俺様流に書き換えた『判決理由』

俺様流に書き換えた『判決理由』


 宮ア勤被告に,ようやく一審判決が下された日の朝日新聞夕刊に判決理由の要旨が 掲載された.俺様は,それを読んだのであるが,紙面には,ビッシリと情け容赦なく 活字が詰め込まれていた.                            果たしてこの記事をどれだけの人間が真剣に読むのだろうか? 少なからぬ疑問を 感じた俺様である.そこで,これをキーボードで入力してパソコンに書き写すという 難事業を成し遂げた.                              更に,これを俺様流のデジタル・ブロック書法に書き改める作業を行った.また, その意味を強調する事実の挿入,無駄な部分の削除,[ ]で囲んだ俺様の印象を, 適宜つけ加えた.                                勿論,正確に意味を捉えるには,俺様ごとき者が勝手に書き改めた文章ではなく, あくまでも原文を読んで判断することが望ましい.ただ,この作業を行う過程から, 判決理由に,より深く触れた俺様でもある.                    全般的な印象としては,死刑判決とするための,理路整然と被告の犯罪を証明した 印象は全くない.感情に走って,何が何でも起訴されてきた被告を死刑にしなければ 気が済まないとする先入観に支配された理由だと感じた.              特に意外だったのが,告白文とか犯行声明などの文書が証拠として採用されていた 事実である.俺様の印象では,これは,とても被告の書き得たものであろう筈はない 確信から,これは第三者による悪戯と判断されると思っていた.           これを証拠採用したからには,犯行の残忍さ,遺族に対する同情を長々と盛り込む 前に,被告が書いたとする揺るぎ無い確固たる証拠を示すベきである.これがあれば 俺様は,彼を犯人だと断定できる.                        これらの文書に関して,各種の報道が伝える彼の主張は,あくまでもこれを書いた ことを否定している事実がある.夢の中の犯行としながら,この点だけはキッパリと 否定していることについて,この死刑判決は全く考慮していない.          果たして新聞に掲載された裁判所の判決理由要旨の記事の全文を引用することは, 著作権に触れる恐れがあるのか否か定かではないが,報道された事実を示しながら, 公正な判断を期する意味から,本文をこのクリックの下に置く. ** 悪魔 ** −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  判決理由要旨                                 罪となる事実                                 (略)                                     争点                                     被告は,弁護士や判事が立ち会いも確認できない孤立無援の中で取り調べを受けた 二ヶ月間の捜査段階でのみ,本件各犯行を自供し,更に,犯行状況等を,自ら進んで 上申書を提出し,積極的に具体的かつ詳細に供述したものである.          ところが,公判段階では,誘拐の犯意や殺意等を否定し,Aちゃんらの殺害現場に ネズミ人間が現れたとか,全体を通して夢の中でやったような気がするなどと述べる ばかりで,7年間にわたる公判の中で一度として積極的自供を再現していない.    そこで,本件の第一の争点は,被告の捜査段階における供述内容と,これに合わぬ 公判段階における供述のいずれが信用できるものであるかにあり,これを具体的かつ 詳細に検証するところにある.                          当裁判所は,事実認定を争わないとする前提から,裁判所が明確に確認のできない 捜査段階での被告の供述内容を絶対的に正しいものであると認定し,敢えて,そこで どのような取り調べが行われたかの検証は一切除外した.              よって結論は明らかだが,敢えて手順を踏めば,被告の本件各誘拐の犯意や殺意の 有無等を含め,捜査段階における供述と公判段階における供述のいずれが被告の本件 各犯行時の体験に近いものかの検証を試みる.                   第二に,被告の本件各犯行当時における精神状態はどのようなものであり,被告の 刑事責任能力をどのように判定するかということである.例によって密室で行われた 取り調べについての検証は一切しないものとする.                 当裁判所の判断                                一 被告の捜査段階における供述と公判段階における供述の信用性         1,2 略                                  3,被告の捜査官に対する供述は,公判での被告の様子からは,とても同じ被告が 供述したとは思えぬほどに,全体として整合性が保たれており,信用性も高いものと いうことができる.                               4,被告の公判廷における供述は,客観的事実とのかい離が著しく,本件各犯行の 動機・目的,態様,計画性,自己顕示と捜査かく乱の意図等との整合性にも欠ける. 