藜(アカザ)の杖 その正しい使い方

藜(アカザ)の杖 その正しい使い方


 これは広告宣伝の類である.元々,商売という言葉には,いかがわしさを感じて, あまり好きではなく,貧乏な中ですら,金儲けなどにまるで関心も湧かない.然し, 年老いた知人より商品の宣伝を頼まれた.                     同じように年老いたその知人の妻が杖の必要を感じて,何か適当なものがないかと 夫に尋ねた時に,ふと藜(アカザ)が目についたという.古来から藜の杖は,長寿の 象徴とされた.軽くてしなやかだという.                     何しろ年齢も八十を超えようという御仁であるから,過去に凝縮された知恵袋には 何が蓄えられているか判らない.年齢にふさわしい記念事業として,現代に藜の杖を 蘇らせることを生き甲斐に…と閃いた….                     現代の杖は短く,腰の位置で手に体重を圧し掛かけるように使われている.これが 間違いなのだという.杖には正しい用い方があると言う.杖の販売と同時に,正しい 杖の用い方を広めたいのだと仰せられる.                     御仁の主張する正しい杖の用い方は,肘を脇に付けて腕を前に伸ばして杖を握る. この時,親指を立てて握る.その親指の先が乳頭の下辺りに位置するか,小指を下に 伸ばした先がヘソの上付近に位置させる.                     最初に踏み出した足の路面に杖の先を置くが,力は掛けない.歩き出した次の足と 平行になり,更に前に進もうとする時,杖に軽く力を掛ける.杖のしなやかさが体を 軽く前に進める.この繰り返しで行う….                     後は,時折,杖を持つ腕を交代して行う.こうして使うことで自然に背筋は伸び, 交代の時期に深呼吸などをすれば,肺活量も増える効果も期待出来ると主張される. 近頃は,長い杖というものを見かけない.                     大体,足腰を痛めて,整形外科で診察を受け,リハビリで杖が必要になる時には, 体重を支えるように使う杖が処方されて,それを使うようになるのが普通であろう. 健康な状態では,杖の必要すら感じない.                     ただ,従来の藜の杖には欠陥があり,長く使っていると,突然折れてしまうことが よくあるという.そこで欠陥を取り除くべく,芯を抜いて,中にグラスファイバーを 通したら折れる不安もなくなると考えた.                     実は,その話は,昨年の初め頃に聞いていたのだが,発想を現実の行動に移すには 大きな壁がある.恐らく実現することはなかろうと,半ば冷ややかに聞いていた…. その後,農家に栽培を依頼したという….                     色々な協力者を集めて,その事業化に忙しい日々を送るようになった様子だった. 唐突に日経の地方版が送られて来た.そこには,その杖を持った当人が写っていた. 『軽く長いアカザ杖』という記事だった.                     既に,特許の出願も済ませ,杖の製作を現実のものとした意気込みには恐れ入る. 細君の介護で引退はしたものの,火葬関連の会社を経営していた知恵と人脈は脈々と 生き続ける.凡人の及ばざる気力である.                     貧乏人の常識では,昨今,杖なんて百円コーナーでも売っている時代だし,それを 一万円も出して買う人間がいるものだろうか? まず否定的な考えしか浮かばない. 当人は知恵の伝達に意義を見出している.                     杖の販売を通して,杖の用い方という思想を伝える意気込みには,金儲け商売とは 何処かひと味違うようにも思えてくる.採算の取れる見込みはないが,八十歳の記念 事業にしてみたいとゆとりの構えである.                     杖は,腰が曲がってから使い始めたのでは遅すぎる.健康な時に正しく使う方法を 知って実践するのが望ましいという.俺様も,坐骨神経痛を患う年になっている…. 杖の使い方を覚えておいても損はない…?                     現代は,歩くことが極端に少ないのだが,長距離を歩く際は,疲れた時に,かなり 役に立つものであることを,その昔の富士登山の折に体験した.時に杖を必要とする 長い距離を歩くのも健康増進の一つか….                     然し,未だインターネット上で発売する道が開かれていない.今は地元の小売店と 一部地方に卸して販売するという形態に留まっている.もしインターネットで宣伝が 可能なら全国規模で売れると期待する…?                     因みに発売先を紹介しておく.価格は一万円と聞いているが,送料や消費税などの 詳細は不明である.問い合わせ先(株)エバーソフト 新潟市堀之内南2−18−19 電話 025−243−3500である.     ** 悪魔 **      

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