プナン人が初めて伐採会社と政府を裁判で訴える!!

「クラサウ・ナアンさん他4者 対 サラワク州政府他2者」

背景

この裁判の原告は、ミリ省バラム川上流スルンゴー川流域の4つのプナン人の村の代表者であるクラサウ・ナアンさん(ロング・クロン村村長)、ジャワ・ニパさん(ロング・セピゲン村村長)、プルタン・ティウンさん(ロング・サイッ村村長)、そしてビロン・オヨイさん(ロング・アジェン村村長)。

被告は、1)サラワク州政府、2)サムリン・プライウッド(バラマス)社、3)サムリン・ティンバー社。

プナン人たちはスルンゴー流域で利用している土地と森林に対する先住慣習権を主張しており、代表訴訟で高等裁判所がその権利を認めるよう求めている。伐採会社は同地域に対する伐採許可証を取得しているので、伐採する権利があると主張している。これまでサラワク州政府はプナン人の土地に対する慣習権の主張を認めていない。

第一回公判、急に閉廷

この訴訟は、1998年にミリ高等裁判所に提訴され、2002年10月24日に第一回公判が開かれた。これは、サラワクのプナン人が先住慣習権を主張する土地権裁判としては初めての公判となった。バラム川上流をはじめ、全州から大勢のプナン人が応援に駆けつけた。しかし残念ながら、ミリ高裁は、同じ件で3つの申し立てがされていることを理由にすぐに閉廷された。

3つの申し立てとは:

1. クニャー人という別の先住民族が住むロング・セミアンとリオ・マトーという2つの村落の代表者とされるマシュー・ウチャッ・カジャンさんとジャロン・バランさんが、本件の被告として裁判に加わりたいとする2002年9月18日の申し立て。
2. 上記の申し立てのため、抗弁の内容を変更をしたいとするサムリン社からの9月19日付けの申し立て。
3.上記1、2の申し立てのため、抗弁の内容を変更をしたいとするサラワク州政府からの9月24日付けの申し立て。

ロング・セミアン村とリオ・マトー村に住むクニャー人たちが、被告として裁判に参加したいと申し立てたこと、そして、それを受けてサムリン社も州政府もすぐに抗弁の内容の変更を申し出たことに裁判所も傍聴席に集まった30人以上のプナン人も驚いていた。

クニャー人たちの弁護士は、プナン人がサムリン社を訴えていることをクニャー人たちが最近になって知ったこと、プナン人が権利を主張する土地の一部は、自分たちのものだと考えていることから被告側に加わることにしたと説明した。裁判官の問いに対して、プナン人側の弁護団(バル・ビアン弁護士ら)は、クニャー人が村の周辺の土地に対する慣習権をもつと考えるが、プナン人の土地とは重ならないのではないか、と答えたのに対して、サムリン社の弁護士と州政府の法務官は、クニャー人たちが土地に対する慣習権を主張することはできないと明言した。にもかかわらず、クニャー人が被告側(サムリン社・州政府側)に加わり、異例の展開となった。

サムリン社の策略が暴かれる!!

この裏には、サムリン社の策略があったことが後に明らかになった。2002年8月、サムリン社の従業員と弁護士は、クニャー人が住むロング・トゥンガン、ロング・セミアン、リオ・マトーの3つの村を訪問し、プナン人がサムリン社に勝訴すれば周辺の土地が全てプナン人に与えられ、クニャー人が追い出され、同社が住民に払っている(伐採を受け入れるお礼としての)見舞金も受け取れなくなると説いて回っていた。そして、見舞金を受け続けることが出来るよう、土地への先住慣習権の認定申請に協力すると申し出ていた。

2002年9月2日、ロング・トゥンガン村の代表者、ヨアキム・エンガン・シガウさんは、サムリン社の弁護士(レッディ法律事務所のタン・ティアム・テック弁護士)と話し合うためにクチン市に出かけた。そのとき、弁護士は、自分たちに任せれば土地権を確保し、見舞金が続くようにすると彼に言い聞かせ、次の書類を彼に渡している:


1.ヨアキムさんをロング・トゥンガン村の代表者に任命し、住民に代わって何でも行う権限を与える委任状(ロング・トゥンガン村の住民が署名すべきもの)
2.タン・ヤップ&タング法律事務所に「本訴訟に関わるあらゆる事項に関して代理権を与える」ための委任状(ヨアキムさんと他の2つの村の代表者が署名するもの)。
3.各村代表を被告としてプナン人対サムリン社の裁判に参加させることを要求する高裁への申立書。
4.高裁が申請を認めるべき理由を書いた宣誓供述書。
5.3つの村が伐採を受け入れる代わりにサムリン社が住民に祭りの祝い金を含む見舞金を支払うことを合意した「善意協定」(95年に締結されたものとされる)。住民は毎年1世帯当り百数十リンギ(約4000円)の見舞金を受け取ることが書かれている。
6.住民が伐採を受け入れ、他の要求をしないことを条件に、サムリン社が裁判の勝敗に関係なく善意契約に基づく見舞金を払い続けることを約束する証書。

その後、ロング・トゥンガン村の委員会メンバーはプナン人の3つの村の村長や代表者と会合を持った。そこで、ヨアキムさんは、次の理由でサムリン社の弁護士の申し出を断ったことを説明した:


1.ロング・トゥンガン村の住民の意向ではなく、サムリン社の意向で動くために、住民全員からの委任状を取り付けるのはおかしい。
2.法律事務所に弁護費用を払う余裕がないので、上記2の委任状で、サムリン社が弁護費用を負担すると明記して欲しいと言ったが、断られた。
3.訴訟の被告側に付くつもりもないし、そもそもサムリン社の弁護士から被告側に付くことについて何の説明もなかった。この訴訟で、どちらの側にもつきたくないので、高裁への申し立てはしたくない。
4.宣誓供述書にも事実と違う内容が入っている。

ロング・トゥンガン村とプナン人の3つの村の委員会は、スルンゴー川流域で今後もクニャー人とプナン人が平和に共存し、土地に対する慣習権を行使できるよう協力していくことに合意した。サムリン社に協力しなければ見舞金を受け取れなくなる可能性があると知りながら同社の圧力に屈せず、ロング・セミアン村とリオ・マトー村の申し出に加わらなかったロング・トゥンガン住民は勇気ある決断をした。

その後、プナン人たちは、サムリン社の策略を暴くために、サムリン社の弁護士がロング・トゥンガン住民に渡した書類を添付した抗議の宣誓供述書をミリ高裁に提出している。裁判所がクニャー人の村からの申し出の問題点を認め、早くプナン人の訴えに耳を傾けることが望まれる。

(原告団からの報告書をSCCで抄訳)