サラワクは今…


■バクンダム裁判に住民敗訴判決
〜1974年環境法はバクン計画に適用されない?!〜

 2月17日にクアラルンプールで開かれた控訴審は、エクラン社、環境省長官、連邦政府、自然資源環境委員会(NREB)、サラワク州政府がバクン計画に適用される法律を遵守してきたと述べた。
 3人の裁判官は、1995年環境水準(規定された活動)(環境影響評価)修正命令がこの計画に適用されると宣言した高裁の判決を却下した。
 控訴審はまた、エクラン社が計画の建設を進める前に1974年環境法(EQA)に従わなくてはならないとする高裁の命令も却下した。
 口頭判決の際に、ゴパル・スリ・ラム(Gopal Sri Ram)裁判官は「バクン水力発電計画の建設は土地利用、水、河川、土壌、森林など、連邦憲法別紙9(Schedule 9)の州の一覧の範囲内にある要素に関係しており、従ってサラワク州政府がバクン水力発電計画に管轄権と憲法上の権利を持つ」と宣言した。
 裁判官は「1974年連邦環境法(EQA)はバクン計画に適用されない。従ってサラワク自然資源環境法令が全面的に適用される」と宣言した。
 第2の訴訟根拠について、スリ・ラムは、次のように述べた:「3人の原告は、彼らの生活や生計に対する権利に影響を与えることを理由として、連邦憲法第五条の下に権利の侵害を主張してきた。しかしながら権利侵害は当事者間で議論され得る補償によって適切な処置が取られている。よって、もはや憲法上の問題はない。」
 原告は限定的な当事者適格(threshold locus standi)を持つものの、明文化された当事者適格(substantive locus standi)は間違いなく持たない、と裁判官は述べた。
 今ではエクラン社が環境法が自分たちに適用されないと述べることは自由である。仮にエクラン社がそう述べたとしても、救済方法は司法長官か検察官のみしか訴訟を起こすことが出来ない刑事訴訟であるので、原告には環境法(特に第34条A項)を強いる資格はない。他のいかなる人もその資格を持たない。
 原告はG.S.ニジャル弁護士により代弁されている。G.S.ニジャル氏は判決の後、原告側はこの件は深刻な意味合いを含む極めて重要な問題であるため連邦裁判所に上告するだろうと述べた。
 結果に喜ぶエクラン社とバクン水力発電社(BHC)のチン・ペク・キン(Ting Pek Khiing)代表取締役は、首相もサラワク州首席大臣も判決を喜んでいる、と述べた。
 「首相も首席大臣も皆も口頭判決を喜んでいる。今、私達は計画を進めることが出来る。私達は計画を2003年までに完成させたい。もし可能であれば、計画を2002年まで早めたい」とエクラン社でチン氏は述べた。
 彼はさらに、エクラン社が連邦と州の両者の法に初めから従ってきたことに言及した。
 原告からの上訴の問題について、エクラン社の弁護士は、原告が持っているのは「限定された当事者適格」であり「明文化された当事者適格」では全くないことをただ述べるだけであった。
 「私はこの計画は、当面地球上で行われる他のいかなる計画とも違うと思う。例外的なものだ」とチン氏。
 野生生物保護への懸念に関して、チン氏は「環境影響評価では既に影響を受ける地域の野生生物と植物を保護するため、しっかりとした対策が講じられている。貯水池の準備以外の初期の建設は野生生物に影響を与えるだろうが、影響を受ける総面積は小さい。大部分は来年までに行われる」と述べた。
(97/2/18 ボルネオ・ポストより抜粋・編集)

