
サラワクは今…
■サラワク先住民・深刻な干ばつ被害
サラワク州の干ばつは昨年12月から続いており、水不足、コレラ汚染、森林火災や煙害などの問題を引き起こしている。長引く干ばつの被害が深刻なのは、サラワクのミリ県、リンバン県からブルネイ、サバ州にまたがる地域である。
干ばつ問題
ミリ市では、今年の1月から水不足が深刻で、ホテルの宿泊客、中心部や沿岸部の住民が、洗濯、料理、飲料水などの断水に不満の声を上げている。
最も被害が大きいのはクアラバラム(バラム川の河口の町)の近く。というのは、そこの住民は日常生活を雨水だけに頼っているからだ。もう何ヶ月も雨が降らないため、ため水も底を突き、洗濯は海水や沼などで行わざるを得なくなっている。
1月以来、多くの住民がコレラに罹り、それが今バラム川流域のマルディやロングラマまで伝染している。
コレラの重症患者もスアイ地区、ニア地区のバトニア保健センター周辺でも確認された。
しかしながら、スアイ川地域での患者数の内訳は出されていない。なぜなら、観光客への風評を怖れた厚生省が、コレラ患者を治療している保健センターに、いかなる統計も公表しないようにとの指示を出していたからだ。
ミリ県での干ばつは焼畑農耕民にも被害を及ぼしている。彼らは、果樹や穀物を栽培するには通常の天候パターンにしか頼れない。通常の乾季は8月と9月だけだが、このパターンが作物の作付け時期を決定づけてきた。
今回の異常な干ばつにより、ミリ県の2〜3万人の農民が水不足による不作にみまわれた。
バラム川・アポ川・トゥトー川の上流やバコン地区やティンジャー地区、リンバン県のいくつかの地区に住むカヤン人、ケニャ人、イバン人、そして定住プナン人の中には、米の収獲のなかった人々もいる。
干ばつはまた、果樹にも悪影響を与えている。ドリアン、プアク、ランブータン、テムダやランサのような果樹は受粉不足のため実をつけていない。
農民は、受粉に欠かせない大気の湿気がないことが原因だと確信している。果樹の所有者は収入が入らないために気が動転している。今年の初めから、ミリとマルディの市場では地元の果物が姿を消していた。売られていたのは、輸入されたリンゴ、グアバ、ぶどうなどである。野菜も市場では選択の幅がなかった。畑作でも、いろいろな種類の野菜を植えるのが難しいとの不満の声が上がっている。
森林火災と煙害
煙害がいまだに深刻なのは、バラム流域のミリ地区と、リンバンとラワスであるマルディ、ムル、バリオ、ロング・レラン、バクララン、ラワスなどの小空港への飛行機は濃い煙のために2月の第三週から運行を停止している。
ミリ市では全ての学校が2月27日から学校閉鎖し、いつから再開されるかの発表はない。ミリ市での空気汚染指数(API)の記録は、500から800の範囲までに達したことが報告されている。この記録は、ミリ県の気象サービス局災害救援委員会から出され、4月4日の地元紙で報道された。
森林火災はミリ地区の、例えば、クアラバラム、マルディ、バラム川上流のロングサン、バリオなど各地で報告されている。リンバン市近くのタンボロンやサバ州西海岸の数地区でも同様だ。
クアラバラム近くの森林火災は広範囲に延焼し、川岸沿いと内陸へ2、3キロの範囲で生育する広大な面積のマングローブ林とニッパヤシを破壊した。2月上旬から始まった火災は、ある製材所近くで余剰チップを野焼きしたことから始まった。
ある情報筋によると、消防士による消火活動は、火が土中の木の根にまで延焼したために火を完全に消すことができなかったという。
マルディでは、多くの人の消火活動にもかかわらず、2月上旬から、火災がすぐ近くのリダン川、テラジャ川、トダン川流域それぞれの森林地帯で発生した。現在まで煙害の状況に回復の兆しはない。
