『寝つけない』と『死に切れない』

『寝つけない』と『死に切れない』
 例えば,時折,なかなか寝つけない夜に遭遇する….普段は,それと知らぬ間に, グッスリと寝入ってしまう筈が,どうかすると,眠りとは一体どういうことなのか? それも分からぬ位に寝付けなくなる….                      そんな時,よく考える.これはもしかしたら,死ぬにも死に切れぬ状態と,何処か 似ているのではないか…と.ふと,ずっと昔にみた夢が思い出される.俺様の葬式が 迫っているのに,何故か俺様は未だ死んでいない….                午前十時から葬儀の開始だから,何とかそれまでに,俺様は死ななければならぬ. やれやれ…果して間に合うものやら…等と,俺様も他人事のように,懸命に死のうと 努力する.それは眠る作業と同じだった….                    時間が迫る中で,なかなか死に切れぬ自分を意識して焦っていた.結局,そのまま 俺様は夢から覚めてしまった….死なねば弔問客に,申し訳が立たぬような,何とも 不気味な後味の悪さが心に残った….                       現実には,生きていながら,敢えて死に向かわねばならぬ人間もいる.不治の病に 侵されて,余命いくばくもないことを自覚しながら死を待つ….或いは,かつては, 特攻隊員として国に殉ずる使命を担って自らの生命を捧げた….           俺様自身,まだ,そのように自らの死を自覚したことのない脳天気な人間である. ただ,一歩,死に向かう覚悟を決めて,向こう側の世界へと踏み出してしまえれば, 一気に死に向かう覚悟も定まる?                         ただ,人間の生死は,単純に人間の意思だけでは決まらぬものがある.特攻隊員の 中にも九死に一生を得て,今日尚,生き長らえている人もいる.生きなければならぬ 宿命を担わされてしまった?                           ただ,そうした人々の姿を垣間見るとき,何処か,生かされるべくして生きている 何かを感じさせるものもある.中には,特攻隊員を積極的に送り出しておきながら, 自分だけは『後に続く』こともせず生き長らえている人間もいる.         『私は所詮,中間管理職に過ぎず,責任はもっと上の方にある』などとして,自らの 責任については,その一切を不問に付すのである.生き永らえるには,このように, あくまでも自分を正当化する勇気が必要でもある.                 俺様自身,その場に立たされたら,終戦と同時に自らの生命を絶った生粋の軍人の ように,何の未練もなく,後に続くことが出来るか? 恥を晒してまで生きようとは 思わぬ建前とは別に,死に切れぬ自分の姿がちらつく….              戦争について自責の念を抱き続けたら,とても生きてはいられまい.然し,もしも 生き残った人間が,いつかは国に殉ずる純粋な心を持ち続けたならば,今の日本も, こんな軟弱体質にはならなかっただろう….                    戦争末期,多くの特攻隊員が本土の防波堤たらんと,自らの若い生命を散らした. 果して,現代の日本と日本人の姿は,その殉国至上の精神を貫き通した人々の心に, 十分報いるものであるのかどうか?                        国の中枢にある人間が,自らの個人的利益を図るために,国政を食い物にしている 現状は,誠に浅ましい限りである.かつての英霊は,この鬼畜にも劣る日本人の姿を どのように見ているのだろうか?                         十代の若者が国に命を捧げた時代があって今日の日本がある.そんな数多の英霊が 奉られている靖国神社参拝すら批判の的になる時代である.自らの命を国に捧げて, 後世の人間に侵略者呼ばわりされている.                     これでは,英霊も安らかに眠っても居られまい.老人福祉を,私利私欲の食い物に して私腹を肥やしても,それが別段,珍しくもない事件として捉えられる.恐らくは これも氷山の一角に過ぎない.                          何処でも同じことが行われている.たまたまそれが表沙汰になってしまった,誠に 気の毒な容疑者でしかないのだろう.本当に,福祉実現が自らの使命であったなら, このような不祥事の前にとても生きては居られまい.                使命感の何たるかもまるで理解していないのだから,恥を感じる心もない.まして 自ら命を断って詫びる心情もないのだ.少し前の時代なら,彼らは間違いなく天誅を 下されていた.今はそれもない.平和なのか,まぁ…エエワなのか?         今の日本人は,かつて大日本帝国が欧米に対して抱いた文明の頽廃に溺れた哀れな 大衆そのものでしかない.それでもアメリカは,打たれて尚,そこから立ち上がって 日本を叩きのめしたが,今の日本に,その底力ありやなしや?            人間が生み出した便宜的な価値観である金銭に翻弄されて,本来の使命を全うする 精神を完璧に忘れてしまった.使命を忘れた人間が国政の任に当っている現状では, いずれ日本も何処かに売り渡されてしまうかも知れぬ….              軍歌と呼ばれる歌が歌われ,戦友という絆で結ばれる人生が常識だった時代の中に 俺様の心の一部が入り込んでいる.無論,この俺様には体験のない世界だが,純粋な 彼らの心情は俺様の中に生きている.                       あの時代に死に切れなかったバカ共が,その恥を詭弁を弄して反戦に結び付ける. 平和主義者の顔で,英霊に泥を塗る.本当に国に殉ずる気持ちがあって尚,不覚にも 生き延びたのであれば,今こそ決戦の秋である.                  天下国家を代表する人間の不正に体を張り,彼らに天誅を下して然るべきである. 戦後,そういう感覚で世情を観察するが,一人としてそうして後に続く者がいない. 伝統を受け継いだ筈の右翼も,今は安らかな英霊となられたか? ** 悪魔 **

   日本語の表紙に戻る