●SCCより

 バルイ川流域の住民は何十年も前からその土地/森林に生活を営み、その土地が彼らの先住慣習地であることを主張してきました。事前に行われたとされる環境影響評価についても、彼らの森林や土地がいつどのように調査され、評価されたのか、住民はほとんど説明を受けておらず、日々未来に対する不安に苛まれています。
 そしてこの計画によって最も影響を受ける当事者であるはずの彼らに、計画の情報がほとんど届いておらず、また環境影響評価も手に入れるのが大変困難な状態にあります。彼らは自らの声や意見が全く聴取されていないことに関しても抗議し続けてきました。そして彼らへ約束される筈の補償に関しても、明確な説明と十分な補償内容が提示されていないのが現状です。
 こう考えたとき、この判決が先住民族にとっていかに理不尽なものであるのかが理解出来ます。そして、未だにサラワクにおける先住民族への人権侵害がまかり通っている現状を強く感じさせられます。

■バクン地域住民委員会がカピットにて会合

 昨年の12月15日、バクン計画によって影響を受ける住民の組織「バクン地域住民委員会(BRPC)」がカピットで会合を開き、彼らの生活に深刻な影響を与える再定住や補償問題について話し合った。この会合には17人が参加し、住民による声明文を発表した(次頁)。
 BRPCは、今年3月25日にはシブでプレス・コンフェレンスを開き、移住を迫られている彼らが自らの土地を離れる意思のないことを再度表明した。この日のコンフェレンスには、バトゥ・カリン(Batu Keling)、バト・カロ(Bato Kalo)、ウマ・ダロ(Uma Daro)、ロング・ブラン(Long Bulan)の4つの共同体から15人の先住民族が参加した。住民達は今現在をもって未だ自分たちは闇の中にあり、計画がどのように進められ、そして彼らの身に何が起きるのかについて全く知らされていないことを訴えた。そして再定住計画や補償の問題についても、その詳細が住民側に明らかにされておらず、不安は依然として増大するばかりであることを訴えた。

■メディ・ブキ・リマウのイバン/プナン人、プランテーション労働者からチェーンソーを取り上げる

 バラム地区ティンジャル、トゥユ川にあるメディ・ブキ・リマウ(Medit Bukit Limau)ロングハウスからの35世帯の住民を代表する23人のイバン人とプナン人が抗議を行い、4本のチェーンソーをネーション・マーク社(Nation Mark Sdn Bhd)のプランテーション労働者から没収した。称するところによれば、労働者達は先住民族の果樹やゴムの木、彼らの耕作地や農作地の他の植物を切り倒していた。しかし、先住民族はすぐにそれらのチェーンソーをバラムのブルル/バコン警察に引き渡した。
 1996年の12月5日、上述のロングハウスからの首長補佐を含む家族の首長5人がこの件について訴えるためにマレーシア・地球の友(SAM)のマルディのオフィスにやってきた。彼らは企業が彼らの言うことを聞かずに彼らの権利を無視し続けていることにうんざりしていた。彼らは上述の企業がバラムのブキット・リマウでの彼らの先住慣習地へのこれ以上の侵入を制止する努力の最後の手段として、チェーンソーを没収した。
 住民の一人であるブナン・アナ・リンカン(Benang Anak Lingkan) 53才は、トゥユ川ブキット・リマウでは約500haの彼らのプマカイ・メノア、つまり先住慣習地(耕作地と一次・二次林)が影響を受けていると報告している。それらの土地はブキット・リマウ農園の造成で破壊されているか、オイルパームが植えられている。ネーション・マーク社は、住民の反対にも関わらず、彼らの土地や庭や農園に侵入し、深刻な被害を及ぼし続けてきた。
 5人の代表はさらに、自分たちが何世代にもわたってその土地を占有してきたことを説明した。彼らによると、彼らの先祖はジェームス・ブルック王がサラワクに来る以前からその土地に住んでいた。
 彼らの先住慣習地に対する先住慣習権(native customary rights)は彼ら先住民族自身の文化と伝統を通して協議して決められ、裁定され、そして実践されてきたイバン人やプナン人のアダット(慣習)によって確立されてきた。この先住慣習権は土地に関する様々な法律に記載され、1957年サラワク土地法の中にも規定されている。  住民は、第四省の知事やミリの土地調査局の監督、バラム地区行政官などの関係当局に数回申し入れを行ってきたきた。しかし残念なことに、今まで何の返事もないという。
 1996年の12月6日、SAMは住民が土地開発省の事務次官に手紙を書くのを支援した。この手紙は彼らの問題に対する関心を述べ、土地開発省及び他の関係する政府の省との会合若しくは対話を要求するために書かれたものである。彼らは更に、土地省がネーション・マーク社に対して先住民族の先住慣習地とテムダ地に侵入し続けるのを止めるように命令を発行するよう訴えている。
 先住民族は、会社がこの後に及んでも彼らの先住慣習地、テムダ地、庭に侵入し続けるならば、他の手段に訴える用意があると警告している。
(Utusan Konsumer,Mid-Dec,1996)

