『宮﨑勤裁判』(上)を読んで(2)

　敢えて死んだ父親の迂闊さと無責任を問う　宮﨑勤は，父親が警察の言葉を信頼して，母親が面会に行くことも止めた．実質，彼は本当に孤立無援の環境に置かれてしまった．父親は，その地域のいわゆる名士で五日市署の署長とも面識があったと言う．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　『他愛もない事件で迷惑をかけた』として，『今後のためにも厳しく戒めて欲しい』などと警察に対して，物分かりの良さを見せている．容疑が明らかになると，今度は被害者に済まぬと私選弁護人は付けないとした．　　　　　　　　　　　　　　　　　父親は，ここまで簡単に警察の発表を鵜呑みにして，息子と面会して，確認作業をすることもないまま，彼を見捨ててしまった…．外面ばかりがよくて，息子に対する愛情のかけらも見せていない印象を受ける．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　例え，世間にどんなに糾弾されようが，面会を求めて，事実を確認する最低限度の行動は取るべきだった．26歳の大人とは言え，そのような犯罪者に育て上げた責任を自覚するなら息子の行動を正面から見据える必要があった．　　　　　　　　　　　　結局，この父親は，世間体を考えるあまり，外面を良くして，親としての責任を，放棄していたとも言える．冷静に事件を見据える行動の一環として，弁護士をつける必要だってあった筈である．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　彼に弁護士がついたのは，逮捕されてから２か月後の89年９月22日，東京地検が，国選弁護人二名を選任したときである．オウム真理教の教祖に，十数名もの弁護士，それも国選がつく現実を考えると，首を傾げたくなる…．　　　　　　　　　　　　　この父親は，昨年自殺したとされるが，その原因は何であったのか？　マスコミはその詳細を伝えてはいない．俺様のように，最初から，疑いを持っていた人間には，マスコミに都合の悪い理由だったのか？　と考えてしまう．　　　　　　　　　　　　マスコミの前からも姿を消し，息子一人を警察に取り残して，一切の連絡もせず，マスコミの攻撃に晒して放置した…．世間と一緒になって自分の息子を叩くことが，親としての責任だとでも思っていたのか？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　それでも，インタビューでは，『息子は子供好きな優しい性格で，あんな事件に，関係するはずがない』とも語っている．そんな親として自然な感情を，何故，行動に発展させなかったのか？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　父親が積極的にマスコミに彼の部屋を公開した．これがきっかけとなって，世間のビデオマニアが，一斉に白い目で見られるようになった．この時期，俺様の知人が，新しくビデオカメラを買おうとした…．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「そんなもの買って何をするつもりだ…．全く…アブナイ奴だ…」などと，本当に，周囲から言われた現実もあった．ビデオを構えれば，即，それは幼女連続殺人事件に結びつけられた．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　この家族は，報道の渦の中で，完全になぶり殺しにされたようなものである．だが今日，もはやビデオに対するそういう印象は，全く姿を消している．何の懸念もなくビデオカメラを買える…．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　だが，宮﨑勤は，未だに犯人だと確定した訳ではない．全く，孤立無縁な環境で，攻撃の矢面に立たされた彼は，今，逆に，マスコミから努めて無視されているのだ．何かマスコミに後ろめたさがあるのか？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　断片的に伝わる情報は，異常な言動ばかりである．これは，意図的にそればかりが強調されて伝えられる印象すらある．積極的な味方が誰一人いない環境の中，７年も放置されたら…，狂うのも当然である．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　検察側は，４件の殺人の共通点に，人目につかぬ所で誘い，性器を弄びたい欲望を満たし，連れ去った以上，帰す訳にはいかず，殺意を以て絞殺したとされる．然し，逮捕された事件では，姉妹の一人を帰している．　　　　　　　　　　　　　　　　　このようなパターンは，他にその記述がない…．常に一人遊びの幼女に声を掛けた犯人の行動パターンとは，明らかに違う印象を受ける．顔を知られることを最大限に恐れる犯人の行動パターンとしては異常でもある…．＊＊　悪魔　＊＊　　　　　　　冒頭に戻る