裁判所は先住慣習地に関する2001年判決を覆す(ルマ・ノル村裁判)
トニー・ティエン記者
マレーシア・キニ(インターネット新聞)2005年7月9日
http://www.rengah.c2o.org/news/article.php?identifer=de0436t&subject=7

控訴裁判所は、ビントゥル省のイバン人ロングハウス住民が木材プランテーションの暫定的借地権に含まれる係争地で先住慣習権を行使することができると判定したクチン高等裁判所の2001年5月の判決を覆した。

控訴裁判所がビントゥル省土地調査局長(借地権発行機関)、ボルネオ・パルプ・プランテーション社(借地権取得者)、ボルネオ・パルプ&ペーパー社(借地権取得者の下請業者)による申し立てを認めた主な理由は、672.8ヘクタールの係争地に対するイバン人の先住慣習権の主張を裏付ける「信用に足る証拠が不足している」ことである。

ビントゥル省スバウ地区にある64世帯のロングハウスに住むノル・アナック・ニャワイ村長率いるイバン人グループは、樹木プランテーションとパルプ製造に従事する両社に政府が60年間の暫定的借地権を与えた後、借地権の対象地には自分たちの先住慣習地が含まれているとして1999年に裁判を提訴した。

高裁は2001年にイバン人に有利な判決を出し、イバン人は係争地で先住慣習権を行使する権利があると認定した上で、会社及びその代理人が同地区に入ることを禁じる差止命令も出した。ただし損害賠償の支払いを命じるには証拠不十分とされた。

政府と2社は控訴し、昨日クチンで控訴審の判決が言い渡された。

しかし控訴審はトゥムダ(耕作地)、プラウ(共有林)、プマカイ・ムノア(共有地)と呼ばれる先住慣習権の概念に関する一審の判定を支持した。

十分な証拠

イバン人の代理人であるバル・ビアン弁護士は「この控訴審では確かに証拠不十分で敗北したが、ある意味でイバン人は勝訴したとも言える。今後は先住慣習権を争う裁判では先住慣習権を証明するために十分な証拠を示さなければならない。」と記者団に語った。

控訴審判事ハシム・ユスフ氏は、次のように論じた:「係争地がジャングルに覆われていたことを示す1951年の航空写真があったにもかかわらず、一審判事(イアンHCチン判事)は、様々な可能性を考え合わせた上で、係争地は(控訴審の)被告およびその先祖が耕作のために開拓し、漁獲、狩猟、林産物の採取のためにアクセスした区域であり、これらの行為はいずれも被告のトゥムダおよびハラウに関わる権利を前提とするものであり、しかもプマカイ・ムノア(共有地)で行われたものであると認定した。」

控訴審判事はハシム氏、リチャード・ムランジュム氏、トゥンク・バハルディン・シャー・トゥンク・モハメッド氏の三人だった。

「タジェム川とアンイー川の上流にはトゥムダはまったくない」と証言した参考人サピット氏の証言に対する異議申し立てもないまま、その証言を全く無視して、このような事実認定が行われたとハシム判事は語った。

「係争地の1951年当時の航空写真という物理証拠を前に、この事実認定を正当化するために判事は「この区域は1951年以前に開墾され、その後ジャングルに戻っていた可能性がある」と主張したバル・ビアン氏(住民側弁護士)の仮説を支持するに至った。」

交差上訴も棄却

「このため、一審判事のやり方に我々は同意できない。反証がない限り、1951年の写真が示すように係争地は当時ジャングルに覆われていたと言う認識に我々は傾いている。控訴審のレベルでも、このように判定する権限は我々にある。なぜなら一審判事の事実認定は主要な事実の認定ではなく、推定に過ぎなかったからである。」とハシム判事は語った。
イバン人及びその先祖が係争地を継続的に占有していた証拠もないと控訴審は判定した。
控訴の妥当性を認めた上で、控訴審は高等裁判所が出した全ての命令を取り消した。また、自分たちに有利な判決を出したのに損害賠償額を定めなかった一審判決に異議を申し立てて住民が提起した交差上訴も棄却された。

また、裁判が公共の利益に関するものであり、被告が財政的に困窮していることが明らかであることに配慮して、各当事者は自らの裁判費用を自己負担するよう命じられた。

バル・ビアン弁護士は連邦裁判所に上訴を申し立てる予定であると記者団に話した。

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ほろ苦い勝利。サラワク州政府が控訴審で勝訴したことを住民側の数名の弁護士はこのように形容した。住民が利用する土地の一区画である671.8ヘクタールについては、証拠不十分のため先住慣習権が取り消されたが、一審で認定された他の先住慣習権は控訴審でも認定された。具体的には次のことが再確認された:

1. コモン・ロー(英米法体系の慣習法)は、先住民族の法律もしくは慣習の下で権利が予め存在することを尊重する。但し、かかる権利は、その後の立法で明確な文言により取り消され得る。

2. 先住慣習権の存在は制定法に依存しない。法律が作られる遙か以前から存在しており、法律は先住慣習権がどこまで取り消されたかを判断する上で関連性を持つに過ぎない。
3. サラワク土地法は、それが制定される以前から存在した、いかなる先住慣習権も無効にしない。ただし、先住民族は土地法の下で土地調査局長の許可証で新しく土地に対する権利を主張することは出来ない。

4. 先住民族は土地に対する所有権を有しないが、土地の使用権者と呼ぶことができ、かかる使用権は恣意的に抹消され得ない。彼らの権利は先住慣習権であり、法律に従い、補償金を支払った場合にのみ抹消され得る。

つまり、ハシム判事は、トゥムダ(耕作地)、プラウ(共有林)、プマカイ・ムノア(特定のイバン人ロングハウスのテリトリー内にあると理解されている土地)と呼ばれるイバン民族の先住慣習権の概念を支持したのである。

また、控訴裁判所は、証拠不十分で政府の控訴を支持したものの、必ずしも他の類似の主張を判定する際の先例とすべきではないと述べた。住民側弁護士はこの点を歓迎したが、十分な証拠を提示することが今後、大きな課題になるかも知れないともコメントした。20世紀前半まで、政府の指示もしくは自らの意志でスリアマンやラジャン地域からサラワク州北部(ビントゥル、ミリ、バラム、リンバンなど)に移住したイバン人の村も多く、これらの新しい村の境界線は当時、地区役場に登記されていた。その記録は一部の役場に残っているが、イバン人が土地に対する権利を証明するためにそれを入手できるかどうか疑問があるという。また、土地法が制定される以前の状況について証言できる高齢者が減ってきており、立証が難しくなることが心配されると弁護士は語った。