■ブキ・リマウのイバン人、逮捕される

 4月17日、ティンジャルの3つのロングハウスからの9人のイバン人が、彼らの先住慣習地内にあるブキ・リマウ農園で、ネーション・マーク社の労働者が土地を切り開き、地ならしをする作業実施の妨害をしたとの申し立てにより逮捕され、拘束された。
 4月23日、9人は警察によりミリの治安判事裁判所に出された。警察は治安判事に、9人が刑事訴訟法第67条の下に釈放されるよう要請した。申し入れを聞くと同時に、治安判事は彼らに反論の余地も与えずに、[治安遵守]命令を下した。つまり、第67条に基づき、2人の保証人の下に、各々3,000リンギットの保釈金を支払い、6ヶ月の期間治安の維持をする約束を実行する(という条件で保釈される)ことを命じた。
 9人中6人は釈放されたが、他の3人は治安判事による命令に納得が行かず、同意しなかった。3人が治安判事裁判所で親類に会った際、彼らは治安判事による決定はとても不当であると語った。今回のような命令は、犯罪を犯したものだけに適用されるものであり、3人は自分達の生活と先祖の土地を守っただけだ、と語った。
 彼ら3人は4月24日にミリ中央留置所に送られた。
(1)

<4月26日付け、ミリ中央留置所からの手紙(抜粋、要約)>
 4月17日に私達が逮捕された時、警察は私達に逮捕の理由を説明せず、私達の慣習地を私達が反対するアブラヤシ農園のために切り開いている企業との会合に出席する必要がある、とだけ言いました。
 しかし、警察は私達を会合には連れて行かずに、ミリの中央警察所に連行し、引き留めました。4月19日、私達はミリ治安判事裁判所へ連れて行かれ、拘束されました。私達がネーションマーク社の労働者を脅迫し、襲ったとの同社からの通報に基づき、取り調べを行うことがその理由とされました。そして法廷では8日間の拘束が命令されました。
 そして4月23日、私達は治安判事の前に出させられ、上記の[治安遵守]命令を下されました。
 私達は決して犯罪を犯した訳ではないのですから、私達は今回の命令には同意しません。そして私達は、今回の命令に関して高等裁判所に控訴することについて私達の親族と兄弟姉妹が弁護士に相談している間、ここの留置所に残ることを決めました。警察は私達に、もし私達が命令にサインをすればすぐに自由にしてやると言います。しかし私達とって、それは、私達が罪を犯しているという根拠のない申し立てを受け入れることになります。
 今年の1月6日には、ネーション・マーク社と土地管理開発機関(LCDA)が私達の土地に侵入してプランテーションを開始しないよう抑制するミリ高等裁判所の命令が出されました。しかし、この禁止命令が失効した後、4月10日には同社の労働者が私達の土地をブルドーザで均していたのでそれを止めに行きました。私達は同社の経営者に活動を停止するよう求め、未だ裁判が係争中であることを訴えました。しかしまた4月17日に私達の農場にある米を貯蔵していた小屋が燃やされているのを見つけてショックを受けました。その事を近くの警察隊(PFF)とマルディ及びブルルの警察に通報しました。
(2)

