
サラワクは今…
数々の問題点が指摘されてきたバクンダムのディベロッパーであるエクラン社(Ekran Bhd.)は、9月4日、バクン水力発電所の設計、調達、建設のためにスイス-スウェーデンのアセア・ブラウン・ボベリ社(ABB)が率いるABB-CBPOコンソーシアムと交わしていた契約を破棄すると発表しました。
■エクラン社とABB-CBPOコンソーシアム、合意に至らず!
エクラン社は今日、バクン水力発電計画の開発の契約について、ABB-CBPOコンソーシアムとの合意に至ることが不可能であった旨を発表した。
合意がもはや不可能であるので、エクラン社は「計画を完了するために他の取り決めをする」と社長のチン・ペク・キインは述べた。
これはエクラン社が計画に取りかかるために、他の企業を探さなければならないことを意味している。
(中略)
7月の末、チンはランカウイで記者に対し、争議の最大のポイントはABB-CBPOが如何なる費用超過も請求できるかどうかにあると語った。設計・調達・建設(EPC)契約にはABB-CBPOが計画の136億リンギの算定費用以上の費用超過分について、請求出来るよう規定してある、と語った。
そして、チンは、契約の言葉使いが、一方の側、つまりABBに有利であるように思われ、それはいかなる費用超過もバクン水力発電会社が支払うことを意味している、と述べた。
(中略)
チンはもしABBが従わないのなら、「誰か他の企業が仕事をするだろう...この仕事をすることに関心のある他の関係者は沢山いる」と強く語った。(The Star紙、9月4日)
●SCCより
上にも書いた様に、エクラン社とABB-CBPOコンソーシアムの争議は両者が決裂する約2ヶ月前から現地でも新聞に取り上げられ始めました。当初、アンワル副首相が「(エクラン社とABBの)争議は契約の重要な条件部分について起こされている」(New Straits Times紙、7月16日)と発表したのに対し、エクラン社のチン代表は翌日の同紙上で「私は整理されるべきいくつかの小さな問題があったのだと言っているのだ。それは争議ではない」(同紙、7月17日)と反論しています。しかしながら、今日明らかにされた事実から見る限り、両者の間の争議は決定的に重要な部分に起こされていたということが明らかです。
エクラン社は、以前からいかなる計画の費用超過も、その遅れも否定してきましたが、今回の事例を見る限り、情報の信憑性は限りなく低いと言わざるを得ず、エクラン社の投資家へのパフォーマンスと取られてもおかしくないでしょう。事実、現地からの情報や現地紙では、すでに費用超過や計画の遅れについての言及がなされています。仮に費用超過を否定するエクラン社が、超過しないことに本当に自信があるのであれば今回のように費用超過の支払い条件について執拗にこだわるのはなぜなのでしょうか。
マレーシアの約40のNGOの連合であるGabunganは、9月5日付けの報道発表の中で「このABBとの契約の破棄は、マレーシア政府がバクン計画を押し進めることによる甚大な問題を認識する良い機会である」と述べています。
■バクン計画、最長2年?
大蔵大臣のアンワル・イブラヒムは昨夜、物議をかもしているバクンダムが最長で2年遅れるかもしれないとほのめかした。
「私達が17年間以上にわたってバクンダムの問題について議論をしてきたことが思い出されるだろう」「私達は更に1、2年間、審議することが出来る」彼は用意した文章からそれてそう語った。
首相のマハティール・モハマドは最近、155億リンギのバクンダムを、現在の勘定ギャップの重い負担を緩和するために遅らせる主要インフラ計画の一つとして指定した。
しかし、マハティールは延期の時間枠は示さなかった。
(中略)
エクラン社は2ヶ月以内に公表する新しい請負会社を既に選んでおり、新しい相手はドイツのシーメンスかフランスのアルカテルになるのではないかと、一般には予想されている。
情報筋は、ダムの中心的なEPC契約は早くとも、川の迂回工事が完了した1998年の第一四半期にのみ始められるだろう、と述べている。
(SBT、9月11日)
●SCCより 〜住民の不安は続く〜
一方で流域に生活を営む住民達の多くは、既に移住の告知を受けているために、今まで耕作してきた農地を放棄し、一部は徐々に新しい移住地に移住し始めています。前号特集で詳しく報告した通り、既に移住を始めている村の住民の多くは、政府が用意した土地に移るのではなく、それぞれのダムによって水没しないロングハウスの上流の地域へ移住を開始しています。
