『宮崎勤精神鑑定書 多重人格説を検証する 瀧野隆浩著』を読んで(5)

『宮崎勤精神鑑定書 多重人格説を検証する 瀧野隆浩著』を読んで(5)

『悔い改めて関係当局はその大罪を懺悔せよ』 …虚しい叫びである…  俺様は,この事件を単なる冤罪事件ではなく,警察が明らかに真犯人を確保して, それを隠蔽して,無実の人間を,有無を言わさず,身代わりに仕立てた替え玉事件と 捉えている.更に,真犯人を警官だ断定している.                 宮崎勤逮捕から7年が経過して,新たな資料に接したことから,その疑いが確信に 変わって来ている.先の警察庁長官狙撃事件では,自供した警官の存在そのものを, 全く明らかにしなかった経緯も可能性を濃くした.                 通常,冤罪事件と言うと,やたら疑惑が残って本当に冤罪なのか? ただ,証拠が 不十分だけじゃなかったのか? そんな印象が免れぬことが多い.そして,真犯人は 解らぬままになって,事実上,迷宮入りになった.                 一審判決では,この本に書かれる関根・内沼鑑定をまるで,でたらめ扱いにして, 宮崎勤が単なる拘禁反応の中にあったと断定した.然し,彼が語ったのは事件前後の 記憶や体験である.拘禁中にあった事件ではない.                 この鑑定に書かれた一切を否定するのであるから,彼に性欲がなかったとするのも 嘘であって,母親の証言も身内をかばったものと評価されたのだろう.では宮崎勤が 拘禁中に見せるであろう性的な反応はどうなのか?                 この本の記述では,彼は一度も勃起したことがないそうであるから,その真偽は, 比較的簡単に確かめることが出来るかと思う.殺人を犯して捕まったので,もはや, その気にはならず,完璧に不能になってしまった?                 例えば,そのような結論を導き出すことも可能である.著者に語った,警察幹部の 『性欲を抑えきれずに,子供をその対象にした』と断言した話と,判決理由の記述は 明らかに強い性欲を持った人間の犯行を裏付ける.                 そのような強い性的な欲望を持った真犯人が居て,警察は明確にその供述を取り, 自供も基づいて証拠も発見したのである.だから,宮崎勤が冤罪の犠牲者だとしたら 代わりの真犯人が明らかに出来る事件なのである.                 意図的に画策された冤罪事件だけに,これは,絶対に真理が明らかにされることは ないだろう.マスコミとて,これを追及出来る立場にはない同じ穴のむじなである. 俺様の書くことは,ただの記号の羅列に過ぎない.                 例えば,俺様がここに書いたことから,宮崎勤が現実に釈放に至ることは基本的に あり得ない.もし,その可能性が訪れるとしたら,権力を支配する者が取り上げて, 判決に影響を与える強いパワーが要求されて来る.                 俺様が,ここで発信する情報は,単なる小麦粉に過ぎない.これがパンになるには 適度の水が加わり,強い加熱が必要になって来る.そして誰も,ここにある小麦粉で 新しいパンを作りたくない.宮崎勤パンでいい….                 散々,彼をこき下ろし,事ある毎に酒の肴にして食べ続けて来たのだ.今更,急に 『その肴は間違いでした.こっちを食べて下さい』と言われても,消化されたものは 取り返しがつかない.自分の罪も認めたくない….                 松本サリン事件では,容疑者にされた個人をマスコミがほとんど犯人扱いにした. 能無しの芸人までが『素直に認めればいいのにねぇ…』などとマスコミでコメントを 出していた.マスコミは無責任に掌を返しただけ.                 然し,今,裁かれている連続殺人事件では,掌を返すことは絶対に出来ないのだ. さながら宮崎勤の掌のように….事実をねじ曲げて報道し,でっち上げに積極果敢に 協力してしまったのだから….押し通すしかない.                 犯罪を立証することは,本当に難しいのである.一人の警察官が,犯人を現行犯で 逮捕したとて,それが裁かれるには,更に,多くの手順を経て,裁判ではっきりした 判決が下されなければならない.道は険しく遠い.                 例えば,冤罪は全て晴らされ,警察官の犯罪は全てが明らかにされ,一件たりとも 漏れがなく裁かれて今日まで来ているのか? 公開される情報は,極めて限られる. 必要な情報を隠せば,冤罪などは簡単に成立する.                 最近も,住宅に拳銃を発射した犯人と,それを教唆した犯人が自首したのに無罪の 判決が下され,検察側が控訴を断念したとする事件が新聞の片隅に掲載されていた. 拳銃の所持も発射も重大な罪になる現代にである.                 