
当報告書は、Borneo Resources Institute Malaysia (BRIMAS)とサラワクの先住民コミュニティーが行っているプロジェクトに関して、それらを支援してきたサラワク・キャンペーン委員会 (SCC) のために作成するものである。
1998年以来、SCC は、政府、州行政組織および、民間企業による慣習地の油椰子プランテーションとしての違法収用に対して、先住民の先住慣習権を守る法的措置およびコミュニティーの支援のために、BRIMASに対して随時財政援助を行ってきた。
SCCは下記の裁判で住民側を支援している:
1. セブクット川のイバン人コミュニティーが提訴した裁判
2. Novelpac-Pucakdana プランテーション社が、アンチー・アナッ・プアップおよび他4者 (サラワク州シブ省バリンギアン地区とムカー地区のアヌス川とケラダン山の周辺に住むイバン人コミュニティー)を提訴した裁判
セブクット川のイバン人コミュニティーはルマ・バンガ村、ルマ・シドウ村、ルマ・ぺングアン村、ルマ・ジャンティン村および ルマ・キアイ村 の5つのロングハウス により構成される。これらのロングハウスは、ルマ・キアイ村 から派生したもので、それらの人口が増加するとともに、慣習地にロングハウスを築きながら拡がったものである。そのためロングハウスは、隣接するコミュニティーとの古来の境界で定められる共通の領域を共有している。
1997年12月19日に、コミュニティーはルマ・バンガ村において、彼らの慣習地における不法侵入と油椰子プランテーションの設立に抗議する平和的な集会を組織した。この集会には、約 300 名のイバン人が参加した。彼らは、油椰子プランテーション開発会社のトラクターを二台押収し、ロングハウス の前に移動させた。同じ日の午後に、プランテーション企業と警察隊(Police Field Force, PFF)が、トラクターを奪回するためにやってきた。ロングハウスに到着すると、PFF は、理由も令状も提示せずに イバン人たち を逮捕しはじめた。イバン人たちが逮捕を拒否したため、警察は彼らを追い回し、数人を棍棒で打ちのめしたり、殴ったり蹴ったりした。警告も威嚇射撃もなしに、PFFは 3 人のイバン人を射撃し、そのうち頭を撃たれた一人はミリ市 の総合病院で亡くなった。
警察はルマ・バンガ村の村長を含むコミュニティーの20名を逮捕した。
油椰子プランテーションの違法行為と、警察によるコミュニティーにおける射撃および逮捕を受けて、BRIMAS は、コミュニティーに下記の訴訟を起こす支援を行った。
ルマ・バンガ村は、1997年12月に、油椰子会社であるエンプレサ社、プラナ社およびサラワク州政府に対して訴訟を起こした。この訴訟は、会社に対しての慣習地における操業およびプランテーション関連の活動の停止命令を要求するものである。1998年にミリ高等裁判所が、この訴訟の審問を行い会社側に軍配を上げた。しかし、この判決にもかかわらず、会社側は、ルマ・バンガ・コミュニティーの慣習地に立ち入っていない。
裁判所は、まだ公判の日付を確定していない。
この訴訟は、原告により1998年12月28日にミリ治安判事裁判所において起こされた。原告は、サラワク州ミリ省バラム地区バコン地域のルマ・バンガ 村と ルマ・シドウ村のロングハウスの住民で、ルマ・バンガ村のロングハウスにおいて1997年12月19日に警察と警察隊によって逮捕、留置された人たちであった。原告のうちふたり、インディット・アナッ・ウマと シバ・アナッ・セントゥは、警察と警察隊によって射撃され負傷している。
この裁判では、原告は下記の当事者に対する訴訟を起こしている:
a) 1997年12月19日に原告を逮捕、留置、射撃、および襲撃した警察と警察隊の指導者であったチャン・クアン・ユー警部、および
b) 原告の逮捕および留置にかかわったその他の被告。
この裁判で、原告を代理するのは、サラワクの先住民に対する法的手段、アドバイスおよび支援を提供するBRIMAS に関連する弁護士の一人であるバル・ビアン法律事務所のバル・ビアン氏である。彼自身もルン・バワン人の先住民である。
この訴訟は、ンドゥッミット・アナッ・エゴットとその子供たちにより、フセイニ・ビン伍長とマレーシア政府に対して、1997年12月19日に警察隊による夫の射殺に関して起こされている。