ミリ市に近いランビール国立公園の州有地でも、近隣農民の土地から始まったとされる森林火災が辺りの広大な森を破壊した。消防士たちはその消火活動に何週間も費やし、やっと降った大雨で収束を迎えることが出来た。
バラム川上流のロングサン近くのケニャ人のロング・ジェ村では家畜の多くが、2月12日に始まった勢いの止まらぬ森林火災で死んだと報告してきた。
2月16日、バリオのケラビット人たちは、ロングハウス、学校、公共施設、店などに火災が及ばぬよう努力していた。だが、2月21日までに、炎は大きくなり、森林へと延焼した。火は、目には見えぬが、じわじわと木の根を伝わり土中を進み、バト・ラウィ山の原生林にまで近づいた。
結局、火災は、観光資源でもある、景観の素晴らしいその土地のジャングルを破壊してしまった。
地球の友マレーシア
(ウタサン・コンスーマ 98年5月号)
■バクン住民にヘクタール当たり3,000リンギの補償金
計画資源管理補佐官のアワン・トゥンガ・アリ・ハッサン(Awang Tengah Ali Hassan)によれば、政府はバクンダムによって影響を受ける住民に対し、空き地1ヘクタール当たり3,000リンギの補償金を支払うという。
アワンによると、住民の作物は、その「土地の面積」にゴムやココアの木、胡椒の茎などの「種類と本数」をかけた数値に基づいて評価される。
その他にまばらに植えられた作物については、「木の数」に政府承認の一本当たり補償金額をかけて評価される。政府承認の一本当たり補償金額は、作物の状態や年齢、手入れ状況などが検討された後に決定される。
また、地方土地開発補佐官でもあるアワンによれば、州有地や森林保護区に植えられた作物については、それがどのようなものであれ政府の補償の対象にはならないだろうという。
スタンレイ・アジャン(Stanley Ajang)に対してアワンは、二つのケニャのロングハウスに総額3,890万リンギが支払われる予定であると語っている。対象となるロングハウスはロング・ブランのウマ・バカと、ロング・ジャウェのウマ・クリッである。
アワンによれば、726万リンギまたは補償金の30%が最初に支払われる。補償金の残り分は、住民が再定住地に移ってから支払われるという。
(スター紙 1998年5月13日)
■バルイ川上流「今世紀最後のウェディング」
サラワク行政職員のカヤン人女性、ルーシー・ビダと、イバン人の夫ラザラス・シメオンの結婚式は「バルイ上流の今世紀最後のウェディング」と呼ばれている。
ウェディングはバクンダムによって影響を受ける約9,000人の先住民族にとって一種の歴史的できごととなった。それはこれがこの地域で最後の結婚式だと予想されているからである。
カヤンの祭式に従って5月15日に結婚した二人は、62戸を有するブラガ上流のロング・リコ村の、その日の王と女王になった。
近隣のロングハウスからも住民が祝福に訪れ、ウェディングは本当に思い出深いものとなった。
ルーシーはこう語る。「当初、私たちは来年挙式することを予定していました。しかし、私たちは6月か7月にはアサップ川付近にある新しい土地へ移住するかも知れないので、挙式を早めました。」
「私の両親やロングハウスの人々にとって、少し寂しい気持ちがしますが、この幸せな祭式をロング・リコで開くことは重要なことなのです。」
ルーシーは、もし村がアサップ川に移住したら、バルイと彼女のロングハウスを恋しく思うことになるだろうと語った。
しかし、再定住の実施は人々に変化と開発をもたらすのものであるから積極的に見るべきだと彼女は言った。
バクンダムによって影響を受ける19のロングハウスの住民のアサップ川への移住は、人々からは複雑な心境で受け止められている。
今、バルイに生活を営む人々は、新しいロングハウスの建設や補償、そしてアサップ川の土地へ移住したとき何をするのかなどの問題を静かに考えている。
(スター紙 1998年5月29日)
■またも工事現場で死亡事故