期日通りに支払われる補償金をあてにして耕作地を放棄した住民は、計画の遅れ等に伴う補償金支払いの遅れの影響によって、食糧不足に陥っていると訴えています。9月2日に行われた補償金の支払いの際には、補償金が公約通りに支払わておらず、今後それが確実にかつ公平に住民に対して支払われるのかについて非常に不安を残します。
■バクン地域住民、自らの方法で移住
バクンダムによって影響を受けるリナウ川・ロングガンの総計105家族(682人)は、ここ2年間で徐々に彼らの先祖伝来の土地であるロングラワンに移住してきた。ロングラワンはロングガンより高地に位置し、ダム湖による影響を受けない。ベラガ流域のスンガイコヤン、スンガイアサ地域で政府が用意する移住計画を受け入れる代わりに、最も連帯力の強い共同体の一つであるロングガンのケニャ人は、生き残りのための彼ら自身の道(手段)を見つけている。一方で、バクン開発委員会(BDC)の補償小委員会の幹事は、バクン地域住民が補償金に関する不安を抱いている旨を表明している。
(中略)
バルイ川上流に住む、影響を受ける他の数々の共同体(影響を受ける総人口約10,000人)は同様の道(方法)を歩む意思を表明している。これはジェローム・ルソー博士の見解を証明しているように思われる。「...農業的な観点からみて、バルイ川の住民を他の地域に移住する理由はない」。カナダのマクギル大学の人類学の教授であるルソー博士は、1994年にバクンダムの社会的影響調査に係わるため、州政府に招かれた。教授は移住計画について批判的な見解を示している。
(マレーシアからの連絡、7月21日付け)
■食糧が底をついたバクン地域住民
バクン地域住民委員会(BRPC)の委員長、バト・バギは影響を受ける住民が補償金支払いが遅れているため、政府の対応に満足していないと述べた。
彼は、適切な補償がなされず、住民がこれまで収入を得ていた耕作用地を持たないので、困難に直面していると述べた。
「政府が補償を早く払うことを希望する」彼は記者会見でそう付け加えた。
その他に、BRPCは政府が今月から5袋(250kg)の米を各家族に送るよう要求した。
影響を受ける地域で生活を営む住民は、土地が(政府に)取り上げられて以来、食糧の底がつきかけている状態だ、とバト・バギは語った。
BRPCの一員であるハビッドは、政府が土地調査局の調査に従って補償を支払うべきだと述べた。
(Borneo Post紙、9月8日)
■バクン地域住民のリーダー、間違いで2リンギの補償金
バクン移住委員会のジェームス・マシン委員長は9月4日、(バクン地域住民の)15人のリーダーの一人が、8月26日のブラガ地区の役所での補償金支払いの際にわずか2リンギしか受け取っていないことを確認した。
マシン(観光大臣を兼任)は、数日後に届いた影響を受ける住民からの手紙により、補償額について知らされた、と述べた。
彼は、土地調査局により説明が行われるだろうことを確約し、額が間違いであることを認めた。「それ(手紙)は事実です。私は額について書かれた(住民からの)手紙を受け取っています。それを確認のために直ぐに土地調査局へ転送しました」
マシンは、彼が土地調査局へ問題の調査を徹底的に行うよう要請したと述べた。「補償金支払いの額を計算するのは彼らの仕事だ」
彼は、彼自身が移住をはかどらせることについては責任があるが、補償金の額の計算に関しては責任がないことを指摘した。
15人のリーダーの内4人は現れなかった。ウマレソンのペンウル・ライン・ウアンは最高額の69,542.76リンギを、次いでウマジュマンのトゥメンゴン・タレ・リスは59,511.52リンギの補償金を受け取った。
15人のリーダーは彼らの小切手を(政府に)返したにも係わらず、面倒事は起こらず、住民は政府との問題を解決するための適切な議論をする用意がある。
一方、影響を受ける住民と土地調査局、関係政府機関の間での対話について、マシンは彼はまだ日時を知らされていないと語った。「私は正確な日時も、何処でそれが開かれるのかも知らない。移住をはかどらせるためにそれが直ぐに決定されることを望む」と彼は述べた。
彼は、その対話の中で関係当局が補償金額の算出についての詳細を説明することを望むと言った。
マシンはバクン水力発電会社が、州政府の基金から出されている住民への補償金2億8,300万リンギを払い戻せることを確信している。
(Sarawak Tribune紙、9月5日)
■42人のイバン人が開放される:高裁、謹慎命令を破棄!!
