『宮崎勤精神鑑定書 多重人格説を検証する 瀧野隆浩著』を読んで(3)

『宮崎勤精神鑑定書 多重人格説を検証する 瀧野隆浩著』を読んで(3)

国民を欺く報道協定  宮崎勤が逮捕された後,何故か,マスコミ全体が突如,実名報道への反省ムードが 高まった.俺様は,何故突然そうなるのか,深い疑問を持った.報道されない重大な 事実が何か明らかになったに違いない感触を得た.                 報道が過熱して燃え上がっている最中,何の脈絡もないく,突然,実名報道自粛が 叫ばれたのだ.およそ厚顔無恥なマスコミには似合わぬ,通常では,絶対に有り得ぬ 展開である.俺様は,当時の小説に疑問を残した.                 奇しくも,今,この本の中で,長い間の疑問が氷解される記述に遭遇して,やっと 胸のつかえが取れた思いである.『犯行声明』と宮崎勤が書いた『上申書』の筆跡を 著者は,まるで違う字体として語る.(21,167頁)                 然し,当時の各紙の報道は「同一人物の可能性」だったと語る( 168頁).この時, マスコミは報道の裏側で,宮崎勤が真犯人であることに疑いをもったのではないか? 然し『別人ではニュースにならない』と無視した.                 多分,この本を書いた記者も,事の重大性に気づいていない.宮崎勤が真犯人だと 絶対的な確信を持っているからだ.多少の誤差があっても、総ては許容範囲の範疇と 片づけることが可能だ.容疑者には人権などない.                 筆跡の判定は,見方によって解釈が違って来ると著者も言うが,ならば,一見して 似ても似つかぬものを,各紙一様に「同一人物の可能性」となった経緯は,いわゆる 『報道協定』の陰謀と断じて差し支えはあるまい.                 ものの見方は千差万別,それぞれの立場でどのようにも見えよう.マスコミ各社が 『同一の筆跡』と一律に報じた理由は何なのか? 実名呼び捨てで,容疑者を,散々 叩いた後では,もはや訂正することなどは出来ぬ.                 一応,このまま犯人扱いで突っ走る.ただ,後日の言訳に,実名呼び捨て報道を, 自粛する等の論議を展開して,後ろめたさを払拭する.だが,死刑判決では寝覚めが 悪い.そこで徹底した異常者扱いで死刑から救う?                 高が,一人の得体の知れぬロリコン野郎の冤罪のために,天下のマスコミさまが, 信用を失墜させる訳には行かないのだ.これは,警察とて同じである.もし真犯人の 身替わりがバレたら警察の威信は完璧に崩壊する.                 記者クラブにお集まりのマスコミの皆様とも共通の利害関係にあることは明らか. 相身互い,一致協力して宮崎勤を,一気に死刑にして完璧に葬ることが得策であり, 宮ア勤への憎しみを一層煽り立てて頂ければと….                 冒頭に死刑判決の主文を持ってきた裁判所もまた,この計画の最終段階にて,最も 重要な役割を果たす.一審判決では,主文を冒頭に持って来て,細かい判決理由への 注意力を逸らした.誰もあんなもの読みやしねぇ.                 最近,新たに猟奇殺人事件が発生し,何かと宮ア勤との共通点を引き合いに,彼を 悪し様に罵るマスコミの姿勢も,計画に拍車を掛ける効果を生む.再発防止の効果を 発揚するためにも,彼は極刑に処する必要がある?                 一体,弁護士は,これまで何をしていたのか疑問である.結局,彼らもまたグルと みなければならない.大体,逮捕されて二ヶ月間,自分が接見するまでの,被告人の 取り調べ状況に何の不審も疑惑も持たないからだ.                 実際,今の時代,マスコミからの情報を遮断することは難しい.俺様がマスコミに 敵意を抱いても,そこからの影響を遮断することは出来ない.様々なマスコミ情報に 接してこそ,こんな話題も展開出来るのだから….                 ただ,そこから受ける情報を,どのように自分が感じるのか? その一点を自分の 責任でまとめるしかない.それがいかに世間の受け取り方と違ったものでも,それに 素直になるしかない.報道の常識には大穴がある.                 マスコミの情報も,それを感覚的に楽しんでいる内はいいのだが,そこから流れる 評価に疑問を持たず,自分の評価のように判断してしまう習慣は捨てる必要がある. マスコミには,常に,強い目的意識が流れている.                 巨大な目的意識に大金が掛けられて流されてくる.その生命力は,目的意識のない 一般大衆の心を支配することで獲得される.その情報に従うのは,一見すると自分の 利益のようだが,彼らは,それ以上の利益を得る.                 マスコミ情報に接する我々は,主役ではなく単なる彼らの餌に過ぎない.身近かな ところで,パソコン雑誌とて広告主に媚びへつらい,読者に真実を伝えない.我々は 一般投資家,一般預金者と同列のドブに過ぎない.                 宮ア勤事件に関する情報を,少し整理しただけで,これだけの疑問点が出る.更に これは拡大する可能性もある.俺様の提供する情報とて,それをどう判断するかは, 個々の自由である.受け入れるには抵抗もあろう.                 今まで多くの人間が抱いていたであろう宮ア勤への憎しみが一体何処から来たか? その正体を考えてみるのも無駄ではない.そこから改めて,宮ア勤を真犯人として, 憎しみ続けるも自由である.その勇気があれば…. ** 悪魔 **       ・目次に戻る