ロング・サヤン村でプナン人大集会
宣言文を採択!

6月上旬には30以上のプナン人集落の代表者がバラム川上流ロング・サヤン村に集まり、三日間の集会をもった。集会では、慣習地での伐採の停止、各集落のための共有林の設置、開発の意志決定プロセスへの参加、伐採被害に対する補償、約束された医療・教育・住居・農業技術支援など生活改善策の履行などを求める宣言が採択された。タイブ・マハムッド主席大臣、Abang Johari Tun Abang Openg環境大臣・プナン問題担当大臣に送る予定である。集会では、サラワク政府による福祉政策や生活改善策に「成績表」をつける行事も行われ、9つのグループが平均「F」の落第点をつけた。長年、伐採に苦しめられてきた不満を端的に物語っている。

ロング・サヤン宣言

2002年6月サラワク・プナン人協会会合
サラワク州ミリ省アポー地区ロング・サヤン村

はじめに

最近、リンバン川・バラム川流域で、定住・非定住を含む幾つかのプナン人コミュニティーが伐採産業の利用する道路を封鎖し、木材会社に対する平和的な抗議を再開しています。

これまで往々にして、私たちがバリケードを設置する行動は、既得権を持った関係者に扇動された違法な抗議として見られてきました。

このような意見があるので、この機会を借りて、私たちが伐採道路の封鎖に踏み切るほど追いつめられた本当の理由を明確にしたく思います。そして、私たちの生活を左右する事柄を巡る当局の意思決定の仕方のために、私たちがどれほど苦しみと貧困に耐えて来なければならなかったかを説明したいと思います。

州政府の約束とプナン人の生活状況

1980年代以来、州政府はプナン人コミュニティーに巨額の財政支援と生活基盤援助を約束し、それで私たちの貧困と苦しみを終わらせることができると広く宣伝してきました。しかし今日、そのような様々な約束にも関わらず私たちの生活水準が良くなっていないことは明らかであり、それどころか、私たちが強いられる生活苦は日々過酷さを増しています。(この文節内の赤字部分、読点を一つずつ減らしてあります。赤色はその印です)

州政府が私たちの生活水準を改善するためにいろいろなことをすると約束したにもかかわらずプナン人の生活状況が悪化していることは、もはや否定できません。広く宣伝した多々の約束にもかかわらず、私たちの抱える問題を解決できなかったことを、州政府は謙虚に認めるべきです。

そうした約束がなぜ実を結ばなかったか、以下に詳しく説明します。

先ず、私たちが今日抱える苦難の根源は、サラワク州における伐採権の発行に関する意志決定プロセスにあることを、州政府は認めなければなりません。長年、この不透明なプロセスは、住民の事前の合意と許可を得ることも、公平な、開かれた、意味ある協議のプロセスを設けることもなく実施されてきました。このシステムは、私たちを犠牲にしながら私たちの土地から伐採された木材資源を売って巨額の富を得てきた、裕福で政治的コネを持つ企業家階級の利益を優先してきました。

端的に言って、私たちが食料、薬、収入源を得るために深く依存している森林や河川の急激な破壊の真の原因は、ここにあるのです。

従って、広く宣伝された約束を州政府が仮に本当に果たしたとしても、森林管理に関する決定で私たちを悩まし続ける限り、私たちの困難と生活苦を終わらせることは不可能でしょう。

私たちの森が破壊されれば、他のどんな約束も支援も、生活を改善する意味を持たないでしょう。私たちの最も重要な二つの要求が無視されるからです。その二つの要求とは、私たちの土地と森林で、伐採をはじめ、油やしプランテーションの造成、ダムの建設計画など、全ての破壊的な経済活動を停止すること、そして先祖代々の土地に対する先住民族としての慣習的な権利を認知することです。

当局がコミュニティーに何らかの支援を提供しようとする場合は、実施されるプログラムが意図した利益をもたらすようにするために、先ずは住民の生活のあり方について学び、その要求やニーズを把握することが欠かせません。

州政府に私たちの生活状況を改善するつもりが少しでもあるのなら、先ずは上記の二つの要求を満たす努力をしなければなりません。私たちの森林と土地は豊富な資源と収入源を提供し続け、私たちの文化、信仰、慣習をも形成してきました。よって、森を破壊することはコミュニティーを破壊するのと同じ影響を持つのです。

第二に、多くの場合、州政府が十分な政治的な意志をもってコミュニティーへの約束を果たしてこなかったことも明らかです。大半の約束はマスコミで広く取り上げられたにもかかわらず、ほとんど実行されていません。また、約束を守らせる手立ても私たちにはありません。

真剣に約束を実行するつもりがなかったことは、いくつかのケースで特に顕著です。

例えば1993年、バラム川とリンバン川の上流の一部の森林を、プナン人のための特別な森林にすることが発表されたとき、その土地の法的な位置づけについては説明がありませんでした。この森林は、1958年サラワク土地法の規定に従い先住慣習権を行使できる州有地に分類されたのでしょうか?それとも、1953年サラワク森林条例の下で共有林として官報に記載されたのでしょうか?