〜他の4人のイバン人の訴訟についても勝訴判決!〜
ミリの高等裁判所は8月6日、42人のイバン人による訴えを認め、42人が6ヶ月の謹慎を履行するという治安判事裁判所の命令を破棄した。
42人のイバン人(女性9人含む)は6月25日に逮捕され、ミリ中央警察署に拘束されていた。そして、ミリの治安判事裁判所に各人二人の保釈保証人の下で3,000リンギを支払った上で、誓約書に署名することを命令された。42人は誓約書に署名することを拒否し、拘留のため、6月27日ランビルのミリ中央刑務所に送られた。拘束は7月12日に彼らの親族によって大半が釈放されるまで続いた。
イバン人達の弁護士であるM.S.シャンドゥは、42人に対して意義申立権の告知がなかった上、彼らが約束の履行を求められる前に何の取り調べもなされなかった、と語った。治安判事は、謹慎誓約の履行を個人に命令する前に、刑事訴訟法の74条に従って、召喚状を発行する、あるいは、それが必要であると治安判事が考える場合は、(不服申し立ての)理由を示すための出廷を命じる令状を発行する義務があった、とシャンドゥは述べた。
シャンドゥは、取り調べは即決裁判の手続きとして該当する、と述べた。今回の裁判では、上訴人らは彼らが誓約の履行を命ぜられる前に、いかなる召喚状も令状も、理由の告示も発行されていないとシャンドゥは述べた。従って、誰もが生まれつき有する公平性の原則の侵害であり、刑事訴訟法第67、70条の違反である、とシャンドゥは加えた。
シャンドゥは、42人は事前に彼らに対する申し立てについて知る機会と、彼らが裁判に備えるための法的に充分な機会を得ることを拒否された、と述べた。治安判事はまた、取り調べの意図と目的を説明すること、両者から意見を聴取するということを怠るという過ちを犯している。
シャンドゥは、治安判事による手続きは即決裁判の手続きに程遠いものであると語った。この裁判では、申し立て書は単に読まれ、上訴人に説明されただけであった。治安判事裁判所は、警察によって作成された申し立て書が立脚する情報の真実性を確立するための何の根拠も示されていないにも係わらず、その申し立てに従って行動した。検察側は、彼らに対する申し立てや容疑を証明しておらず、そうすることも要請されなかった。
42人は刑事訴訟法第67、70、73、74条に公正な聴聞として規定される、制定法上の保護を与えられていない。故に謹慎命令は法に支えられておらず、破棄されるべきだ、とシャンドゥは語った。
他の同様の裁判で、高等裁判所はバラム地区ティンジャル、ブキッ・リマウの4人のイバン人の訴えを認め、治安判事の命令を破棄した。
(現地からの連絡、8月6日付け)
■スンガイ・ナットの3人のイバン人が勝訴!〜ミリ高裁判決〜
今朝、ミリ高等裁判所は、3人のイバン人が彼らの先住慣習地で進められているオイルパーム農園開発に抗議して不法な行動を起こした、という治安判事裁判所の判決を破棄した。(中略)
他の6人と共に、3人のイバン人は、1997年4月17日に逮捕・拘束され、そして釈放される前にミリ治安判事裁判所に6ヶ月の「謹慎誓約」をすることを命令された。
今日開かれた高裁は、警察がイバン人を正当な理由なしに逮捕し、そして謹慎誓約が適切な取り調べなく治安判事によって命令された、と裁定した。
9人の内3人は、裁判所の最初の判決に異議を唱えるために、18日間刑務所内に残ることを選んだ。その時の彼らの声明文によると、「私達はどのような犯罪も犯していないので、その命令に同意しません。私達の心の中で一番重要なことは、命令された謹慎誓約に署名することにより、私達が私達の先住慣習地に対するいかなる権利も持たないというサラワク州政府とオイルパーム農園会社の根拠のない申し立てを、私達は受け入れることにもなるという事実です」。
この裁判はリギーロングハウスのイバン人にとって、重要な勝利である。また、判決が、オイルパーム農園会社による先住民族の慣習地への不法な侵入に抗議する権利を支持しているようであることから、この裁判はサラワク中のダヤク共同体にとっての重要な先例でもある。
(現地からの連絡、8月5日付け)