大きく取り上げられてもいい筈の事件だが,テレビで取り上げられた様子もない. 情報も裁きも穴だらけの現代である.宮崎勤の公判のニュースは,次第に小さくなり 異常性だけを,際立たせて報道する傾向が続いた.                 俺様が,ここで何を書こうと何一つ世の中が変わる訳ではない.勿論,自然に雨が 降り,雷雲が発生して落雷に打たれ,強い熱が加わる偶然が起こるかも知れない…. 然し,この世でパンにするには,素材が良すぎる?                 最大限の独善を以て言うのだが,俺様の文章がマスコミに掲載される事態は,先ず あり得ない.未成熟な世界にあって,俺様の文章は,余りにも美しすぎるのである. 紹介する者が自分の首を絞めてしまうことになる.                 その辺で稼ぎまくる有名作家という売文家とて,こんな書き方など出来はしない. 下らぬ雑念を垂れ流して,テメェのクソで飯食っていやがるのだから,俺様の文章を 見たら,眩しさに目が潰れるだろうて.ガハハハ.                 然し,この俺様の文章とて,これが清書ではない.かなり纏まった書き方をするが それでも全体のバランスを考えている訳ではない.思いつくままに書きなぐっている 状態である.言ってみれば下書き原稿に過ぎない.                 これまで,かなり手抜きをして,1ブロックの字数がバラバラであった.最近は, 99文字に統一して,ピタリと合わせているが,この程度の芸当は,ごく自然なことで 頭をひねって苦労していては長くは続かないのだ.                 書くスピードとて,その辺の作家が垂れ流しに書いている速度と,さして変わらぬ 筈だと勝手に思い込んでいる.心にもないことを書くのが作家であるから,仕上げに 時間が掛かって,時にはスランプだなどと嘆く….                 金に目が眩んだ者は,稼ぐのに忙しいから,肝心の技術が進化しない.一字,一枚 幾らの頭でしか,ものが考えられない人種なのである.従って,自分が書いた本に, 一体何が記されているかも分かっていないだろう.                 マスコミに飼い馴らされて,忠実な番犬になってこそ,彼らは初めてマスコミでの 活動が許される.彼らは,一見,自由にものを書いているように見えながら,決して 正面からマスコミと対決する姿勢を見せはしない.                 果して,一字一句たりとも修正せず,書かれた原文を忠実に,そのまま印刷される 作家がどれだけいるのか? 誤字脱字は日常茶飯事だろうし,とてもそのままでは, 出版出来る代物ではなかったりする現実があろう.                 それだけ現代では,マスコミが物書きの世界を牛耳っている雰囲気を感じる.昔は 新聞の一面に小説が掲載されていた.俺様が子供の頃である.今,一面の戯れ言は, 新聞社の人間が書いている.作家は,抹殺された.                 書くことで飯を食うことを考えるから弱くなる.まず魂を売り渡して,マスコミに 忠実な文章を書くだけの単純作業が作家の仕事になっている.国民を支配する存在は 垂れ流しのマスコミのゴミである.作家ではない.                 表現の自由の最前線にいる筈の作家は,独自の表現の場を持っていない.その場を 確保するには,出版する存在に魂を売り渡すしかない.今や,作家とて書いた報酬を 第一目的にする悪徳商人に成り下がってしまった.                 マスコミは,自分の主張の裏付けを証言させるために,専門家とか,作家ドモを, アナウンサーの脇に,しっかりはべらせ,余計なことを喋らないよう監視しながら? 話させる.じっと見つめる姿から,それを感じる.                 宮崎勤事件を最初から追い続けて,公判も見続けて来たという作家も,彼が犯人に 間違いないとする絶対の前提には,全く疑いを持っていない.最近の猟奇殺人でも, 彼を引き合いに出して,彼の凶悪さと比べている.                 容疑者に一番近いところで取材している作家や記者が,罪となる事実の認定には, まるで疑問を持っていない.一体,これから先,宮ア勤は,どのような論理を以って 死刑にされるのか? 俺様の関心は,そこにある.                 警察と検察やマスコミ,或いは裁判所も弁護士も,彼の犯行自体には一切の疑惑を 持ち出してはいない.こういう状況では,もはや彼の死刑は確定したも同然である. 精神異常として死刑から外される可能性も少ない.                 俺様の感じる疑惑は,結局,解けぬままに終わるのか? これだけの疑惑を現場に 近いところにいる関係者が,まるで感じている気配もない.おりからの猟奇殺人犯が 精神異常への逃げ道を完全に閉ざす可能性もある. ** 悪魔 **       ・目次に戻る