7年前の供述内容に対して素直ではない.                     更には,弁護人からの質問に対する供述と,検察官からの質問に対する供述とでは 重要な項目につき一貫性に欠ける部分がみられ,かつ,検察官からの質問に対して, ことさら,的を外した応答が見られる.                      全体として,供述態度に素直さが欠けており,これをそのまま信用することは到底 できないものである.つまり,捜査段階の絶対的供述内容があれば,当法廷が7年間 観察した被告の態度の一切を考慮せずに判決が下せる.               二 被告の本件各犯行時における精神状態と刑事責任能力             1,本件一連の犯行における被告の行動は,極めて冷酷かつ非情なものであって, その意味では異常なものであるが,それなりに了解可能である.つまり責任能力ある 人間の犯行であるとの認定が可能である.                     被告は,Eちゃん事件で現行犯人として逮捕されるまでの間,犯人であることに, 直接結び付く証拠を全く残すことなく,一年足らずのうちに四回もの誘拐・殺人等の 犯行を反復した.                                更に,あろうことか,Aちゃんらの遺族に犯行を告知する行為を繰り返しながら, 家族等周囲の者らにも気付かれることがなく,狡猾に捜査の網をかいくぐって来た. これはとても病的な精神状態にある者の犯行とは認められない.           2 本件各犯行以前の被告,及び犯行当時の被告の生活状況から,被告は他者との 協調性の欠如,自己中心的な態度,易怒性等の症状を認めることができるが,被告に 病的な精神状態があった事情は見受けられない.                  3 慶応義塾大学教授保崎秀夫ら六人の共同鑑定意見によれば,逮捕前の被告は, 奇妙な説明はしておらず,逮捕後にされた犯行に関する説明は,了解できるもので, 記憶はほぼ保たれていたと思われる.                       犯行時,性格の極端な偏り(人格障害)以外に,特に精神病的な状態にあったとは 思われず,被告は完全責任能力を有していたと判断できる.[思われず,判断できる など『明らかである』とは程遠い記述で死刑を導き出している]           鑑定時に,簡単なことも分からないと言ったり,年齢の割に子供っぽく感じられる 反応や,矛盾することを述べて追及されると分からないと言ったり,一見すると退行 しているように見える症状が観察される.                     これについては,結構,周囲の状況は把握しているようであり,合目的的な内容が 多いことから,拘禁の影響が強く現れている状態(拘禁反応)に過ぎないとの判断が 下せる.よって精神病状態にはないとしている.                  上記,保崎ら鑑定がその理由として述べるところには疑問とすべき点はなく,その 結果は簡易鑑定とも一致し,二1,2に述べたところにも沿うものであって,十分に 納得できる.                                  これに対する意見として,帝京大学教授内沼幸雄,及び東京大学助教授関根義夫の 共同鑑定では,被告は,犯行時,手の奇形から生まれた人格発達の重篤な障害の下に 置かれていた点を重視している.                         敏感関係妄想に続く人格反応性の妄想発展を背景にし,祖父死亡を契機に離人症, ヒステリー性解離症状を主体とする反応性精神病を呈し,心神耗弱状態にあったとの 判断を下し,鑑定時も同様の状態にあるとしている.                しかし,同鑑定は,被告の公判段階における供述を,そのまま犯行時の体験として 理解したことによる所見である.被告の公判段階の供述は,拘禁の影響による妄想的 説明に過ぎない.                                これらの症状は,犯行時の体験として存在したものではなく,被告が述べる精神的 諸症状も犯行時に存在したものではないから,同鑑定の所見は,その基本的立場から 強い疑問が生じる.                               同鑑定は,祖父死亡を契機として被告が多彩な解離症状を示しているという.然し 祖父死亡後の被告の日常生活から,祖父に対する愛着を示す行動は若干あったものの 病的に異常な言動は認められない.                        家族等に対する暴言,動物虐待は,元からあった被告の性格傾向とみられ,被告が 祖父の死亡によって影響を受けたことは否定し難いが,反応性の精神病を呈するほど 精神的衝撃を受けたとは思われない.                       また,同鑑定が指摘する人格変換(多重人格)についても,その前提とする被告の 公判段階における供述が真実の体験供述ではなく,前提を欠いている.本件各犯行は いずれも性的欲求の充足という目的に沿った性犯罪である.             これは,被告のかねてからの性的関心に照らして矛盾はなく,犯行の経過に,常に 一貫した流れがあり,同様の犯行が四度も繰り返されている点で,被告に人格変換を うかがわせる形跡は見当たらないのである.                    これに照らすと,被告の各犯行時に人格変換が生じていたとは思われない.