熱帯材を使わない家造りとは?
木田繁
 
 

 現在サラワクキャンペーン委員会では、住宅からの熱帯林破壊をやめようという呼びかけのために、小冊子「住まいから考える熱帯林」の改訂作業を進めています。熱帯材は合板として住宅の様ざまな所に使われています。今の日本で熱帯材を使わない家など造れるのでしょうか。そこで実際に熱帯林を使わない住宅とはどんなものなのかを調べてみました。

 2月13日、高級住宅の建ち並ぶ田園調布で、自然素材で作られた住宅の見学会が行われました。最近「シックハウス症候群」などといわれ、住宅による健康被害が問題になっています。会場となった家は50人以上の見学者であふれ、あらためて健康と住宅の問題に対する関心の深さが感じられます。
 熱帯材合板は様々な接着剤によって貼り合わされており、これに含まれているホルムアルデヒドが健康を害することが多く、熱帯材を使わない家は健康にも良いということなのです。
 この家を造ったのは「自然住宅・住まい方推進ネットワーク」の方々です。代表の田久保さんは工務店の家に生まれ建築の仕事に進みました。オイルショック以降アルミサッシやグラスウールを使った省エネ住宅が推進されましたが、結露やカビ、ダニの問題が起こってきたのです。その責任を行政は施工サイドに押しつけました。そして多くの大工さんは仕事を辞めたということです。田久保さんはこれでは日本の文化を捨てることになるのではないかと思い、本物の住宅とは何かを考えるようになりました。そして15年ほど前に住宅問題のセミナーを始め、いろいろ勉強しているうちに工法の問題に行き当たったといいます。
 そこで1995年に建築関係に携わる人や、実際に家を建てる市民たちのネットワークを作りました。この「自然住宅・住まい方推進ネットワーク」の目的は「自然と共生の精神に基づき、地球環境並びに資源循環を考え私たちの健康を守る、真に快適な住まいと住まい方を推進する事」とあります。この会は利益を上げることが目的ではなく、家を通して環境を守ることを目指すのだということです。会の構成は建築関係者の「作り方部会」と市民の人が参加する「住まい方部会」があります。両方が協力してこそ良い家が造れるのです。
 このネットワークに入るには、単に家を建てたいからというだけではだめだということです。お金さえ払えば健康に良い家が手に入ると考えている人は家に対する愛着もなく、飽きればすぐに壊してしまうといいます。ネットワークの趣旨を分かってもらうために、セミナーに出席して納得してから、参加してもらいます。施主さんには建築現場も見て、できる作業はやってもらいます。これはコストを下げるためにもなるのです。このようにして建築するので田久保さんの手がける住宅は年2〜3棟がやっとだといいます。
 見学会の会場となった神崎邸は、建築面積87.03uで2階建ての普通の住宅です。正面から見ると、2階のベランダに組んである太い木材が目を引きます。漆喰を塗った壁の白さが眩しく感じられました。木製の軒をくぐって玄関に入ると、檜の香しい薫りが全身を包み込み、まるで森の中にいるような気持ちにさせられます。家の中もあちこちに無垢の材木が見え、木の家ということがはっきりとわかります。
 2階の一室で家に関する説明が行われました。この家を造った建築関係の人たちが苦労話も含めて家の事を話します。参加した一般の人たちは熱心に聞き入っています。一生の財産である家を造るのはたいへんなことなのです。
 この家の材木はほとんどが木曽の檜を使っています。貫構造を使い金属類で固定することはしません。金属は錆びてしまい長持ちしないということです。壁には漆喰を塗り、断熱材をはさんで通気層が2重に作られています。これは地面の温度が年間を通して変化が少ないことを利用するものです。内側の通気層は夏は地面の冷たい空気が通り室温を下げ、冬は換気口を閉めて空気を溜めると、これが断熱材の働きをするということです。外側の通気層は空気を循環して湿気を抜くようになっています。エネルギーを無駄に使わない工夫も随所に見られます。床には無垢材に漆が塗ってあり、落ち着いた雰囲気を醸し出しています。漆は浴槽にも使っていて保温効果を高め、湯船に浸かっていると幸福感を覚えるといいます。
 施主の神崎裕子さんにお話を聞きました。この家を建てたのは、以前の家が古くなり立て替えを考えていたところ、生協の関係者から田久保さんを紹介してもらったことからだといいます。講演会を聞いた後、セミナーに参加するようになりました。地所が自分のものであわてる必要がなかったのでじっくり考え、そして実際に田久保さんの建てた家を見て決めたのだそうです。ほかの工務店やハウスメーカは当たっていないということです。もともと環境問題には関心があって、健康に良い家が欲しいとは考えていたそうです。以前の家は合板を使っていたので、子供の健康が悪いこともあったといいます。神崎さんは「私は機織りをするので、物づくりに対するこだわりは分かっています。このまま大量生産の家が造られ続ければ職人さんの技術も失われると思い、この家を建てたのです」と話します。神崎さん自身も、防腐剤として使われる蜜ロウやひば油を塗るのを手伝いました。

