サラワクは今



■ 先住民の土地権に、大きな脅威が
―サラワク州立法議会、2001年土地測量法案を承認。その意味するところは―

【解説】 サラワク州立法議会はさる10月31日、「2001年土地測量法案」を満場一致で承認しました。この新しい法律が、先住民には大きな脅威になるのではと心配の声があがっています。 サラワクでは、土地は先住慣習地(NCL=1958年1月1日までに先住民が既に暮らし、利用していたと認められた土地)をはじめ、さまざまなカテゴリーに区分されています。歴史の流れとしては、先住民たちが代々慣習的に受け継いできた土地が、後からやってきた人々(中華系、マレー系、そして企業や政府など)によってさまざまなやり方で取り上げられてきた経緯がありました。こうした流れを止めるため、サラワクの先住民コミュニティでは独自の地図づくりが盛んになってきました。GPSなど最新機器で測量した地図に、コミュニティの言い伝えや慣習的土地利用実態を反映させ、住民たちが自らの先住慣習地の地図をつくるのです。自分たちが希望しない開発が先祖伝来の地で強引に推し進められようとするとき、こうした手作りの地図が、裁判の証拠資料として大切な役割を担ってきました。今年はじめには、手作り地図を証拠として提出した住民側が勝訴したケースもありました。しかし今回の「2001年土地測量法」成立によって、政府のお墨付きの測量士以外は地図をつくれないことになってしまったのです。この問題をめぐり、地元紙に報道された政府側の人間の見解と、地元のNGOである地球の友のメッセージの両方をごらんください。

【コミュニティーによる地図作成は認知されず】(2001年11月4日 地元紙サラワク・トリビューンより)
●土地の境界線画定には「科学的な方式を選択する」と州政府【クチン発】
 サラワク州副主席大臣のジョージ・チャン博士は昨日、州政府が今後、コミュニティーによる地図作成方式を認知せず、土地の境界線画定には科学的な方式を選択すると発表した。この件に関しては、政府はまずコミュニティーの土地が先住慣習地であるかどうかを確認してから、専門の測量士による地図作成を許可することになる。ジョージ・チャン博士 のコメントは、水曜日に満場一致で州立法議会により承認された2001年土地測量法案に対して、地球の友・マレーシア(SAM)が発した批判への回答であった。SAM の代表である モハマド・イドリスは、この法案は先住民族コミュニティーによって作成された地図を認知しないため、コミュニティーによる地図作成を違法化する結果となると指摘した。「なぜなら、新しい法律では、州有地および先住慣習地を含むほとんどの種類の地図の作成の権限が免許を取得した測量士にのみ与えられるからである。」とイドリスは言う。しかしながらチャン副主席大臣は、SAM がなぜ専門家によって科学的に土地の境界線の線引きが行われる新しい法に反対するのか、理解できないとしている。(注:小見出しは訳者がつけたものです)

