
サラワクは今…
バクン地域住民委員会(BRPC)が政府当局に宛てた要請文
1998年2月28日
首相 マハティール・ビン・モハマド 殿
副首相 アンワル・ビン・イブラヒム 殿
サラワク州主席大臣 アブドゥル・タイブ・ビン・マハムド 殿
土地管理開発機関 代表者 殿
観光大臣兼バクン再定住委員会代表 ジェームス・マシン 殿
州法務局員(ブラガ) スタンレイ・アジャン 殿
議会議員(ウル・ラジャン) ビリー・アビット 殿
バクン地域住民委員会(BRPC)は、サラワク州政府とバクン再定住委員会(BRC)に対し、暫定的に今年7月に予定されているバクン地域住民の移住を棚上げすることを求める。7月というのはBRC代表であるジェームス・マシンが最近発表した予定である。
1. 連邦政府はバクン計画を無期限に延期すると繰り返し発表している。同計画の現在の状態は多くの不確実性にさいなまれている。従って、サラワク州政府が私達影響を受ける住民を、生活の支えである今の地域や先祖の土地から移住させる妥当な理由はどこにもない。
2. 再定住の実施は、現在マレーシアが直面している深刻な経済・通貨危機という面から見ても、時宜を得ておらず不必要である。もし、私たちが新しい地域へ移住すれば、私たちは新しい生活を始めて、菜園や作物を作るのに時間がかかるため、市場のなすがままになるだろう。そして食料品や私たちの生活に必要な全てのものを購入しなければならなくなるだろう。私たちが今生活をしている場所では、私たちはまだ母なる地球を通して神が与えてくれた農園や菜園、森林、川に頼ることが出来ている。この点は明らかにマレーシア人の食糧生産と自立を促進する連邦政府の現在の政策と一致するものである。
3. もし州政府が再定住を進めるつもりならば、バクン地域の住民は選択肢や選択権を与えられなければならない。つまり、移住するつもりで準備の出来た人々は移住先に行くことができ、一方、現在の土地に残ることを選んだ人々に対しては、バクン計画が実際に進められて、そこが水没するまで土地に残ることが許可されなければならない。政府は住民を移転させるために力や脅しを使うべきではない。なぜならば(政府リーダーが長い間ずっとマレーシアがそうであると言ってきたような)民主的、市民社会において、それは不公平なだけではなく、私たち住民自身の生き方と、運命を自分で決め、選ぶことに対する(政府の)無神経さと完全な無視を反映している。
計画には、まだ満足に検討されていない未解決の問題がいくつか存在している。私たちが不満で、また残念に思う問題のいくつかを以下に挙げる。
4. 再定住のために用意される家は非常に高く、一部屋につき約50,000リンギ(約180万円)である(マレーシアにおける低価格住宅の価格は一部屋約30,000〜35,000リンギ)。家の建設における建材の質や、出来栄えについてのたくさんの苦情が聞かれる。高値をつけることで、政府がしていることは字義通りに言って、右手で何かを私たち住民に与え(補償金)、しかし左手でそれを住民から取り返す(再定住地の家屋を高く買わせる)ということである。
5. 再定住地で各家族に与えられる3エーカーの土地は、家族と現在の生活様式を支えるのには不十分である。たとえ近い将来を考えたとしても、4人かそれ以上の子供を持つ家族は、最後には非常に狭い土地しか持たないか、さらに悪ければ土地なしになってしまうだろう!これは私たちの犠牲に対する開発の対価であり報酬なのでしょうか?
日本の占領時代、共産派の反乱の時、また武力衝突の時代に私たちは国を守るため戦った。しかし最後になって、私たちは懸命に守ってきた土地から強制的に追い立てられた。その土地は私たちが血と汗をしみこませてきた土地であり、子どもたちやさらにその将来の世代への望みを託した土地でもあった。全てはただペンの一筆、高官からの素気ない声明によってなされたものである。
私たちは、土地がどれだけ自分たちにとって必要不可欠で重要なものであるかについて考えるために長く待つ必要はない。マレーシアを悩ませている現在の経済危機はよい例である。将来に似たような危機が起こらないという保証がどこにあるのだろうか?さらに、再定住させられる家族はそれぞれ約2,200〜2,500リンギ(約79,200〜90,000円)を土地の財産所有権のために支払うよう要求されている。これは酷い目に合わせた上にまた侮辱を加えるものである。私たちはそもそもこの土地を頼んでいない。
6. サラワク州政府は住民に対する補償金をまだ完全に支払っていない。既に支払われた補償金はたった30%だけである。政府が私たちに移住をするようにという前に、補償金の全額が私たち住民に支払われるべきである。住民は移住させられた上に補償が完全に支払われない状況になる罠にかかることを望まない。
計画全体が開始早々から問題だらけで、不確実性に満ちている。住民は自分たちの作った訳ではないそのような状況に引きずり込まれることを求めていない。
7. 地域にはまだ係争中で位置づけがはっきりと分かっていない土地や農園がたくさんある。その内、いくらかの土地や農園は私たちが耕し、長年にわたって使用してきたにも関わらず、勝手に州の土地として分類されてしまっている。先住慣習権の下で法的にも私たちのものであるそれらの土地に補償がされないのであれば、土地を立ちのくつもりはない。私たちはその土地での権利を主張し、行使する。
上に挙げられた理由から、BRPCは再定住を進める計画と決定を州政府が真剣に見直し、再考することを強く求める。
国家の経済危機やバクン計画の無期延期などの状況の中で、この再定住計画を進めることは理にかなったことではない。私たちは、それは不必要かつ不当であり、時宜を得ていない上、近視眼的なことであると強く感じる。この決定は、常識的に相反するものであり、破滅を招くだけである。
政府は、私たち住民が被っている損失と被害に対する、十分だと思われる補償は全くないということに完全に気付くべきである。なぜならば、それらは数字で測ることが出来ないからである。それは長期的には莫大な経済的、社会的負担を生み出すことになるだろう。この時期において、政府は真剣に小規模水力発電を含めたオルタナティヴな開発のモデルを考えるべきであり、巨大計画に固執すべきではない。なぜならば、最後には、巨大計画は「巨大」な影響と結果を招き、「巨大」な頭痛の種となるでしょう!
私たちに民主主義の原則を確認させて下さい。人々からの、人々の、人々による、人々と共に、そして人々のために!少数の個人のためにではなく!
BRPCを代表して BRPC代表 バト・バギ