宮﨑勤氏（幼児連続殺人事件の容疑者）は無実！

宮﨑勤氏（幼児連続殺人事件の容疑者）は無実！

　警察は真犯人を捕らえ，そして隠蔽した？

　話の順序として，いつ誰が何処でなんとやらの記述が必要なのだが，今そのような手順を書いているゆとりはない．ともかく，この事件は，犯人逮捕の瞬間から異様な報道が繰り広げられた事件である．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　この事件の犯人が捕まる前，既にマスコミは，この容疑者の逮捕を予測していた？俺様には，逮捕の第一報が伝えられた瞬間，そう思えた．事前の報道と逮捕の瞬間の報道の映像が極めて近いものだった．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　『犯人は，印刷関係の仕事に従事し，ワープロ等の扱いに慣れている』これが大方の報道の一致した内容だった．そして，逮捕の瞬間，何がテレビに映し出されたか？　新聞社の看板と，その中にある印刷機器の映像である．　　　　　　　　　　　　　『どうだっ！　これが動かぬ証拠だっ！』あたかも，そう言わんばかりの画面構成がなされていたのだ．まるで教科書をみるかのごとき執拗な犯人逮捕の報道であった．通常，犯人の写真が真先に来るのが自然である．　　　　　　　　　　　　　　　　　加えて，逮捕，即，実名呼び捨てと言う極めて異例の報道がなされた．あたかも，彼以外に犯人はいないことを強調するかのような報道姿勢であった．何故，ここまで執拗な証拠並べに徹底したのか？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　普通，犯人逮捕に，こんな疑惑を持つことはない俺様である．『ヤロウ…とうとう捕まりやがったか…．フザケタ野郎だ』そんな感想で終わる．然し，この事件だけは違った．演出された逮捕…．最初からそんな印象があった．　　　　　　　　　　　　従って，逮捕後の経過も，そういう印象が先行して，報道を見ていた…．すると，この容疑者は，明らかに他の真犯人としての容疑者とは違っていた．何処か，堂々としている…．それが逆に憎しみを駆り立てた？　　　　　　　　　　　　　　　　　　昨年暮れに，公判が開かれた報道があったが，その時，初めて宮﨑容疑者の父親が実は，自殺をして死んでいたことが伝えられた．迅速をモットーとするマスコミが，何故，これをその時に伝えなかったのか？　不可解である．　　　　　　　　　　　　この事件は，未だ一審判決も出されていない異様な展開を見せている．証拠自体も出揃っている様子でありながら，あまりにもその審理に時間が掛かりすぎる．やはり何かが変である．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　宮﨑報道が渦を巻いていた頃，俺様は，この事件を「抒情文芸」規定『四百字詰め原稿用紙20枚』にして投稿した…．競争が激しい世界である．この程度の出来では，採用にはならなかった…．今，改めて，ここに公開する．　　　　　　　　　　　　　俺様は，事件の真相は，このようなものであると推測していた訳だが，後になってそれを裏付ける発見をした．未だ俺様流の『デジタル・ブロック書法』が確立されていない為の見苦しさは容赦願いたい…．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　尚、現在の書式に則った書き方に改めた作品を小説の中に同名のタイトルで収めてある。ここに敢えて見苦しい当時の書き方のものを掲載するのは、当時の印象を保つために脚色をしない配慮でもある。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　替え玉　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ここは幼児殺害事件の捜査本部取調室である．主任の野村は明らかな物証から逮捕した男を前に憔悴しきっていた．　　　　　　　「やれやれ…何てこった．よりによって事件の捜査本部の捜査員が犯人だったとは…．大体やり過ぎたんだよ．テメェってヤツは…殺した子供を焼却した挙句，その骨を遺族宅に届ける－－警察の目を一番気にする普通の犯人にそんな事が出来るかぁ？　出来るのは警備状況を知っている人間だよ．マスコミが警察を疑わねぇのが不思議なくれぇだ」　　　「申し訳ございません…」　　　　　　　　　突然，犯人，桑田が話始めた．　　　　　「いつかはこんな日が来る－－そんな予感をずっと感じていました．