【新しい法律ではコミュニティーの測量は違法】(2001年10月31日、地球の友・マレーシア(SAM)の発表した見解)
●壊滅的な新法案
 本日10月31日、新しい法案が発表された。それは先住民が先住慣習地の権利(NCR)を守るうえで、壊滅的な影響をこうむるものである。一見、この法案(2001年土地測量法案、Land Surveyors Bill 2001)は、測量士の資格者を限定するという納得がゆくルールのように見える。この法案よって、土地測量委員会(Land Surveyors Board)が新設され、測量士の活動を限定することになるのだ。しかし法案の文言を見てゆくと、この法律によって多くのコミュニティーの活動が違法とされる可能性があることがわかる。
●住民の手作り地図が裁判で示してきた信憑性
 コミュニティーによる地図作りは、サラワクの先住民コミュニティーにとってますます重要なことになってきている。自分たちの土地の権利を証明しようと闘っている人々にとって、地図の作成は彼らの土地の境界線を認めてもらうために必要なことなのだ。サラワクでは、数多くのNGOがコミュニティーに対して村の境界線の測量に協力してきている。これらの地図は後日、法廷で証拠として扱われたり、資源の管理に使われたり、数多くの目的に活用されている。今年初め、ボルネオ・パルプ&ペーパー社(BPP)による先住慣習地でのパルプ用植林に先住民たちが異議を申し立てた裁判では、一審で先住民側が勝訴した。その裁判では、NGOとルマ・ノル村の人々が作成した地図が先住慣習地の認定に絶大な貢献をし、住民側勝訴の決定的な証拠となった(一審敗訴した会社側は、控訴の構えにある)。
●政府が認めない測量士は活動不可能に
 しかし今、この衝撃的な新しい法案により、こうした測量・地図作成の行為すべてが脅かされている。法案によると、ほとんどの種類の地図は、資格を与えられた測量士しか作成することができない。測量士以外の人が地図を作成すると、法律違反の行為になるということのようだ。最も重要なのは、「州政府の土地および先住慣習権のもと、法的に占有されている土地を含むあらゆる土地の境界線を定める」地図は、その資格を有する測量士たちのみで作成されるものである――とされている部分である。何年もの間、サラワクではコミュニティーの活動家たちはコミュニティーの境界線を示す地図を何枚も作成してきた。作成にはGPSとGISを使い、経験豊かな測量チームが関わってきた。しかし今後は、もし彼ら(コミュニティーの活動家)が「土地台帳の調査の正確性について保証し、測量図に署名もしくはイニシャルを記入する」というと、彼らは「法律違反の罪に問われ、有罪となれば、違反件数ごとに5万リンギ以下の罰金または3年以下の禁固刑もしくはその両方の刑を課せられることになる」のだ。
●土地測量士委員会が持つことになる大きな権限 不幸なことに、コミュニティーで働くこれらの測量者は、簡単には測量士資格を取得することはできない。この新しい法律によると、土地測量士委員会(Board of Land Surveyors)が資格取得に関して完全な決定権を保持することになる。コミュニティーの測量者は、測量士委員会の認定を受けるのに必要な専門的な学位を持っていない。必要な大学での学位や経験があったとしても、委員会から説明もなしにはねつけられ得るだろう。さらに委員会は、いつでもその資格を取り消すことができる。まるでその委員会は、土地調査局(the Department of Land and Survey)に操られているようである(委員長は土地調査局長が、副委員長は局長補佐がなる、などとしている)。つまり、その委員会の構成に外部から影響を与える余地は、ほとんどないということである。
●世界でも前例がない法律
 こんな法律は、マレーシアでも世界中でも、ほんとうに前例がないものだ。例えばマレーシア半島部には土地測量士委員会があるが、コミュニティーの測量を制限する規定はない。世界中の活動家たちは、法的に制限を受けず測量を活用している。
●司法の場での住民勝訴への焦りか
 なぜ、サラワク州政府だけがコミュニティーの測量を罰しようとしているのだろう?明らかにこれらの規定は、ルマ・ノル村裁判の勝訴に対する反応であろう。そして、コミュニティーの境界線を証明しようとする先住民の権利を奪おうとしているのだ。ここ最近の数多くの裁判では、サラワクの裁判所がコミュニティーやNGOで作成した地図を法的に認めようとしている。ルマ・ノル村の裁判や他の裁判では、コミュニティーの努力で行われた測量や調査を(先住民の土地権承認の)証拠として認めるかどうかの決定権限は、裁判所に委ねられてきた。しかし新しいこの法律では、司法からこの権限を奪うことになる。今後は、この新しい土地測量士委員会だけが、どの地図が法的に有効かを決める権限を持つことになる。
●まだまだ地図に記されていないサラワクの土地
 これまで土地調査局は、全体からみたらほんの数パーセントの先住慣習地の境界線しか、地図に記していない。もし今後それに努力したとしても、完成するのに何十年もかかるであろう。しかも政府の測量士がコミュニティーと境界線について相談しながら進めなければ、その地図はほとんど価値がないものになるだろう。それに政府は、この法律が制定された後も、たとえ資格を持った測量士が危険を承知で地図作成の仕事をすることに同意したとしても、ほとんどのコミュニティーはその費用を払う余裕はないことを知っている。政府の測量士が怠ってきた重要な役割をコミュニティーの地図作成者は担っているのだ。その土地の広さを示す地図がなければ、コミュニティーは森林伐採や油やしプランテーションをしている企業の主張に負け、急激に無力になっていくであろう。
●先住民の土地権を認める世界の潮流に逆行
 世界中で先住民の土地の権利が認められてきている。サラワクでも裁判所は、この問題では進んでいる。しかしサラワク州政府だけが、反対の方向へ向かっている。測量士の資格に関する手続き法を隠れ蓑として、政府は自分たちの既得の利益を守り、先住民の権利の主張を否定する、時代に逆行した政策を実施しようとしている。この法律はサラワク州による先住民の扱いに対するもうひとつの汚点となるだろう。この法案の目的が無資格者によって不正な地図が作成されるのを防ぐことにあるのであれば、われわれもその意図には賛成できる。しかしこのような法律で、土地の権利の闘いを犯罪におきかえるべき理由などない。(以下略)(注:文中の小見出しは訳者がつけたものです)


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