また、多くのプナン人集落は1980年代以来、ロングハウスの周りの土地を共有林として法的に登録するよう、何度も申請してきましたが、州政府は一度もそれを承認していません。私たちの共有林の申請は、決して広くない土地を対象としたものばかりだったことを断言します。しかし、共有林の登録こそ、私たちの生活を守る最善の方法であるにもかかわらず、州政府はこういった要求に常に無頓着でした。

こうした誠意のなさは、州政府が毎年100万リンギの予算をプナン人コミュニティーのために配分すると約束したことと、実際の人々の生活状況とを対比すれば明らかです。まともな住居や農業に関する指導や支援といった基本的な便宜も図られていないのです。

そのような予算が配分されているかどうか、そして、それが平等に効果的に配布されているかどうか、どうすれば確認できるのでしょうか?私たちの生活状況は日々、悪化し続けているのですから、こうした全ての約束が人目を引くための宣伝以上のものであるかどうか、確認のしようがありません。

プナン人コミュニティーが抱える問題

州政府が私たちの森林に伐採企業が侵入することを許可し、約束を真剣に果たそうとしないため、私たちの生活状況は日々悪化しています。このような裕福な国に住んでいながら、先祖たちが狩猟採集民として森で暮らしていたときにも経験することがなかった苦しみを私たちが経験しなければならないことは、正当なこととは認められません。

コミュニティーを悩ます苦難は、非常に基本的な生存のニーズと関係しています。明らかに人間の最も基本的な権利に関わるこれらの問題を、以下に列挙します。

食糧不足

多くの家族は、十分でバランスの取れた食事を取ることに難儀しています。伐採によって、昔はサゴ椰子や野菜・果物が取れた森林が破壊され、昔は魚がいつでも取れた川が汚染されたからです。同時に、定住しているコミュニティーは農業生産が不十分です。

近隣の森林に棲む動物の数は年々減少しており、農地もほとんどが伐採跡地であるため土壌の質が良くありません。

天然肥料の作り方などに関する農業訓練も受けていませんし、野菜の種などの資材の補助も受けていません。魚の養殖や家畜の肥育をする援助もありません。

一部の家族は、米と塩、あるいは粗末なお粥しか食べられなくなるほど状況が悪化することもあります。

また、収入不足で砂糖、塩、油など、台所の必需品が足りなくなることもしょっちゅうです。

収入不足

森や川の破壊は、私たちの生計にも影響します。狩猟や漁獲、ラタンや樹脂や沈香などの林産品の販売から収入を得ることも、できなくなっています。

石鹸や常備薬など日常の必需品を買うのにも困っています。子供の教育費を払い、医療サービスを受け、重要な用事のために近くの町に出るのも困難な状況です。

健康状態の悪化

伐採で河川や林道周辺の空気も汚染されています。汚染された水と空気で消化器疾患、皮膚病、目の炎症が増えています。免疫系も弱り、ほかの健康問題の原因になっています。

劣悪な住宅事情

ほとんどのプナン人家族は、標準以下の住居に住んでいます。ちゃんとした住居を整えるための州政府の支援は、僅かしかありませんでした。

伝統的には定住しない狩猟採集民族であった私たちには、ロングハウスの建設の仕方についての十分な知識がありません。しかも、建材を購入したり工務店や労働者を雇ってちゃんとした家を建ててもらったりする金銭的な余裕もありません。このため、私たちの家のほとんどは悲惨な状態にあります。

掘っ立て小屋が集まっただけの村もあります。木板やセメントの床さえない、床が荒削りの木や竹でできた家もあります。実際、床張り材がまったくない家もあります。そんな家では、いまだに裸の地面の上を歩いているのです。ほとんどのプナン人の家には衛生的なトイレもありません。居住に向かない場所に立てられ、極度の暑さに晒される家も少なくありません。

身分証明書を入手できず

多くのプナン人は、いまだに身分証明書を持っていません。登録するには近くの町に出かける必要がありますが、ほとんどの人には費用がかかりすぎます。残念ながら、政府は住民登録局の担当者をプナン人の村に派遣して登録手続きを行うことも、あまりやっていません。

