拘禁反応と催眠状態

拘禁反応と催眠状態


 拘禁反応とは,催眠術に掛かり易い状態だとも言える.外部から遮断された状態で 一つのことを繰り返し吹き込まれると,それを無条件に信じ込む心理状態にもなる. やってもいないことを自白させることも可能となる.                俺様自身,若い頃に催眠術のやり方を覚えた.人に施すことも可能である.然し, どうかすると奇妙な副作用が伴う…? いたずら半分に人に施すことには,ある種の 危険を感じる….                                俺様は,主に自己催眠でその効果を試した.催眠状態に導くには,慣れればほんの 一瞬である.催眠と言うよりも,条件反射のように,特定の状態を引き起こすことが 可能になる.                                  さして意味もないことだが,俺様が目を閉じて『目が見えない』と暗示をかけると 無理矢理まぶたを指でこじ開けても,そこには白目がむき出すばかりである.暗示が 意識的には出来ないことを可能にする.                      外部との接触が断たれた状態は,通常の意識の中で,暗示を受け易い状態になる. 殺人犯に,被害者の亡霊を見せることなどは,比較的簡単なことだと思える.故に, 通常,犯人は観念して素直になってしまう.                    何人もの幼児を殺しておいて『それほど悪いことはしていない』と断言するなどは 通常では考えられない.可能性としては,深い宗教的理念に心酔した状態で起きる. 然し,例の教団の救済計画も,実行犯は殺人であることを知っていた.        かなり狂った印象を受ける教祖でも,それが殺人であることを知っている.だから 必死に自分は関係ないことを強調して死刑を逃れんとする.宮ア勤が,本当に殺人を 犯して,ここまでシラを切れたら空前絶後の教祖サマになれる.           一審判決では,宮ア勤は,性格的な偏りはあるが,犯行時は,まともな精神状態の 人間だったと断言する.そして自ら積極的に自白した後,急に拘禁反応に見舞われて 善悪の判断すら出来なくなった.不自然ではあるが….               判決は,主文を最初に持ってきた異例な形態だとされる.その理由を邪推すれば, 判決理由を最初に読まれたら,矛盾だらけな内容がさらけ出されて,死刑宣告をする 理由としては弱さを露呈するからである.                     最初に『ドーン!』と死刑を宣告すれば,マスコミは後の理由を無視して大々的に 報じて一般大衆を喜ばせることが出来る.裁判所も先行したマスコミ報道を追認して 表面的な体面を保つことができる.                        裁判官と言えども,マスコミの先行した報道の影響を強く受けて,被告の有罪を, 頭から信じ込んで,そこから抜け出す思考回路が存在しない.現代では,捜査段階の 供述調書に先行してマスコミ報道が絶対の真実になる.               多くの識者が,裁判を見ていながら,判決理由に何の疑念も感じていない理由は, 捜査段階の供述は,『神聖にして侵すべからず』の絶対的な真理として定着している 背景があると考えられる.                            いかに被告の言動がおかしくとも,7年前,供述調書が作られた経緯に何の疑問も 投げかけてはいない.それを考えれば,密室の中での供述調書が,例え,どのような 形で作られようとも絶対視の鉄則は変わらない.                  本来,凶悪事件であればあるほど,容疑者の扱いには慎重であらねばならぬ筈だが マスコミは,最初から容疑者と,その家族の全生活を完璧に破壊した.今更,これが 間違いだったとは口が裂けても言えない.                     もはや,新たに真犯人が明らかになることは許されない.彼は,自分の心の中に, 何故,殺人の記憶があるのか理解出来ぬままに,最終的な死刑判決を待つしかない. 真理の顕現される瞬間が,それでもあることを期待したい….** 悪魔 **   冒頭に戻る