

現在サラワク・キャンペーン委員会では、住宅からの熱帯林破壊をやめようという呼びかけのために、小冊子「住まいから考える熱帯林」の改訂作業を進めています。前回に引き続き、国産材による住宅造りに取り組んでいる人たちをご紹介します。
「東京の木で家を造る会」は、その名のとおり東京産の木で家を造っています。東京で林業が行われているのはあまり知られていませんが、東京都の森林面積は都全体の36%も有るのです。しかし、小規模林家が多く山林は荒れてきています。せっかくある木を、どう使ったらいいのかを考えてこの会はできたと言います。
事務局長の稲木さんは、「日本の人工林が荒れているのを何とかしたいという人たちが集まって、1996年4月にこの会を作りました。外材が安いので、今、日本で林業をやる人はかなり少なくなっています。川上の環境がだめになったら川下もだめになります。都市の人たちに、もっと山のことを考えてもらいたいのです。今の日本の住宅は20数年で建て替えられてしまいますが、70年育った木は70年は使わないとだめだと思います。会の家は外材や新建材を使わないで、地元材のみで建てることを考えています。多少値段は高くなりますが、様々な活動を通じて理解者を増やしていくことが重要だと思っています」と言います。
会で建てた、国分寺市のHさんのお宅で住宅見学会がありました。当日は雨にもかかわらず30名ほどが参加されました。住宅に対する関心はとても高いと感じます。H邸は建坪34坪ほどの総2階の一見、普通の住宅です。しかし中に入ると、太い柱や梁が目立ち木の家だということがはっきりと分かります。家の真ん中を貫く杉の磨き丸太の美しさがひときは目を引きます。二階の広いリビングに入ると、雨の日なのに湿気をほとんど感じません。
Hさんは雑誌で「東京の木で家を造る会」の建築家である、長谷川さんの建てた家を見て、設計を依頼したということです。もともと環境問題には関心があって、古い家を壊すときも良心の呵責を感じたといいます。この家には太陽熱を利用する暖房の他にも、コンポストを作ったり雨水を利用する工夫もされています。
Hさんは「この家に住んでみて、物の見方が変わってきたように思えます。今までは物を効率的に納めようとしていましたが、必要のないものは持たないようになってきました。生き方のレベルアップがあったように感じます。家を建てる時は自分の生活に対して何が大切かの優先順位をつけることが大切だと思いますね」ということです。
一方、埼玉県では「素木(すき)の会」という、飯能市を中心とする地域から採れる西川材を使って、家を建てている会があります。西川材とは江戸時代に江戸の西の方から、川を筏によって来たことから名付けられたといいます。
会の建築家の吉野さんは飯能に生まれ、都心で仕事をしていました。飯能に戻ったときに、荒れているふるさとの山を何とかできないかと思い、1992年頃この会を作ったといいます。会の仕様は特に決めてはいないということですが、近場の木を無垢材として使い、自然素材を生かした100年持つ家造りをしたい、ということです。
会で建てた家を見せていただきました。住宅地の一角にある延べ22坪のKさんの家は、軒の長い日本建築独特の形をしています。Kさんは日本建築に対する美意識がこのような家を造るきっかけになったといいます。日本家屋を造るのなら当然国産材を使うということです。
このような家に住んでどうですかという問いには、「この家には住み始めてからまだ一年しか経っていないので、人が使う住まいとしての結論はでませんね。20年ぐらい住んで、家の霊が付いて初めて住まいとなるような気がします」ということです。
吉野さんも「家は造って施主さんに渡したときからが始まりだと思います。そこから住まい方が始まって行くんです。施主と建築家、工務店との関係はずっと続いて行かなくてはいけません。今は出来合いの物が簡単に手にはいるようになったので職人さんも仕事を失っています。住み手に合わせて造ってこそ本当の家だと思いますね」と言います。
住宅を建てる場合、よく坪単価が引き合いに出され、値段の目安にされます。しかし、国産材住宅を何軒か見て、それはあまり意味のない事だと分かりました。家を建てる条件は各家庭によって様々なので、注文住宅の場合は比較は成り立たないのです。それよりも家を建てる場合は、どう住まうのか、どう生きるのかをきちんと考え、それに答えてくれる建築家や工務店と、納得のいく家造りをすることが大切だということを取材を通じて感じさせられました。
また、熱帯材は合板に多用されていうことで知られていますが、国産材で合板を作った人たちがいます。一級建築事務所、環境企画Gの井上さんは「東京の合板組合が千葉産の杉で合板を作ったということを聞いて、東京の木でも作れないかと思いました。外材の合板に押されて、国産の合板産業もだめになっています。そして、熱帯の森林も破壊しているのです。住宅を造るうえで、合板を使う場合はどうしたらいいかを考え、国産材で作ってみました」ということです。
東京の多摩産の杉で、内装用に作られたという合板は節もなく、これが本当に日本の木でできたのかと驚きました。接着剤もホルムアルデヒドを使わない健康によいものだということです。
住宅を造るときに、環境や健康を考える動きは少しずつですが広がっているように思います。家造りを通しても、私たちの生活のあり方を、真剣に考える時期に来ていると思います。
問い合わせ先:
東京の木で家を造る会
〒190-0174
東京都あきる野市乙津993-2
TEL: 042-595-0048
FAX: 042-595-0049
素木の会
事務局:創夢舎
〒357-0063
埼玉県飯能市飯能291
TEL: 0429-73-8788
FAX: 0429-73-8075
環境企画G
〒169-0074
東京都新宿区北新宿1-4-9-205
TEL/FAX: 03-3369-4350