今年3月8日の10人死亡21人ケガのトラック転落事故に続いて、またもやバクンダムの迂回トンネル建設工事現場で死亡事故が発生した。6月20日のスター紙が報じた所によると、今回の事故が発生したのは6月17日。労働者がキャンプへ夕食を取ろうと戻る途中に乗っていた大型トラックが崖を30メートルほどの谷まで滑り落ちたという。死亡したのは3人のタイ人と1人のマレー人の合計4名である。他に16名がケガを負った。
この迂回トンネル建設を請け負っているのは韓国に本社のあるドンア社である。このような事故が一年に既に二度も発生しており、更に昨年には迂回トンネルが崩壊する事故が発生するなど、工事や労働者管理のずさんさが目立っている。
ドンア社はまた、工事期間の延長を申し入れており、工事が延長されれば建設コストの増大ともなる。マレーシア政府は現在バクンダムを延期にする発表を行っているが、当初の見積もりよりも割高と予想されている。安全性の疑わしいダムを先住民族の権利を犯してまで建設する意味ははたしてあるのだろうか?
■バクンの移住9月にいよいよ開始か?
ハッタ・ソリー州副主席大臣(Deputy State Secretary)の発表によれば、約1万人と言われるバクンダムによって影響を受ける住民の移住第一陣が、9月には移住先であるロング・アサップに移住させられる。残りの人々も6ヶ月以内に移住を終了する予定となっているようだ(スター紙 6月19日)。
ハッタはまた、移住先の新しいロングハウスが8月中に完成し、地域の学校が10月にも開校する予定であることを述べている(同 6月14日)。
これに対し、サラワク観光大臣であり、バクン再定住委員会委員長でもあるジェームズ・マシンは、移住先の学校やクリニックなどが完成するのが8月であるとし、住民の移住は4ヶ月かかる予定であることを述べている(同 6月27日)。
前回のニューズレターにも述べた通り、移住先に用意されているロングハウスは、イギリスの企業(Backnailグループ)が建てた非常に壊れやすく長持ちしないもの。移住先での家屋に金(180万円/世帯)を支払わなければならないことや、住民に与えられると言われる土地(1.21ha)の不十分さに対しても依然として抗議の声がある。
また、移住後にのみ支払われると言われている残りの補償金額についても、これまでの経験からして本当に支払われるのか疑わざるを得ない。1985年にサラワク州南西部に建設されたバタン・アイダムの場合には、住民は、無料で提供されるといわれていた家や水や電力などにも料金を支払わなければならず、補償として与えられる予定であった4.45ヘクタールの土地も、実際にはわずか0.4ヘクタールの痩せた土地しか与えられなかった。そして補償金は今日でも完全には支払われていない。このような同じ状況に陥ることを住民は恐れている。
■バコン裁判開かれる!
1998年9月6日、ミリの高等裁判所で油やしプランテーションに反対する二つの裁判が開始された。この日の裁判では、両者とも訴訟について原告側からの訴えを聞いた。
第一の裁判は、バンガウ・アナ・アンドップとその他2名によって起こされたもので、スガラカン社とプラナ社、エンプレサ社、土地管理開発機関(LCDA)、サラワク州政府を相手取って起こされたもの。第二の裁判は、マレーシア・アナ・バンとルマ・ジャワン(ケラビット川)の他4名によって起こされたもので、上記三社とサラワク州政府を相手取って起こされたものである。
両裁判で原告は、
一)プランテーション会社や下請企業などがイバン共同体の慣習地に侵入したり、占有、伐採、使用することを制限する(裁判所の)禁止命令
二)プランテーション会社や下請企業などが先住慣習地での活動を止め、全ての建物、重機械、道具などを撤去する強制命令を求めている。
(現地からの報告 1998年9月6日)