『宮﨑勤裁判』(上)を読んで(1)

　例えば、いかに大人とは言いながら、一人の人間を現行犯逮捕した場合、警察は、その家族に、逮捕の事実を伝えないものなのか？　宮﨑勤の場合、逮捕翌日になって父親が警察に、息子が帰らぬと心配して連絡した。　　　　　　　　　　　　　　　　八王子署に拘留されているが、大した事件ではない…との返事をしている。家族が積極的に連絡するまで、警察は、家族に逮捕の事実を何一つ連絡をしていない現実がここにある。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　宮﨑勤氏が逮捕されて、第一回公判が開かれるまで八ヶ月…。その間、彼は、順次犯行を自供したとされる。公判当日は、右翼の街宣車までが繰り出して、『宮﨑勤を直ちに死刑にせよ』と叫んでいたとか…。これは何なのか？　　　　　　　　　　　　自らの思想的基盤を見失った右翼が、この程度の事件で、街宣車を繰り出すほど、やることがなくなってしまったのか？　天下国家を考える右翼が幼児連続殺人事件に首を突っ込む…。これは彼らの自主的行動なのか？　　　　　　　　　　　　　　　　マスコミ報道に乗せられて、前後の見境もなく短絡的に、法的手順を完全無視して直ちに死刑にせよとは…。こんな直情的反応から、日本の過去も忘れて、湾岸戦争でイラク征伐を叫んだのか？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　その起訴状が朗読されたが、彼は『全体的に醒めない夢を見て起こったと言うか、夢を見ていたと言うか…』そんな供述をしたとされる。果たして、このような人間が理路整然とした自供や供述が出来たのか？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　孤立無縁な中で、ずっと拘留されて取り調べを受けていた訳である。こんな立場に置かれれば、その人間をどのように洗脳することも可能である。少なくとも逮捕から二ヶ月間は、宮﨑勤に弁護士は選任されていない。　　　　　　　　　　　　　　　　拘留期間中に精神科医を呼んで、簡易精神鑑定も行われたが、すぐに分かる異常は見つからないとされた。自供も順調に進み、証拠も揃っている事件が７年も経過して尚、一審判決も出されないとは…。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　取り調べの現場が公開される訳ではない。相応の期間を置きながら、順次、犯行を自供していった経緯は、明らかに観念した犯人の取る行動なのだろうと思う。然し、公判での供述はすぐに分かる異常ではないのか？　　　　　　　　　　　　　　　　　つまり、元々の精神異常ではなく、拘留中に起きた容疑者の精神的な異変である。徹底した洗脳の影響で、彼はやってもいない犯罪を、あたかも実行したかのように、思い込まされた…。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　無論、犯罪者は、したたかである。罪を逃れんと必死に演技をする可能性もある。然し、全面自供をしたとされる宮﨑と、法廷での宮﨑は、どうしても、同一人物とは思えない。ここに多重人格が登場する訳だが…。　　　　　　　　　　　　　　　　　これほど検察側に都合のいい病状はあるまい…。全面否定されても、犯行を犯した人格が消えてしまった…。などと弁解が可能となる？　俺様が今、この事件を話題にするのは、今年、一審判決が出されるとの話からである。　　　　　　　　　　　　　一体、どれほどの人間が、俺様の見解に素直に肯くのかは分からぬ。今こそ冷静に宮﨑勤の言動と警察、マスコミの対応に注目してみる必要がある。ともかく未だ彼は真犯人と断定された訳ではない。　＊＊　悪魔　＊＊　　　　　　　　　　　　　　　冒頭に戻る