多分，マスコミは関東の警察不祥事件の代表として私の名を全国に報道する…」　　　　　　　　　　　　　「バッキャロォ！　悪徳警官の悲哀なんぞ気取るんじゃネェ！　こんな事が発表された日にゃあ…．こんな時に警察官でいなくちゃあならねぇコチトラの身にもなってみろ！　全く…地獄ダゼ」　　　　　　　　　　　　　　捜査主任の野村はブルブル震える拳を片手で抑えて必死に怒りに耐えていた．　　　　　マスコミの報道もさりながら，この遺族等事件関係者の期待を裏切る事が辛かった．世間の噂は消えても事件関係者に与えた傷は，同時に自分の傷となって長く残る．　　　　「フザケンジャネェ！　バッキャアロォ！」　突然，怒りが爆発した野村は犯人の桑田をいきなり思いきり足蹴にしていた．　　　　　バラバラになった椅子と共に壁までふっ飛ばされた桑田は，ただただ体を縮めるばかりであった．　　　　　　　　　　　　　　　　何とかこの事態を打開する方法はないものか…．世間に公表するには余りにも過酷な現実である．　　　　　　　　　　　　　　　　考えられる方法は，桑田を懲戒免職にした上で，その経歴の一切を伏せてただの無職男として発表する事である．然し，そんな事はすぐにばれてしまう．　　　　　　　　　　　取り調べの段階で明らかになった事だが，桑田が遺族に遺骨を届けようと考えたのは，捜査員として事情聴取をする過程で，その遺族の嘆き悲しむ姿に己れの罪の深さに目覚めた事によるものだった．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　県警本部に呼ばれた野村は，そこで意外な指示を受けた．　　　　　　　　　　　　　「どういう事ですか？　身代わりって…」　「つまり…別の人間を犯人に仕立て上げる」　本部長の藤田は冷やかに言い切った．　　「今，これに該当する別件の容疑者を確保している．この容疑者の生活背景を犯人像としてマスコミに流す」　　　　　　　　　　　「一体…何をやった人間ですか？」　　　　「幼児にいたずらしようとした宮﨑と言う男だ．地理的に，事件の行動半径の中に居られる環境が整っている．それに強力な後ろ楯もいない．彼を犯人に仕立て上げればいい」　「然し…そんな軽い犯罪人をいきなり殺人犯とは…」　　　　　　　　　　　　　　　　「大丈夫だ！　対策は万全だ！　だから徹底して犯行の詳細を桑田から聞き出せ．これを確保している容疑者，宮﨑に当てはめて証拠固めをする．これに依って犯人でなければ知り得ない供述が確保出来る．フッフフフフ」　藤田は冷酷な笑いを浮かべて野村の肩を叩いた．　　　　　　　　　　　　　　　　　　確かにこれならうまく行くかも知れない．が，これは意図的に冤罪を作り上げる事である．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　野村は二重の苦しみを味わっていた．部下が事件の真犯人であった上に，今度はその替え玉工作とは…．　　　　　　　　　　　　「然し，公判で宮﨑が何を喋るか心配で…やっぱり，無理があるのでは？」　　　　　　　やはり野村には，この作戦を実行するにはためらいがあった．　　　　　　　　　　　「案ずるな！　手はあるだろ？」　　　　　　藤田は自信たっぷりだった．　　　　　　「宮﨑を催眠術に掛けろ．お前の得意な技術だろ？」　　　　　　　　　　　　　　　　　学生時代に覚えた催眠術は，取調べの経験の中で磨きが掛かった事も確かである．だがこれをでっち上げに使おうとは…．　　　　「確かに不可能ではありませんが…，然し最後までバレずに済むかどうか…」　　　　　「それよりも証拠固めの方は大丈夫なんだろうな？　いいか！　証拠第一主義の世界だ．桑田の全面自供から得られた証拠をそっくり宮﨑に振り替える－－これは完璧だ．誰もここまで疑う人間はいない」　　　　　　　　　藤田の言葉を聞いて野村は覚悟を決めた．こうなったら徹底してやるしかない－－　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　綿密な計画が練られて，マスコミに流す具体的な犯人像が宮﨑をイメージして作り上げられた．　　　　　　　　　　　　　　　　　印刷関係の仕事に就いており，コンピュータやワープロの知識があり，変質的な傾向がある．外見はおとなしく無口で人付き合いもない目立たない人間－－　　　　　　　　　　こんな犯人像がマスコミに流れ，更に著名人や評論家の推測が加わって，真犯人とはかなり違う犯人像の絞り込みにひと役買ってくれていた．　　　　　　　　　　　　　　　　後は宮﨑を桑田の身代わりに真犯人として発表するチャンスを待つだけであった．　　　だが，いきなり宮﨑を真犯人として発表するには多分に危険が伴う．