ンドゥッミット・アナッ・エゴットは、1998年12月に、彼女と子供たちが訴訟を起こすために1956年民法8条の規定で必要となる(つまり彼女に提訴権を付与する)遺言検認官による遺産管理状の交付を申請した。
しかし、遺言検認官は、彼女が警察と政府に対しての提訴にそれを使用することにより、本人の政府における地位が損なわれることを恐れ、彼女に対する遺産管理状の交付を拒否した。
BRIMASは、サンドゥ法律事務所のメカンダ・シン・サンドゥ氏に、遺言検認官に対して遺言管理状の交付を強制する職務執行令状を申請するよう依頼した。サンドゥ氏もまた、地域でもっとも経験がある弁護士のひとりで(25年の経歴)、サラワクの先住民に対する法的支援の提供に関連してBRIMASと協力をしている。
裁判所は、この訴訟に関する審問を2003年4月9日に行う。
SCC は、サラワク州シブ省バリンギアン地区とムカー地区のアヌス川とケラダン山の周辺の5つのイバン人ロングハウスの先住慣習地に対する調査、地図作成、そして裁判の財政的な支援を行った。
1999年6月に、サラワクの(中心地域にある)シブ省のバリンギアン地区とムカ地区のアヌス川とケラダン山の周辺の慣習地に古来から居住しているルマ・ケティップ村、ルマ・アンチ村、ルマ・ランヤウ村、ルマ・リプ村、および ルマ・ムロック村の5つの村の住民であるイバン人に対して油椰子プランテーション会社のNovelpac Puncakdanaプランテーション社は、会社が政府によりそれぞれブロー土地区域の区画11、および区画12に当たるケラダン山とバサイ川地域を油椰子プランテーションの目的で暫定的にリースする2つの許可証を得たことを通知した。
ケラダン山とバサイ川地域の大半は、5つの村の住民の稲作地とゴム、胡椒および果樹農園であり、それらの地域は5つの村の共通の先住慣習地の領域の中にあり、先住慣習地の一部でしかありえない。
Novelpac-Puncakdanaプランテーション社は、サラワク州政府とクアラルンプールの数人の住民に属する合弁会社である。
1999年7月には、会社は先ず、区画11で暫定リースの範囲内にある土地の整地を開始し、結果として5つの村のイバン人たちの慣習地と作物に被害をもたらした。イバン人は、この被害に対して警察に報告したが、警察は行動を起こさなかった。
1999年8月から12月の間に、警察とその他の政府の代表の同席のもとに、 イバン人の代表者と会社が何度か会合を行った。しかし、いずれの会合においても、区画11と区画12の土地に対するイバン人の慣習的権利は検討されなかった。その代わりに、イバン人は、区画11と区画12内における会社の活動への反対を続けることは犯罪行為であり、逮捕されることになると脅された。
イバン人は、逮捕に関する脅しに臆せず、区画11と区画12が彼らの慣習地であるという根拠で会社の立ち入りを阻止するバリケードを設置した。彼らは、サラワク土地法の第28条および会社の暫定リースの許可条件で、調査義務があることを指摘し、区画11と区画12の彼らの慣習地を除外するための合同調査を要求した。しかし、会社はその調査を行うことを拒否して、区画11と区画12内のすべての土地は州の用地であると主張した。
第28条には次の内容が示されている:
(1) 監督者を満足させる土地の調査が行われるまでは、当該法によって州の用地が譲渡されることはない:但し州の用地の調査をただちに行うことが不可能な場合には、監督者は権利のある者に対して、付属明細書1の書面Cの暫定リースの実行を命令することがある。
(2) すべての暫定リースは、それに含まれる土地の概ねの範囲を指定するが、リース保持者に対して指定地域全体の所有権またはリース権を与えるものではない。
(3) 指定される地域に対する賃貸料が支払われているかどうかにかかわらず、いかなる暫定リースの登録保持者も、その地域に対する調査を行った際に利用が認められない土地であることが判明した場合は、譲渡される地域に属する付属明細書1の書面Bのリースの登録に対する一切の権利を持たない。
(4) 文脈から別の解釈が必要となる場合を除き、当該法のリースに関連する条項は暫定リースにも適用され、リースに対する関連事項は暫定リースも含む。