祖父の 死亡後被告の日常生活において,周囲が被告につき別人格の出現に気付いて,これを 指摘したり奇異に思ったりしたような形跡は見られない.              更に,本件捜査及び公判段階において,被告に別人格が現れたような形跡はない. したがって,内沼・関根鑑定は採用できない.〔然し,捜査段階における被告の姿は その後,完璧に姿を消している理由の説明は不十分である〕             次に,東京大学助教授中安信夫の鑑定意見によれば,被告は,犯行時,精神分裂病 (破瓜型)にり患しており,分裂病症状の易怒性ないし攻撃性の高進が,動因のごく 一部として惰性欠如が抑止力の低下として関与したとしている.           然し,免責される部分は少ないとする心神耗弱状態にあったと判断している.更に 同鑑定は,被告の高校時代からの関係・被害念慮,注察念慮は,そのころに発病した 分裂病の軽微な陽性症状であるとした.                      保崎ら鑑定後に発現した家族や不明の他者に対する被害妄想は,分裂病の明らかな 陽性症状であると判断している.然し,高校時代に存在したという関係・被害念慮, 注察念慮に関しては疑問がある.                         被告は,高校時代以降も破たんすることなく,それなりの日常生活を送っており, これらを手の障害に起因する被害感や劣等感と明確に区別して,分裂病の陽性症状と みてしまうには疑問がある.                           家族に対する被害妄想についても,両手の障害に起因する両親に対する強い敵意の 延長上にあるものとみることができ,他者に対する被害妄想も拘禁状態下で被害的な 心情を拡大していったことによるものと考えられる.                その他,同鑑定が分裂病の陽性症状として指摘するところも,拘禁反応と区別して 分裂病性の症状とみるには疑問がある.同鑑定が保崎ら鑑定の後分裂病が増悪したと する点も,明らかな精神症状の悪化があったとはいえない.             被告の拘置所における日常の言動にも異常な変化はなく,結局のところ,こうした 症状は,保崎ら鑑定の段階で既に現れていた,拘禁反応による精神状態の延長として 理解することができる.                             中安鑑定の集中力,意欲の低下,感情鈍麻等の分裂病の陰性症状の進展についても 高校時代から大学卒業後,印刷所勤務を経て家業を手伝っていたころの被告の日常の 生活,友人関係,家族に対する態度等,同鑑定のようには評価できない.       前述のごとく,本件一連の犯行における被告の行動はそれなりに了解可能であり, 一年足らずのうちに,家族始め周囲の者にだれ一人として不審を抱かれることなく, 四件の同種犯行を反復してきている.                       更に,拘禁されると捜査段階ではおおむね犯行を認めたものの,公判段階に至り, 夢のようだ,覚えていないなどと次第に犯行を否定し,拘禁状態が続くうち妄想的な 説明を暫時付加,発展させたに過ぎない.                     更に,中安鑑定が,犯行時分裂病による思考障害はほとんどなかったとしながら, 感情障害が著しかったとする点は,関根鑑定人の意見及び保崎鑑定人の意見に照らし 首肯し難い.単純型分裂病にり患していたとの弁護人の主張も採り得ない.      4 以上の通り,被告は,本件各犯行当時,性格の極端な偏り(人格障害)以外に いかなる精神病様状態にもなかった.つまり,理非善悪を弁別しうる能力と行動力を 有していたと認められ,被告は完全責任能力を認めるのが相当である.        量刑の理由                                  本件は,被告が一九八八年八月から翌八九年六月までのわずか一年足らずの間に, 埼玉県内及び東京都内において,当時四歳ないし七歳の四人の女児をわいせつ目的で 次々と誘拐してその命を奪った.                         このうち三人の遺体を損壊あるいは遺棄したばかりか,更に同年七月,当時六歳の 女児を誘い出して全裸にし,カメラを向けていたところを,その父親に見とがめられ 逮捕されるに至った.幼女らを対象にしたまれにみる凶悪非道な連続犯行である.   本件一連の犯行の動機・目的は,主として,女性性器を見たい,触りたいとした, 強い性的欲求に基づいており,これに加えて,遺体陵辱の場面等を撮影した,他には 所有者がいない珍しいビデオ等を所持したい収集欲が伴ったものである.       これらの動機・目的は浅ましいというほかなく同情の余地は全くない.成人女性の 代わりに,無邪気で人を疑うことを知らず抵抗力のない幼女らを,自己の欲望充足の 対象にした被告の心底はまことに卑劣である.                   本件犯行の経緯,態様には計画性が強く,誘拐手口,殺害の方法,死体損壊の態様 いずれも冷酷非情極まりない.つまり,被告は,常に,車を駆使して広範囲に行動し 遊びに出ている幼女らを求めて団地や小学校付近に赴いた.             ある時は,あらかじめ被害者を縛るひもや粘着テープを車内に用意して,団地内の 路上等で一人でいる被害者を見つけると,周囲に人目がないか細心の注意を払いつつ 言葉巧みに車に誘い込んだ上,遠く離れた山中まで連れ去って殺害した.       