要求

上記の全ての問題を速やかに、断固として、体系的に解決する必要があることは、もはや明らかです。これらの問題を解決することは、困難でも不可能でもありません。私たちの生活苦は、全ての人間の権利である基本的ニーズが満たされていないことと密接に関係しています。政府は、市民が基本的な施設を利用でき、安全で快適な生活状況を享受できるようにする必要があります。

従って、以下のことを連邦政府、州政府に要望します:

*プナン人の先祖代々の土地での全ての伐採を停止すること

プナン人の先祖代々の土地での全ての伐採を停止することは、極めて重要なことです。伐採こそが、貧困、飢え、病気など、私たちが抱えるあらゆる苦難の根本原因だからです。

従って、連邦政府・州政府が私たちの福祉と幸福を本当に考えているのであれば、私たちの全ての土地での伐採を速やかに停止しなければなりません。当局がいつも強調するプナン人社会の「発展」は、私たちの資源が荒らされ続ける限り、決して実現しないでしょう。

伐採のない森を移動しながら暮らしていた私たちの祖先は、私たちが今日経験しているような飢えと苦悩に耐える必要がなかったことを思い起こすべきです。快適に暮らすために必要なものは全て、私たちの森や川から取れたのです。栄養豊富な食べ物、ラタン、薬草、その他の生活必需品も、誰からも乞う必要なく、全て得られたのです。

私たちには、市民として、自分たちの生活様式に最も適した開発モデルを選ぶ権利があります。しかし、どのような道を選んだにしても、私たちの慣習的な森林や土地に対する権利は常に守られなければなりません。土地と森林がなければ、私たちが陥ってしまった貧困と苦悩の悪循環を終わらせることはできないからです。

私たちは開発プログラムを拒否しているわけでは決してありません。むしろ、診療所や学校のような施設、水道や電気、下水設備の整ったロングハウスの建設などは歓迎します。しかし、食糧難と天然資源の破壊に苦しみ続ける限りは、そのような施設を提供されても意味がありません。

私たちの土地と森林がなければ、政府が提供する施設のほとんどをちゃんと利用することもできないでしょう。このような困窮した状況では、貧困の悪循環から抜け出し、自分たちの努力で生活を改善することもできないでしょう。

*先住慣習権を認め、各プナン人コミュニティーのために共有林を設けること

州政府が私たちの慣習的な土地と森林に対する権利を認定する体系的なプロセスを直ちに開始することを要求します。私たちは、サラワク州の最初のコミュニティーです。私たちの先祖は、サラワク州やマレーシアができる遥か以前から、ボルネオの森で暮らしていました。私たちの存在を無視することは、私たちの権利を奪い、財産を没収するのと同じです。

私たちの権利を認定するプロセスは、1953年サラワク森林条例に基づく法的な手続きによって行われるべきです。つまり、各プナン人集落と移動プナン人コミュニティーのために共有林(Communal Forest Reserve)を設け、官報に記載するべきです。保存林(Reserve Forest)や永久林(Permanent Forest)を設けることは、私たちには、ほとんど、何の役にも立ちません。上記の森林法によれば、そのような森林には伐採権の発行は許されているけれど、先住慣習権の行使が認められていないからです。

私たちのために共有林を設けることは、決して困難なことではありません。仮にミリ省にプナン人の村が100ヶ村あり、各村落に300エーカーの共有林を提供したとしても、州政府は僅か3万エーカーの土地を私たちのために確保し、官報に記載すれば済むのです。

1980年代には、ミリ省の森林の70%に対する伐採許可が出されていましたが、これは、約240万ヘクタールの土地が伐採会社に提供されたことを意味します。

3万エーカーは、約1万2千ヘクタールに相当します。伐採許可が出された面積の四分の一、60万ヘクタールしか伐採に適していなかったとしても、1万2千ヘクタールは伐採区域の僅か2%でしかありません。

ミリ省のプナン人集落の数は、明らかに100ヶ村よりずっと少ないです。それなのに州政府はなぜ、サラワクの自然の恵みを僅かでも取り残された人々のために配分しないのでしょう。

*補償を提供し、私たちの森林と土地の管理に関する、公平で開かれた、意味ある協議のプロセスを制度化すること

私たちの土地で、伐採や油やしプランテーションなど、産業経済活動を行うどのような計画を立てる場合も、先ず、十分な情報に基づく私たちの事前の合意を得る必要があります。このことについて、州政府の注意を喚起したい。プロジェクトに関するあらゆる情報を私たちに知らせるべきであり、私たちの同意に関わる事柄や参加の度合いに関しては、私たちが意思決定権を持ち続けるべきです。