2000年5月には、暫定リースの効力により区画11と区画12の土地に対する権利は無効となり得ないという宣言を裁判所から取り付ける目的で、会社はイバン人に対する訴訟をシブ高等裁判所に起こした。会社は、またイバン人の区画11への立ち入りと区画11における会社の活動の妨害を禁止する暫定差止命令を申請した。
一週間の審問の結果、2000年8月3日には、シブ高等裁判所は、会社が起こした訴訟でイバン人が区画11の土地に対する慣習権を持つという決断がくだされた場合でもイバン人への損害賠償があれば十分であるという理由で、会社が申請した命令を認可した。しかし、裁判所は命令が下された日付から30日以内 (8月3日から9月3日の間)に、区画11内のイバン人の慣習地(存在するなら)を所在確認および測量する調査を行うことも命令した。
イバン人は差止命令が下されたことに不服であった。彼らは、抗告の通知を9月1日(命令が認可されてから30日以内)に行った。彼らは、会社が区画11内の慣習地に立ち入り整地を行うことが許可されれば、先祖代々耕し続けてきた土地と農作物が破壊されると考えた。そのことは、別の土地で一からやりなおさなければならないことをも意味する。
会社側を支持する差止命令の認可は、サラワク先住民にとっては、暫定リースを得た会社ならどれでも慣習地を除外する調査を行わずに、裁判所に命令を要請して暫定リースの範囲内の慣習地と農作物を整地してしまうことができる非常に危険な前例を生むことになる。
このような前例を放置することは、政府がほとんどの場合慣習地を包含する暫定リースを発行し続けていることを考えれば、慣習地にその生存を依存する先住民の生活を深刻に脅かすことになる。
皮肉にも、サラワク土地法の第二十八条と暫定リースの特別条件が、慣習地を除外するための調査を要求しているにもかかわらず、これらのリースの保持者はこの要求事項に従わず、影響を受ける先住民からの抗議にもかかわらず、政府は先住民の慣習地に対する権利を保護する法の執行を怠り続けている。
(Novelpac-Puncakdana プランテーション社 対 アンチー・アナッ・ブアップおよび他4者の)審理は、シブ高等裁判所において2002年9月24日〜27日の午前9時から行われる予定になっている。
サンドゥ法律事務所の弁護士が、この審理でコミュニティーの代理を行う。弁護士は、この審理でコミュニティーを弁護する費用として一括4万5千リンギ(1リンギは約30円)を要求している。この費用は、コミュニティーにとって高額すぎて、まだ弁護費用の支払いを行っていない。
2000年8月3日の裁判所命令にある通り、区画11の境界設定とイバン人コミュニティーの慣習地に対する影響の調査が行われることになった。BRIMAS の現場支援担当官であるフランシス氏が、調査担当に任命された。
調査は、2000年8月21日から30日の期間で、コミュニティーとプランテーション会社の代表の立会いのもとに行われた。調査の結果、区画11の境界は実際にイバン人コミュニティーの慣習地内を通過していることが明らかになった。区画11内には、大体392.86 ヘクタールの稲作地があった。Novelpac Punkakdana社は、その74ヘクタールを破壊していた。
BRIMAS は地域の地図を完成させ、この裁判の審理への提出書類・証拠として提出する。
B.これまでの実績の評価
@)上述のニェラン・アナッ・ムンダットの裁判はいくつかの建設的効果をもたらした。いくつかを挙げると、
1. 先住民族と、彼らの先住慣習地に侵入したオイル・パーム・プランテーション、または伐採企業との間の紛争において、警察による恣意的逮捕と拘留を抑止
2. 警察と企業との癒着による権力の濫用を暴露
3. 行政内部での腐敗した慣習を暴露
4. 関連する先住民族や周辺の住民に、人権・財産権を求めて戦い訴え、それを守り、そして非道な行為に対し責任を問うて対抗するため、立ち上がることが出来るという自信を植え付けた
5. 法律・憲法上の権利について関連する先住民族や周囲の住民の啓蒙を行う
A)マッピング
BRIMASは、区画11の位置や先住慣習地内の陸稲、胡椒、ゴム、果樹園の耕地を示すイバン人の地図を完成させた。
C.直面した困難
訴訟に必要な費用や偶発的な費用(例:原告や証人がその後の審理に出席するための交通費、食費、宿泊費)が更に必要となったことを除けば、必要な訴訟手続きを行うことに関して、関連する住民や原告が困難に直面したことは特になかった。
