている。全ての犯行を自白して公判に望んでいる。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　然も、自白に基づいた捜索の結果、遺体を発見するなどの明らかな物証を伴って、もはや否定しようのない状況を経ている。こんな状況の中で、宮﨑勤が無実であると主張する俺様は狂っているとしか言いようがない。　　　　　　　　　　　　　　　　それでも、俺様の印象では、犯行を自白した人間と、公判の席に立った宮﨑勤が、同一の人間とは思えないのである。弁護側の意見書の朗読も、最初から宮﨑勤自身の生活環境に触れる等、減刑を想定した展開となっている。　　　　　　　　　　　　　この本の著者もまた、彼の犯行であることに、何の疑念も抱いている気配はない。後は、精神鑑定の問題だけなのだろうが、取り調べの経過の中で、そういう異常は、まるで伝わって来ない。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　公判の席で、検察側も引き出していなかった『綾子ちゃんの両手は自分で食った』などの供述をしている宮﨑勤である。公判の席で、精神異常を装ったのだろうか？　ならば逮捕の直後からその片鱗が見えていい。　　　　　　　　　　　　　　　　　　この辺りから考えても、犯行を自白した人間と、公判に被告として出廷した人間は全く別人の可能性を否定出来ない俺様である。徹底した催眠術を施され、幼児殺しの記憶を植え付けられて犯人にされた…。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　父親の会社に30年間働いて来た工場長が、宮﨑勤の印象について『得体の知れないところがあって、何かとんでもないことをやるのではないかと心配だった』と語っているとされる。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　言ってみれば、第三者の立場で、期せずして長年にわたって彼を観察して来た人の言葉であると思える。そういう意味では、何らかの胡散臭さが彼にはあったのか？　一見、おとなしそうな好青年には見えるが…。　　　　　　　　　　　　　　　　　　このような人間に、何故、俺様が無実だと肩入れをするのか？　それは、俺様自身よく分かっていない。俺様は、自分が感じる印象を、素直に語っているに過ぎない。真犯人は、厳罰に処せられて当然である。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　だが、彼が本当に真犯人であるのかどうか…。この一点には、どうしても肯けないものがある。最初から、そこには違和感があった。途方もないそんな印象から、何故抜け出せないのか？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　実際、この裁判は、その後、７年を経過して尚、一審判決も出ていない。俺様が、当初から感じた違和感と同じものが、関係当局の中にも、あるいは存在するのか？　俺様は、自分の思い込みが何処から来るのかを知りたい。　　＊＊　悪魔　＊＊　　冒頭に戻る