差し当たり重要参考人程度の表現で，思わぬ無実の証拠に備える必要がある．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　テレビに流れた犯人逮捕の報道が見せる映像は完璧であった．　　　　　　　　　　　　地方新聞社の看板にハイテク印刷機器の映像－－これは正しく事前に流された犯人の生活背景そのものであった．野村はその結果に安堵した．　　　　　　　　　　　　　　　　この瞬間からマスコミにおける宮﨑のイメージは歴史上でもその例をみない冷酷非道な幼児殺人犯として独り歩きして行った．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　強力な催眠の影響で宮﨑の動きは緩慢であった．現場検証－－それはマスコミをして宮崎を真犯人として更に強力に報道させる見せ場作りでもあった－－に立ち会わせた時，顔を隠すでもなく，平然として事件現場を連れ廻されていた．　　　　　　　　　　　　　　野村はそのニュースの映像を見た瞬間，戦慄を覚えた．　　　　　　　　　　　　　　　こんな事ではバレる！　こんな真犯人はいない！　マズい芝居である．　　　　　　　　耳元で囁く『オイ！　右の方を指差せ！』と指示している捜査員の声が聞こえて来るのではないかと思えた．然も捜査員は指示をするだけで宮﨑が指差した方を見るゆとりをなくしていた．　　　　　　　　　　　　　　　これは早く手を打たねばなるまい！　野村は焦りを感じていた．もう最後までやるしかないのだ．　　　　　　　　　　　　　　　　まるで夢の中で犯行を重ねていたような気がする－－宮﨑の供述として報道された言葉は，そのまゝ人間的な感情を持ち合わせていない冷酷な人間の言葉として捉えられ，夢遊病者のような動きは，何らの反省もない冷徹さとして報道されていた．　　　　　　　　　そんなマスコミの反応にひとまず安堵したものの，このカラクリは微妙なバランスで保たれている綱渡りである．不安と恐怖は以前にも増して募るばかりであった．　　　　　　心ある者があの映像をみればこれは後催眠による後遺症だと見破ってしまうだろう．　　あの計画は手早く実行する必要がある－－野村は焦っていた．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　宮﨑も催眠の世界から現実の自分の本当の姿に目覚める事が多くなっていた．　　　　　作成された調書の内容に異議を差し挟む事が多くなった．　　　　　　　　　　　　　　目醒めた状態から指示を行う後催眠の効果も薄れている．　　　　　　　　　　　　　　もうこうなったら徹底して締め上げて本当の事を言ったら，嫌でもこういう目に遇う事を体で教え込むしかなかった．　　　　　　　拷問の跡を残さない巧妙な方法で徹底して連日攻め上げた．　　　　　　　　　　　　「いいか！　お前は子供を何人も殺した極悪人だ！　いいな！」　　　　　　　　　　　　力による暗示の効果がこれに加わって行った．決着の第一段階を現場検証の名目で実施する事にした．　　　　　　　　　　　　　　現場検証の前に，被害者には申し訳ない事をした－－このコメントを宮﨑のものとしてマスコミに報道した．　　　　　　　　　　　さり気なく左手首に包帯をして，それを報道陣に注目させる工作も忘れなかった．　　　前回の顔を隠さない犯人の不自然な行動を修正して上着で顔を覆わせた．　　　　　　　だが，その映像はやはり不自然だった．顔は覆っているものの，宮﨑はまるで下手な役者のように，手をかざして上着を日除けにしているような恰好をしていた．　　　　　　　恥ずかしさにしっかり上着を抑えての自然さが全くない．仕方なく演技している－－そういう態度にしか見えなかった．　　　　　　が，史上まれにみる極悪非道な幼児殺人犯－－マスコミが伝える宮﨑に対するこの報道姿勢には全くゆらぎがなかった．　　　　　　映画監督が感じる致命的な失敗も，人気俳優の存在感で消し去られている－－だが，いつまで持ち堪えられるか…．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　計画が綿密に練られ，表向き現場検証の形態を取ってそれは実行に移された．　　　　　完璧を期する為に万一に備えてライフル銃が一丁トランクに用意された．　　　　　　　宮﨑には深く強力な後催眠が掛けられた．「ＧＯ！」と声を掛けられたら，車から飛び出して全力で走り出す－－そんな暗示が彼の深層心理に植え付けられたのだ．　　　　　　通常は両脇を捜査員で固めて真ん中に容疑者を乗せる習慣を破って，行動し易いように宮﨑をドア側に座らせた．　　　　　　　　　