D.現在進行中の活動と今後の計画
1) 上述の通り、これらの訴訟は今なお裁判所において審議中である。
2) 法律に基づく基本的権利と現在進行中の審理を十分に理解できるようにするため、BRIMASは住民から数名を選抜してパラリーガル研修を行うことを提案したい。この研修は、基礎的で不可欠な関連法知識を身に付け、今後、彼らや周辺住民が被害を受けるような類似する状況に対処するため必要かつ重要なものである。
3) サラワクのダヤク民族には、早急かつ継続的な法的バックアップが必要である。
サラワクの中心部・南西部では、上述5箇所の村と類似した問題で多くのダヤク民族が被害を受けている。法的バックアップを整備してこれら住民が自分たちを組織できるようサポートすることは必要であり早急に求められている。なぜなら、もしそのままにしておけば、州から暗黙の了解を受けたプランテーション企業は、簡単に住民から先住慣習地を手中に収めてしまうからである。
先住慣習地を奪われただけでなく人権も侵害されてきたダヤク民族が州内の他の場所で経験してきた事件は、血縁や金で州行政内部の腐敗した官僚や政治家と癒着したプランテーション企業によって悪用されることが多く、その責任が問われることもほとんどない。
報告作成:レイモンド・アビン(BRIMAS)
日付:2002年8月17日
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差止命令で多くの人が影響を受ける
(サラワク・トリビューン紙2002年7月8日、ダニー・ウォン記者)
【シブ市】昨日、ここ高裁でマレーシア半島を基盤とするオイル・パームのプランテーション会社が求めていた暫定的差止命令は、9箇所のロングハウスに住む千人以上もの住民に影響を及ぼすとされている。
原告のノーベルパック・プンチャッダナ・プランテーション会社は、アーサー・リー・ジン弁護士事務所を通してアンチー・アナッ・ブアップ他4者に対し、原告のバリンジャン地域でのオイル・パーム関連活動を妨害しない旨の差止命令を求めてきた。
アンチー・アナッ・ブアップ他4者は、サンドゥ法律事務所が代理人を務めている。
被告らは、土地の一部が先住慣習地(NCR)であると主張している。
ランヤウ、ケティプ、アンチェッ、レポ、ムロク、ラドゥン、バウィン、ゴー、アンス、以上9箇所のロングハウスの住民が、この差止命令によって影響を受けるとされている。
昨日7時半から多くの住民が裁判傍聴にやってきた。なかには裁判所の敷地でミリン(精霊)感謝式に参加した者もいた。
土地調査局(the Department of Land and Survey)は、オイル・パーム・プランテーション開発用にバリンジャン地区の土地5,800haを企業に暫定貸与したが、そのうち1,000ha以上の土地が先住慣習地であるとされている。
しかし、オイル・パーム・プランテーション開発が予定されている地域の9箇所のロングハウスに住む住民は、開発行為をする前に先住慣習地への侵入を防止するための調査を行わなかったことを不服としている。
「サラワク土地法第28条81項の規定では、暫定的借地権を土地調査局が承認して企業に与える際、先住慣習地に侵入しないことを保証するためまず当該土地の調査が行われねばならない」被害を受けるロングハウスの仲間たちをサポートするハリソン・ンガウ氏は語る。
彼は取材に対し、企業が当該土地の調査を全く行っていないことをロングハウスの住民から聞かされたと話した。
「暫定的借地権は昨年企業に対し与えられており、オイル・パーム・プランテーション用の土地開発が同年6月か7月に開始されたと理解している」と彼は語った。
彼によると、影響を受けた住民は、企業が土地開発を開始したとき先住慣習地に侵入してきたことを非難していると言う。
「この件があって、彼らは企業に対し土地開発の反対運動を始めた」裁判所に多くの住民が現れたことからも裁判に対し高い関心があることが分かると付け加えながら彼は言った。
予防策として、不都合な事態が起これば収束に当たるよう、暴動を抑えるために装備した警察が裁判所に待機した。
暫定的差止命令の申請は、裁判官クレメント・アラン・スキナーの前で行われた。
申請の審理は今も続いているとのこと。