
■バクンダム移住開始される!
サラワク州中心部に位置するバルイ川沿いの村々は、いよいよ実施されたバクンダムによる移住に直面している。バクンダムは近年のアジア経済危機の影響を受け、その続行が危ぶまれているプロジェクトの一つである。
現地からの連絡によれば、移住対象の15村(約1万人)の内、1999年12月末現在で、5つの村(約4千人)が移住させられた模様である。移住対象の村の住民は移住計画が計画され、実行に移されて以来、移住賛成派と反対派に別れてきた。現地NGOの調査によると、賛成/反対派関係なく、多くの住民は移住の内容や政府により提案されているその後の条件などについてほとんど知らされておらず、理解していないと言われている。
移住に関係する問題は山積みである。移住先の家屋(ロングハウス)は先住民族の伝統的な家屋方式を理解していないイギリスの企業により建設されたものであり、住居に使われている材料なども非常にもろく、長期の使用に耐えるものではない。既に移住したいくつかの村では、それら住居に住む前に様々な修復を施さなければならない状態である。また、それらの住居に対して、住民は約5万リンギ(約170万円)ものお金を払わなければならない。移住先で与えられる土地も3エーカーしかなく、先住民族の農作物を育てるのには全く不十分な土地である。さらにそれらの土地は移住先のロングハウスから非常に遠く、土地も痩せていて農作には適さないという。
それに対し支払われる補償金についても問題が多い。住民に支払われる予定の補償金は未だに30%しか支払われておらず、残りの70%は政府の指定した移住先に移住した後にのみ支払われるということになっている。また、それら補償金の計算には、先住民族の土地の広さが正確に反映されておらず、またその土地にある全てのものが反映されている訳ではないため、補償として不十分なものだという。
それでも移住をする住民がいるのは、補償を受け取れなくなることへの恐れや、子供たちを学校へ行かせる必要性(元の村などにある学校や病院は移動した)があるためである。しかし、今日まで、補償についての書類での証明はなされていない。
また、ある情報(現地調査)によれば、住民は移住地に到着した際、数十ページもある契約書に署名をさせられるという。その契約は、全て英語で難しい言葉を用いて書かれており、しかし住民は補償を求める一心でその契約に署名をしている。その契約は約5万リンギの住居の支払いに関するものであり、初期支払いの2万リンギを住民の補償から差し引き、残りを5年後から約25年のローンで支払う(利子4〜5%)というものであるという。多くの住民はこの支払いの仕組みについて十分に理解していない。住民は住居を買うということが初めてで一般的な住居の価格を知らないため、高い価格を提示されていることを余り理解していない。さらに、最初の5年間はローンの支払いがないため、5年住んで今の家屋から出ていけばよいものと勘違いしているようだ、と現地報告は述べている。
移住先はあらゆるものを購入しなければならないため、現金収入を必要とする生活に変化していく。しかし、補償は新しい家屋への支払いや移住地への移動費用でなくなってしまい、移住地で与えられた3エーカーは自分たちの食糧を支えるにも、現金収入を得るにも極めて不十分なものである。また、移住先で与えられるとされていたプランテーション労働も、雇用がまだ開始されていないという。さらに、移住地での物価は近くの町のブラガよりも20〜100%も高く、家屋へのローンも含めると今後の住民の先行きは極めて怪しいものであると言わざるを得ない。
これは明らかに移住に関する政府の計画の失敗である。住民は移住に関してほとんど情報を与えられておらず、政府の用意したやり方に従うという選択肢しか与えられてこなかった。また、その案の策定に当たっては住民との協議がほとんどなされず、住民の意見を十分に吸い上げる機会も存在しなかった。その結果として、以上のようなことが発生してきているということは、ほとんど驚くに値しないことである。
■エクラン社に、バクン建設の報酬2億7000万リンギット
大蔵大臣代理のオマール氏が述べたところによれば、マレーシア政府は、目下棚上げ状態にあるバクン水力発電プロジェクトにおいてエクラン社が今までに行ってきた事業に対し、2億7000万リンギット(約92億円)を同社に支払った。
ベルナマ通信社によれば、オマール氏は議会で、このプロジェクトの河川の分水トンネルは65%が完了し、移住プログラムは予定通り進行していると述べた。
155億リンギットを要するバクンプロジェクトについては、政府が経済低迷期に莫大な資金を要するプロジェクトへの出資を懸念し、昨年棚上げを決めたものである。政府が本プロジェクトを引継ぐこととなっており、エクラン社には補償をすることになっているが、補償額はまだ決められていない。
4月、大蔵省高官が補償は約2億リンギットだろうと述べたと伝えられている。エクラン社が主張する同社の出費は、会計監査担当のプライス・ウォーターハウス社が現在確認作業を行っている。
4月22日、政府がエクラン社からバクンダムを引き継ぐための最初の支払い分として4000万リンギットを認めるという法案が、議会を通過した。この支払いは、韓国の建設会社ドンア社の作業およびダム開発に対して政府が支払った3400万リンギットに次ぐものである。
(サラワク・ビジネスタイムズ、98年5月20日)
■バクンダムは規模縮小して再開?
