
バクン・ダム開発に疑問!
マレーシア政府及びサラワク州政府への公開質問状
Sahabat Alam Malaysia(地球の友マレーシア)
2002年9月5日付
インターネット新聞「マレーシアキニ(Malaysiakini)」より
バクン水力発電所計画の中心となるダム建設契約は、8月中旬に中国の企業も傘下に含むSime社主導の合弁企業が落札した。この落札は、マレーシア東部が電力不足に今後直面しないにもかかわらず、連邦政府及びサラワク州政府が計画に執着していること、そしてダム建設は国家の財政を苦しめるに過ぎないことを明確に表したメッセージだ。
さらに先へ進む前に、まず私たちが開発に反対している組織ではなく、私たちがダムに批判的な立場をとるのはサラワクの成長を妨害したいからではない、と述べておきたい。ただ私たちは、地域住民やその経済、国家の財政や私たちの自然資源を犠牲にした計画が、どのように進み悪循環を生み続けていくのかを心から憂慮しているのだ。
開発が意味を持つためには、それが持続可能であり住民主導でなければならないと私たちは信じている。と同時に重要なのは、実際のニーズを反映していなければならない点だ。東マレーシアのエネルギー余剰生産能力は30%前後が理想的だが、2006年のバクンダム建設のおかげで137〜175%にまで跳ね上がるかも知れないのだ。
第一に、サラワクで先住民が慣習的土地権(NCR)をもつ土地への(開発側の)侵略を、今回の契約が間接的に悪化させるのではと私たちは危惧している。
昨年、中国政府がマレーシア政府に対して、「バクンダム建設において中国本土の会社が重要な役割を与えられれば、固定価格でもっと多くのパーム油を買う」という交換協定を持ちかけていたことが報道されている。
中国は、マレーシアが産するパーム油の3番目に大きな買い手であり、昨年は私たちのパーム油を約130万トン買い付けている。世界貿易機関(WTO)加盟後は、パーム油購入量を年間200万トンに増加させると予想される。そして、マレーシアはこの分け前に預かろうとしていると見られている。
8月29日、中心的なダム建設工事に係る18億リンギという費用の一部が、パーム油で支払われることが明らかにされた。
こうした取引は、先住民の慣習的土地権(NCR)が有効なサラワクにおいて、新しいプランテーション開発を加速することになるのだろうか? 近年、こうした慣習地でのプランテーション開発計画が幾つかのコミュニティーに影響を与え、既に多くの不満を引き起こしている。
第二に、今後のプロジェクトにおいて、資金はどうやって調達されるのだろうか? 1990年代中頃、このダム計画には資金面の実行可能性および技術的な実現可能性が不足していると見た海外投資家たちは、文字通りダムに背を向けていった。その視点が変わったとは、ほとんど考えられない。
大蔵省の関連会社であるサラワク・ハイドロ社は、プロジェクト用の資金調達のために政府の国債発行を提案した。そこで私たちは、以下の問題について政府に検討いただきたい。
国内市場から、90億リンギ(2002年4月時点の私たちの貯蓄400億マレーシアドルの22パーセントに相当する)を全額調達しようという試みは、私たちの経済に対する圧力にならないか?
東マレーシアで、近い将来にダムの最大出力レベルを消費するようなパターンの電力需要の成長が生まれない限り、バクンダムは巨大な損失に苦しむだろう。
バクンダムがその建設期間に再び財政難に直面したり、あるいは完成に向けて大きな技術的な問題が起きた場合も、ダムは巨大な損失に苦しむだろう。水力発電のエネルギー出力はしばしば予定より低くなるもので、巨大ダムというのは大概において最初から最後まで技術的な問題に悩まされる。土壌侵食や泥の沈殿が激しい熱帯地方においては、なおさらのことだ。
売るべき電力が多くなると、買い手である産業側が電力の値段を決めること(買い手市場)になるだろう。バクンダムからの電力価格が落ち込めば、ダムは再び損失に苦しむことになる。
このダムからの電力を消費するに足る産業があるとすれば、それは相当な電力消費を伴う巨大産業のはずであり、これまた環境の上でも社会的にもマイナスのインパクトを与えるだろう。ドバイのアルミニウム精錬所プラントが、バクンダム利用に関心を抱いているという。この話は、このダムがいかにサラワク州を環境的危機にさらしかねないかをよく示している。結局、こうした影響が私たちにさらにふりかかるのだ。
これらすべてのことから、バクンダムが大変な損失を巻き起こす可能性は極めて高いと言える。よく吹聴されるこのダムの将来の利益などでは、その損失は埋め合わせできないかもしれない。では、その損失をかぶるのは、誰なのだろう?
私たち地球の友マレーシアは、マレーシア連邦政府及びサラワク州政府に対し、バクン水力ダムプロジェクトの建設推進に関して真剣に見直しをされるよう、呼びかけたい。
既に10億リンギが使われたとはいえ、我々自身をさらに不必要な財政危機にさらすよりは、今の時点で引き返したほうがずっといい。