 5月3日朝、拘留されていた3人は、ミリの治安判事裁判所における彼らの親類と妻による保釈金支払いによって、ミリ中央留置所から解放された。3人はミリ、バラム、ティンジャル地区のスンガイ・ナットの住民である。
(3)

注:
(1)、(3)(May 3)、共にE-mailの新聞記事から編集
(2)3人のイバン人から私達への手紙(26 April)より要約・編集

●SCCより

 イバン人たちが法的に認められた土地の権利を主張したにも関わらず、裁判所が彼らに反論の余地も与えずに今回の様な処置を行ったことは非常に残念でなりません。今後サラワク州でプランテーション開発が大規模に進められていく中で先住民族が土地を奪われていくケースは益々増えることが予想されます。

■ルマ・ルギーのロングハウスに警官隊が乱入 -理由は与えられず-

 1996年9月25日12:30前後に、バラム地区ナット川ルマ・ルギー(Rumah Reggie)ロングハウスに7人の警察隊(PFF)と1人の警官が乱入した。
 彼らは首長の部屋へ行き、どなりちらし、彼を侮辱し、周辺の家具を蹴り飛した。
 そしてインソム・アク・ウバン(Insom Ak Uban)の部屋へ行き、身分証明カードを見せるように言った。
 見ていた者によると、インソムが彼らの要求の理由を訊ねると、警官を引き連れていたチャン・クアン・ユー(Chan Kuang Yu)警部補はインソムを殴る蹴るなどして答えたという。
 チャン氏はインソムに暴力をふるった後、手錠をかけた。警官がインソムを解放し立ち去ったのは、何人ものロングハウスの住民による仲裁と暴力への説明の要求の後であった。
 警察はロングハウスへの手入れについてもインソムへの暴力についても、何の説明もしていない。
 サラワクは警察国家になりつつあるのだろうか?
 ペナン消費者協会(CAP)は警察の監察長官が、権力を濫用したバラム地区担当の警察職員に対し迅速で適切な処置を取ることを求める。
 このような制服をまとった者による脅しは、長期的には警察隊のイメージをそこなうだけである。
(Utusan Konsumer,Nov,1996)

●SCCより

 林道封鎖に対する先住民族の逮捕やパスポートの取り上げに始まり、今回のような暴力事件に至るまで、先住民族に対する様々な圧力に対して理由は与えられて来ませんでした。先住民族の慣習的な土地に対する権利は法的に規定されているにも関わらず、林道封鎖をした先住民族を牢獄に入れたり、何の理由もなく暴力をふるうことは人権侵害以外の何ものでもありません。SCCは警察が今回の暴力に対して明確な説明をルマ・ルギーの住民に対して行うことを求めます。

■先住慣習地所有者がサラワク州政府にアピール - 4年間何の返答もなし-

 カノウィット、ナマン、シブからの約40名の先住慣習地の所有者が、彼らの土地を開発用地として収用しないよう、本日、州政府に訴えた。
 今朝、新聞記者に会った7人に代表された土地所有者は、要請文を今日付けで州首席大臣、土地開発大臣とその補佐、通信郵政大臣、シブ省知事、カノウィット地区行政官、州首席大臣代理、土地管理開発機関(LCDA)、ドゥドンの州議員、野党のリーダーに送った。
 カノウィット、マオン川、ルマ・ジャリのイジャウ・アク・アンサ(Ijau ak Ansa)に率いられて、彼らは今朝、彼らが土地調査局に四年前に覚書を送ったが未だに返事を受け取っていないことを述べた。
 今日の訴えの中で、彼は、もし彼らが利益を得ることがなければ自らの土地をオイルパーム・プランテーション開発のために手放させられることを望まないと発表した。
 「プランテーション開発は私達の生活に影響を与えるでしょう。私達は私達の森が、私達と未来の世代の利用のために存在しつづけることを望みます。」
(96/9/10 ボルネオ・ポスト)


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