現在工事が止まっている巨大なバクンダム計画は、規模を縮小するが復活させると、政府高官は語った。
「経済が回復した時にはじめてプロジェクトは継続させる。規模は小さくなるかもしれない。」とサラワクの産業開発大臣ゾハリ氏は語った。再生計画の詳細については明らかにしなかった。155億リンギット(約5280億円)以上を要すると見られていたこのプロジェクトは、昨年11月、当時の膨らみつつあった国際収支の赤字を緩和させるために棚上げされていたものである。
高官の発言は、このプロジェクトが規模縮小されるだろうというビジネスタイムズの4月の報道を裏付けることとなった。世界最長の海底送電ケーブルでバクンと半島マレーシアとを結ぶという野心的な計画も破棄されると見られる。
前の開発業者であったティング氏とその妻は、エクラン社の上場株の55.7%を所有しているが、彼らはそれを新しい大手の株主へ売却するだろうと見られている。エクラン社とは、プロジェクトが政府によって引き継がれる前のバクンの開発業者である。ティング氏は今でも自分のグループ企業の建て直しに努めている。彼は以前に彼の所有するPWE産業の上場株の49%、グラナイト産業の上場株の32%、合計9億2450万リンギット相当を売ってエクラン社に資本投入すると言っていた。しかし最新の見積価格を用いて計算するとその資産の価値は1億5000万リンギット以下である。
バクンプロジェクトの支配権をなくしたことの他に、エクラン社は昨年の新株引受権発行によって得られた14.7億リンギットの使途について証券委員会による調査を受けている。その金は、プロジェクトの所有者であるバクン水力発電会社におけるエクラン社の出資金32%に充てられることとなっていた。エクラン社の最新の年次報告書の中では、ティング氏は彼の最も重要な会社であるエクラン社がその金の一部を意図しない目的に利用したことを認めている。
(サラワク・ビジネスタイムズ、98年6月19日)
■関係の分裂は巨大プロジェクトについての論争によって引き起こされた、とアンワル氏
前の副首相アンワル・イブラヒムは、逮捕される前に、マハティール・モハメッド首相との論争によって関係が壊れ、最終的な解任に至ったことを明らかにした。
アンワル氏によると、サラワクのバクンダムやクアラルンプールの新国際空港、国営石油会社ペトロナスとマハティール首相の息子ミルザン氏が支配する海運業グループとの間の取り引き、新首都プトラジャヤの開発、マハティール首相や彼自身のための公邸の建設など、巨大プロジェクトへの過剰な出費に対して彼が異議を唱えたことにより論争が起きたという。
アンワル氏は、「倫理的に不適任」であることを理由に副首相を解任された後、国内治安法により逮捕された。アンワル氏は、バクンダムについては、もしそれが適切に統御されていれば強く反対はしなかったと述べている。彼がバクンダムのプロジェクトやセパングの新空港の幾つかの側面について異議を唱えたとき、マハティール首相は立腹したとアンワル氏は付け加えている。
アンワル氏によると、国営海運業会社MISCの親会社であるペトロナスと、ミルザン氏が関係する海運業グループであるコンソーチアム・ペルカパランの間の取引に関する国際的な監査において、海外の査定者に監査を依頼するなど、適切な手続きを取るべきであると主張すると、マハティール首相は怒ったと言う。
また、新首都プトラジャヤや、首相、副首相のための新しい公邸の建設に多額な資金を費やす正当性はほとんどないと言った。
アンワル氏は、「たくさんの秘密を知りすぎた」ために、マハティール首相とダイム・ザイヌディン特別職務大臣が共謀して彼を追い出し、政治的に失脚させることに直接関わったとして、非難している。また、性的な不義を問われたのは「汚職で逮捕することができなかった」からだと主張している。
(サラワク・ビジネスタイムズ、98年9月25日より抄訳)
■ジョクさん,おめでとう!
1998年10月14日、長期に渡りサラワク州の人権及び環境問題を是正するために尽力してきた先住民族のリーダー、ジョク・ジャウ・イボンさんが、コンデ・ナスト・トラヴェラーズ環境賞を受賞した。この賞は、地球環境の保護のために並外れた努力をした人に、毎年与えられる。ジョクさんには、アメリカ旅行代理業協会の年次大会で、この賞が授与される。また副賞として$2万ドルも送られる。
ジョクさんは長年に渡り、バラム川沿いの先住民族の村、ウマバワンの為に忍耐強く努力した。またボルネオ中の先住民族社会の人権問題、土地権の確立、森林伐採や油ヤシプランテーションの拡大阻止に取り組んできた。それだけでなく、経済のグローバル化に対する代案としての、地方の経済的自立・文化・環境に配慮した開発の考案などにも尽力してきた。
関係者は、この機会に、彼と彼の弁護士と共にマレーシア政府に彼のパスポートを返却させることを働きかけている。彼のパスポートは1993年、国際先住民族会議に出発すべく飛行機に搭乗しようとしたときに無効にされた。もしジョクさんが出国できなければ(残念ながらその可能性は高い)ジョクさんの仲間で同じ村に住む、ルイスさんとプーヤンさんが代わりに受賞する。ジョクさんまたはルイスさんと共に来訪するプーヤンさんは、ウマバワン女性組合の人望厚いリーダーである。
ウマバワンの一行は10月10日から24日のおよそ2週間アメリカに滞在する。