野村は注意深く，報道陣のカメラの位置に注意した．予め指示した場所に配置されている．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　跳弾に依る第三者への被害の可能性もなく射殺には最適の場所であった．　　　　　　　野村は捜査員の一人に合図すると，宮﨑に声を掛けた．　　　　　　　　　　　　　　「よし！　宮﨑．時間を計るから，今からあの場所迄，全力で走って見ろ」　　　　　　　同時に前にいた捜査員がさり気なく背広のボタンを外して，ほんの少し左側を開いた．彼は署内切っての拳銃射撃のエキスパートである．　　　　　　　　　　　　　　　　　　車内に緊張が走った．　　　　　　　　　「どうした．宮﨑．これは現場検証でやらなきゃならない事なんだ．協力すれば，罪だって軽くなるゾ」　　　　　　　　　　　　　　だが，宮﨑は体を硬くして動こうとしなかった．普通の指示では駄目か…．やはり後催眠の暗示に頼るしかないか…．　　　　　　「おいおい．どうした．リラックスしろよ．どれ…深呼吸して見ろ．この緑を見ろ．鉄格子の中だけでは味わえない世界だろう」　　　だが，宮﨑の表情は硬かった．　　　　　「ほ～ら．こうやってリラックスしてみろ」　野村は自分で深呼吸をして見せた．だが，宮﨑に変化はなかった．　　　　　　　　　「やれやれ…．おい！　お前達もリラックスして深呼吸だ」　　　　　　　　　　　　　　車内の緊張が解けた．宮﨑の表情も少し和らいで来た．　　　　　　　　　　　　　　「ＧＯ！」　　　　　　　　　　　　　　　　突然，野村が声を発した．ビクンと宮﨑の手がドアに掛かり，何かを考え込むような表情が浮かんだ．暗示がじんわりと宮﨑を恐怖に落とす－－　　　　　　　　　　　　　　　だが，宮﨑は意に反して沸き上がる衝動を必死に抑えている様子だった．　　　　　　「宮﨑！　ＧＯ！　ＧＯ！」　　　　　　　「宮﨑！　降りるんだ！　降りて走れ！」　　カッと目を見開き，ブルブル震える手で宮崎は必死に堪えていた．その様子を見た野村は，　　　　　　　　　　　　　　　　　　「逃げないと死ぬぞ…」　　　　　　　　　　耳元に低い声で囁いた．　　　　　　　　　一瞬，ノブに力が入った．が，次の瞬間，宮﨑は死を覚悟したかのようにドアから手を離して身を縮めてしまった．　　　　　　　　この作戦は失敗した．結局，誰も車から降りる事もなく署に引き返した．現場検証としては極めて異例なやり方ではあった．　　　　冷静に考えれば，捜査員が宮﨑を外に誘導すべく先に降りてこれを促すのが自然であった筈である．　　　　　　　　　　　　　　　この辺りに，いきなり合法的な射殺を考えた為の不自然さが出てしまった．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「もうこうなったら署内で処置するしかありません．今なら未だあの包帯が自殺未遂の裏付けとして通用するでしょう」　　　　　　　野村は藤田に報告していた．　　　　　　「マズい！　今はマズい．何か…重大な宮﨑の無実の証拠がマスコミに流れたらしい…」　藤田は今までの強硬姿勢の中止を指示して来た．　　　　　　　　　　　　　　　　　「何ですと!?」　　　　　　　　　　　　　「詳細は言えんが…．今はおとなしくしているんだ」　　　　　　　　　　　　　　　　「一体…何が…．まさか桑田の事がバレたのでは…？」　　　　　　　　　　　　　　　「……」　　　　　　　　　　　　　　　　　藤田の口は固く閉ざされていた．上層部に何らかの情報が入っているらしいのだが…．　これを裏付けるようにマスコミ二社が相次いで，犯罪事件について容疑者段階での実名呼び捨て報道を中止する極めて異例な発表を行った．　　　　　　　　　　　　　　　　　大体，社会から叩かれてさえ反省なんて積極的に行う事など考えられないマスコミである．この発表は一体何を意味するのか？　　　幼児殺害事件ではあくどい迄の実名呼び捨て報道が罷り通った．今，宮﨑の無実が明らかになっては，マスコミもその報道姿勢を厳しく問われる事になる．　　　　　　　　　　ヤツラ先回りして弁解の姿勢を取ったと言う事なのか…．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「いいか．記者会見は当分お預けだ．今，こっちで対策を考えている」　　　　　　　　　藤田からの指示を虚ろに聞いていた野村は後悔していた．やっぱり，桑田の野郎をそのまま犯人として発表するべきだった．　　　　その後，何故かこの事件の取材がぱったりと跡絶え，報道から事件の詳細が消えた．　　