住宅冊子改訂の現場から(第三回)
山田太郎
 
 SCCが『熱帯材を使わない家づくり』という冊子(通称:住宅冊子)を94年に作成してから、はや5年が過ぎました。この間に、熱帯林を取り巻く状況は、大きく変化してきました。住宅冊子の改訂は、そんな時代の流れを紙面に反映させ、私たちにできることを新たに考える材料を集めるため行うものです。
 「住宅冊子改訂の現場から」第3回は、三井ホームの取材レポートをお送りします。

 三井ホームは、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)による住宅建設のトップメーカー。ツーバイフォー工法は、アメリカから導入された住宅工法で、面で支える構造が特徴です。
「ツーバイフォーでは全ての面が合板でできており、住む人は合板に囲まれて暮らしていると言えましょう」──94年版の住宅冊子には、この工法についてそう記してあります。
 さて、同社の家づくりではどんな材を使い、また近年、何か変化はあったのでしょうか。

90年代、熱帯材合板の使用が大幅に減った

 三井ホーム資材部(構造躯体用材担当)の尾原千博さんに、お話をうかがいました。
 構造躯体材のうち、合板を使う部分は、大雑把に言えば「床・壁・屋根」となります。
「そのうち、今も熱帯材合板を使うのは、床だけ。以前は壁と屋根にも使っていましたが、既に針葉樹合板やOSBに代替しました」
 同社の構造躯体材(壁、屋根、床材の合計)の中で熱帯産材の占める比率は,約26.5%(98年)、つまり4分の1です。そのほかは、
「大体20%がロシア材原料の合板、30%ほどがカナダ産の合板、20%ほどがカナダ産OSBといった割合でしょうか」と尾原さん。
 8年前の90年には、構造躯体材の43.3%が熱帯産の材だったそうで、それが半減した形になります。時代をさらに遡れば、同社が針葉樹合板を使い始めたのは1980年前後。
「それ以前は、構造躯体用に使う合板は100%、いわゆるラワン合板だったと思いますよ」

「環境を考えればラワンより針葉樹を」と、残る問題

 さて、ではなぜ三井ホームでは、熱帯材からカナダやロシアの針葉樹へ、合板原料を変換してきたのでしょうか。尾原さんによれば、
「熱帯材に比べれば温帯針葉樹のほうが再生産が容易ということで、より環境にやさしいと思われる素材への切り替えを進めた」ことと、「コスト的な要因」の2つが主要因とか。
 三井ホームのような住宅メーカーにとって、熱帯材には、今後の供給の安定性に不安があります。一方、国産の針葉樹合板(原料はロシア材など)は90年代に入り生産量も増え、価格も昨今はラワン合板に比べて若干安く、消費もかなり伸びました。三井ホームの原料転換も、この流れに位置づけられるようです。
 ラワン合板は、針葉樹合板に比べて表面が平滑なことは、広く知られています。三井ホームの構造躯体材のうち、床にだけは今も熱帯材合板を使う理由も、客の足に直に触れる床は「平滑性への要求が特に高いから」。
 それでもラワン合板は今後、特別の用途にしか使わぬ方向になるのでは、と尾原さんは言います。針葉樹合板利用のノウハウも既に蓄積され、「ラワンでなければ困る」部分は、構造躯体に限ればほとんどないとのことです。

 SCCを含め、市民の行動によって、熱帯林破壊の問題性はかなり広く日本の人々に認識されるようになりました。三井ホームの話からも、その成果が感じられます。
 しかし、企業が材を熱帯材から他の原料に替えているのは、必ずしも環境への配慮が第一要因ではありません。熱帯材の供給が先細りで、コスト的に必ずしも安くなくなったことが、代替をうながしている面も強いのです。環境的に問題が指摘されるロシア材の使用が増えている点を見ても、熱帯材使用量の削減と、私たちのライフスタイルの見直しとは、まだ直結しているとはいいがたいようです。
 それでも企業が取材に応じ、情報を開いてくれることに、新しい芽はある。そんな印象を、三井ホームさんのお話からは持ちました□


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