同時に、私たちの土地に被害を及ぼし、食糧源と伝統的な薬草を破壊し、収入を失わせ、健康と生活の質を低下させた責任がある伐採会社は、私たちの苦しみに対する補償を、現金であれ生活基盤の整備であれ、私たちとの合意通りに提供するべきです。

補償の支払いに関する合意は、明文化されていなければなりません。私たちには、合意内容を十分吟味する時間が与えられ、自分たちの望む法的な助言を受ける権利もあります。伐採会社や警察は、私たちのリーダーに対して、合意書に署名するよう強制したり圧力をかけたりする権利はありません。

*農業の取り組みへの援助と資材支援制度を提供すること

今日、私たちプナン人のほとんどは、政府の強い勧めでロングハウスに定住し、農業を営むようになりました。政府の要望を満たすために、先祖たちの生き方を諦めたのです。政府は私たちの慣習や文化を「遅れている」と捉えることが多かったのです。しかし実際は、近代的な林業の専門家よりも私たちの方が、森林の管理と保全に関する優れた知識を持っているのです。

しかし、私たちが定住した後、州政府は私たちに農業訓練を提供する努力をほとんどしてきませんでした。私たちは、天然肥料の作り方、適切な畑の管理の方法など、農業の基礎知識も不十分なまま、ゼロから農業を学ぶことを余儀なくされたのです。

さらに、私たちの畑のほとんどは痩せており、ほとんど何も取れないものもあります。特に、野菜や果樹の栽培に必要な種の供給支援もありません。

私たちが農業でより高い生産高を上げることができるよう、政府が農業訓練プログラムの予算を配分し、種を供給する支援制度を設けることを要求します。同様に重要なこととして、栄養のバランスの悪さで苦しまなくても済むよう、家畜を肥育するプロジェクトにも予算を提供する必要があります。

全てのプナン人集落に、自給農業のためのみならず、商業目的の農業に関しても支援を提供するよう要求します。

*基礎的な保健医療プログラムと定期健診を実施すること

私たちの伝統的な薬の多くは破壊されているので、政府が私たちのコミュニティーに利用しやすい基礎的な保健医療サービスを提供することは大変重要です。私たちの多くは、伐採による空気や水の汚染やバランスの悪い食糧事情により、健康不良で苦しんでいます。実のところ、移動プナン(非定住プナン)のコミュニティーでは、食糧不足による幼児の死亡や、汚染された川の水を飲んで人が死亡したケースが報告されています。

このような状況を踏まえて、政府当局は先ず、健康診断を行うために医療担当官を全てのプナン人の村に派遣し、移動クリニックか飛行機による医師の巡回診療により、薬を定期的・安定的に私たちに提供する必要があります。私たちのほとんどは、他のコミュニティーのロングハウスやプナン・コミュニティー・サービス・センター、近くの町にある診療所に行く余裕もありません。

第二に、政府は、病気を予防する方法を私たちが学べるよう、村で基礎保健医療教育プログラムを行うべきです。

*適切な居住設備を提供すること

全てのプナン人の村に適切な住居を提供するよう要求します。私たちの家のほとんどは、水道もトイレもない惨憺たる状況にあります。

私たちは、政府の要求を満たすために森に住むのを断念したのですから、政府はとっくの昔に、私たちのためにまともな住居を建設する予算を配分すべきでした。

*就学児童の教育のための支援を提供すること

学校に通う子供たちに支援を提供するよう、政府に要求します。私たちのほとんどは、収入がないので、子どもの教育費や交通費、教科書や制服の費用を支払う余裕がありません。

お金がないために学校を中退しなければならなかった子供たちが、相当数います。

連邦政府・州政府が私たちの生活状況の改善を本当に真剣に考えているのであれば、このような状況を必ず終わらせなければなりません。私たちのコミュニティーに多額の財政支援を約束したとマスコミに広く宣伝しても、子供たちの最も重要な権利である教育を受ける権利が守られなければ、何の意味もありません。

上記のことを踏まえ、この2002年ロング・サヤン宣言により、私たちの生活苦、欠乏、貧困、苦悩を終わらせる適切で実効ある措置を早急に取るよう、連邦政府・州政府に強く要求します。そのために、先ず、私たちが抱える苦難の原因に関する私たちの説明を受け入れ、しっかりとした体系的なプロセスにより、誠意をもって私たちの要求を実現するよう求めます。

2002年6月9日
プナン人コミュニティー会合
98050サラワク州バラム地区トゥトー川・アポー川、ロング・サヤン村

主催:
サラワク・プナン人協会
98050サラワク州ミリ省バラム地区トゥトー川、ロング・バンガン村10番