県警本部とマスコミの間で裏工作が進行しているのだろうか…．　　　　　　　　　　　マスコミも事件の真相を発表する事は，時期的に自分達の報道姿勢を問われる点でほとぼりを冷ます必要があり，警察もその信頼を完全に失墜する．　　　　　　　　　　　　　一番いいのは宮﨑が素直に暗示を受けた通りに裁判で自供してくれる事だ．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「いいか！　宮﨑！　お前がやった事にいささかの間違いはない！　そうだな！」　　　　野村は執拗に宮﨑に与えた暗示の効果を確認していた．　　　　　　　　　　　　　　　だが，宮﨑の反応が今までとは違う．今までのように遠くを見るように暗示を受けた世界からの言葉をそのまま話すのとは違っていた．　　　　　　　　　　　　　　　　　　「いいえ．やっと分かりました．私は人など殺していません．今までは何かに操られていたのです」　　　　　　　　　　　　　　　　宮﨑の目はしっかりと野村の目を見据えていた．　　　　　　　　　　　　　　　　　　公判を間近に控えて宮﨑の思いも掛けぬその言葉に，一瞬，たじろいだ野村であった．「馬鹿野郎！　今更シラを切ろうったってそうはいかねぇんでぇ！」　　　　　　　　　　野村の平手打ちに宮﨑は椅子から転がり落ちた．こうなったら自分の無実を公判で訴えたらどんな痛い目に遭うかを体で思い知らせておくしかない．　　　　　　　　　　　　　然し，宮﨑に恐れる素振りが全然なくなっている．ゆっくりと平然と起き上がると，再び姿勢を正した．　　　　　　　　　　　　　逃亡を阻止する目的でやむなく発砲－－この筋書きで射殺する作戦に失敗した瞬間，宮崎に対する暗示の効果が消えてしまったようだ．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　生命の危機に際してその暗示の効力が消える－－これはよくある事である．然し…あの時，そこまで考えなかった．これは確実に成功する筈だった．　　　　　　　　　　　　　だが，如何に宮﨑が犯行を否認しようと，がっちりと固めた物的証拠が物を言う．これだけは曲げる事が出来ない．　　　　　　　　それでも自供が伴わないところには不安が残る．判事に対する心証の問題が残る．　　　犯行を否認する供述の中に真実を嗅ぎつけられると証拠についての疑惑が持たれてしまう．自供の有無で証拠能力に差が出るのだ．　宮﨑の本能が生命の危機を感じ取って催眠から覚めたなら，今度は逆に生命の危機を感じさせて喋らせないようにするしかない．　「テメェ…．無実なんか主張してみろ．どうせ貴様はここに戻って来るんだ．生命はないものと思え！」　　　　　　　　　　　　　　宮﨑の表情は恐怖にひきつっていた．少なくとも野村にはそう思えた．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　公判の席上，野村は緊張して宮﨑を見つめていた．　　　　　　　　　　　　　　　　　奴の表情の中には未だ，与えられた恐怖が生きている－－そう直観出来た．ここで無実を主張するような事はよもやあるまい．　　　公判が型通りに始まった．が，宮﨑が証言台に立った時にはさすがに緊張した．　　　「何か言いたい事はありませんか．ここでは何でも自由に話していいんですよ」　　　　　判事が事件の裏を何か知っているのではないか－－野村はこの瞬間，背筋に戦慄が走るのを覚えた．　　　　　　　　　　　　　　　いや…これは…いつもの型通りの進行ではないか…．恐れる理由は何もない…．　　　　自己暗示を掛けるように野村は自分に言い聞かせた．　　　　　　　　　　　　　　　　宮﨑はすっと顔を上げると判事を正面から見つめた．　　　　　　　　　　　　　　　「車を返して欲しいんです．それから運転免許も書替えなければいけない時期ですし，車は動かしてやらないと油の回りが悪くなりますから…」　　　　　　　　　　　　　　　　傍聴席の現場報道陣のシラけた雰囲気が漂う中で，野村は顔面蒼白になっていた．　　『こんな冤罪事件に付き合って居られない．さっさと釈放して欲しい－－』　　　　　　　でっち上げを仕掛けた野村なればこそ，宮崎の答弁が暗黙の無実の訴えである事が痛い程分かった．　　　　　　　　　　　　　　　判事が被告席の宮﨑を見る目に鋭さが加わっていた．背後に隠された宮﨑の言葉の真意を推し量っているのだろうか？　　　　　　「ヤロウ…俺様の暗示をすり抜けやがって… もう後がねぇ…．次の公判迄に確実に黙らせてやるゼ…」　　　　　　　　　　　　　　　野村は不安から来た震えを，次第に怒りの震えに意識的に変化させて行った．　ＥＮＤ　冒頭に戻る