犯行を重ねるにつれて大胆になり,ついには被害者を誘い込むや,すぐ殺害して, 遺体を自宅に持ち帰るに至っている.幼い被害者に,いきなり馬乗りになるなどして 両手でその首を力いっぱい絞め続けた.                      抗うすべもない幼女らを一気に絶命させるなど,まことに無慈悲かつ残忍である. 殺害前には被害者を全裸にして陰部を中心に写真撮影をしたり,遺体を陵辱してその 場面をビデオカメラで撮影するなど,欲望をむき出しにした姿を見せている.     加えて,遺体をひもで縛ったまま山中に遺棄したり,あるいは被害者の頭がい骨を たたき割って損壊し,また,こともあろうに遺体をバラバラに切断して遺棄するなど 人としての尊厳を踏みにじる態度には目を覆うものがある.             被告の手によって命を奪われた四人の幼子は,いずれも両親らに囲まれ慈しまれて 育ち,その将来に多くの夢,希望を秘めていた.無邪気に被告を信じて付いて行った ばかりに,すべてを絶たれてしまった.                      被告の浅ましい欲望の犠牲となり,無残にも幼い命を散らした被害者には,これを 慰める言葉も知らない.子供を失った遺族の中には,その後心身に変調を来たして, 家庭崩壊にまで追い込まれるなど,誠に悲惨な状況にある者もいる.         それら遺族の悲嘆・衝撃・精神的苦痛が,いかに甚大であったかは言うに及ばず, 到底癒されよう筈もない.こうした現状の中で,被告に対し極刑を希求しているのも 至極当然の帰結である.                             本件一連の犯行は,犯行の場となった地域,周辺ばかりでなく,被害者らと同様の 年齢の子供を擁する家庭に多大の恐怖を与えた.その犯行結果の悲惨さや犯行態様の 冷酷非情さは世人を震かんさせたものである.                   これら社会に与えた影響も重大である.しかも被告は,自己の犯行に関する報道に 対応して,これを遊びの題材にしつつ,子供の安否を気遣う遺族の元に遺骨を焼いて 届けたり,犯行声明文や告白文等を郵送した.                   更に,あと十五年は捕まりたくないなどとうそぶき,遺体を切断して,その一部を これ見よがしに遺棄したり,遺族や社会をちょう笑した.被告の反社会的人格態度, 遺族の心情を思いやれない非情さも,決して看過することができない.        被告は,捜査段階では一応事実を認めていたものの,公判段階では夢の中のような ことだと思うと言って自己の刑事責任を逃れようとする態度に終始した.〔「一応」 とは控えめな表現で,実際は全面的に認めていた筈だが…〕             現在拘禁の影響が強く現れ,被告の口から被害者及び遺族らに対する一片の謝罪の 言葉も聞くことができない.〔拘禁反応は精神病の一種であり,冷静な判断ができる 状態とは言いがたい中で.謝罪がないことを責められるのか?〕           他方,被告には,両手に生来の障害があり,これに対する両親の適切でない対応も あり,幼少時から一人で悩み抱え込み,同居する祖父母や両親の不和など情緒的にも 恵まれず,長男として甘やかされ適切なしつけを受けずに成長した.         このため,元来の性格傾向に加重して,人格のゆがみを形成するに至ったもので, これが本件犯行の背景にあると認められる.被告の手の障害や,その境遇に対しては 同情を覚える面があることは否定できない.                    残忍さや,性的興味を売りものにした映像や出版物が巷間(こうかん)にあふれ, これが被告の本件犯行に幾ばくか影響を与えた側面もある.被告の膨大なるビデオの 収集結果が,それを象徴している.                        被告の母親は,被害者の氏名を紙に書いて,日々祈りをささげ謝罪しながら,その めい福を祈っている.長期間にわたる本件審理の過程で骨身を砕いて,被告のために 懸命に弁護活動に当たった国選弁護人が被告及び家族の支えとなった.        被害弁償のために奔走した結果,被告宅の敷地を引き当てにする等合計八百万円を 工面し,遺族らに対する慰謝の措置の一部として,各二百万円ずつ送金し受領されて いること(ただ,返還したい旨述べている遺族もある).              かように,被告の家族も,世間から厳しい非難の目を向けられ,父親がその重圧に 耐えかねて自ら命を絶つに至り,今は母親と妹二人がひっそりと身を寄せて生活して いること,被告には前科前歴がないなど酌むべき事情もある.            然し,これまで述べてきた通り,本件罪質,犯行の回数,その動機・目的,経緯, 態様,結果の重大性,社会に与えた影響,被害感情等にかんがみると,被告に対する 刑事責任はまことに重大という他はない.                     上に指摘した被告に有利な一切の事情をできる限り考慮し,かつ極刑を選択するに 当たっては最大限慎重な態度で臨むべきであることを考慮してなお,被告に対しては 死刑を選択する以外に刑の量定をすべき途はないといわざるを得ない.       −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 冒頭に戻る