 田久保さんの手がける住宅は坪単価が80万円するもので、普通のハウスメーカよりは割高です。しかしこのように建てられたものなら決して高いとは言えないのではないでしょうか。神崎さんに、このような住宅を建てたい人へのアドバイスを聞くと「家の事だけを考えていてもだめだと思います。衣、食、住と生活のすべてにわたって環境や健康の事に関心を持っていないと、本当に暮らしやすい家は造れないでしょうね」ということでした。

 また、一方で日本の森林を考えることから国産材住宅を建設している人たちもいます。「モクネット」というネットワークでは主に秋田県産の材木で家を建てています。
 ネットワークの丸橋さんによれば「モクネットとは会社とか事業体のようなものではなく、木のネットワークということです。もともとは「ネットワーク21」という市民団体から派生したもので、森林問題を考えていたこの会が、十数年前に秋田県の「モクネット事業協同組合」と交流会を行いました。そのときにどうしたら日本の木を使うことができるのかを考えるために、このネットワークを作ったわけです。つまり日本の木を使う会ということなのです。趣旨に賛同してくれた人はモクネットに参加できますが、単に家を造る会ではありません。建築関係だけでなく一般の市民など様々な立場の人たちが参加していますが、いろいろなセミナーに参加してもらいます。そこで住宅のことだけでなく、土地のこと、エネルギー問題や環境問題なども考えて住まい方の方向を決めていくことが大切なのです」といいます。通常、家を建てるまでは数年かかるということです。また「大工塾」などを開き若い大工さんの技術向上もはかっています。
 ネットワークに参加している初雁木材の関根さんは「国産材を使ったからといって、必ずしも家の値段は上がるわけではありません。今の家は材料費よりも手間賃とか設備費にお金がかかるので、そちらの方を考えることで良い材料の家を造ることができます。杉などはうまく使えば決して高くはないのです。このような家を造るには施主とのコミニュケーションが大切ですね。モクネットの住宅は柱や梁を見せる真壁工法の家で、木材を直接見ることにより木について理解してもらい、山林の問題まで考えて欲しいと思っています」といいます。いきなり山林の事を言っても都会の人には理解できないのでしょう。国産材の住宅を造りたいという人の窓口を作ることが必要ということです。最近では、ストックヤードの設備や製材所、メーカーの協力も得られるようになり、材木については安定的な供給ができるようになってきたということです。
 実際にモクネットで家を建てた西本さんにお話を伺いました。西本邸は国分寺の閑静な住宅街にあり、まだ建築中の家は外側に貼られた杉の無垢板が人目を引きます。
 西本さんはハウスメーカに建築を依頼していて、仮契約まで行っていました。しかし、いろいろ住宅の事を調べているうちに、新聞で「森で遊び林業を考える学校」が秋田で開かれるのを見て秋田杉に興味があった西本さんは、何か家造りにヒントになるものがあるかと思い参加しました。そこでモクネットを紹介してもらい、実際にモクネットが建てた家を見て、一目で惚れ込み秋田杉の家を建てることにしたといいます。その後セミナーに参加し、建築家と詳細な打ち合わせの後、建築に着手しました。西本邸は延べ床面積39.5坪、2階建ての2世帯住宅です。家のなかに入ると4寸の太い柱が目につき、壁の無垢板の節が木の味わいを醸し出しています。この家の材木はほとんどが秋田の杉で、土台にひばを使っています。外材や合板はほとんど使ってなく、二階には丸太を組んだ梁があり、天井は貼らずに木組みを見せる造りだということです。厚さ1寸の板を使うことにより断熱材なども使わなくてすみ、壁は珪藻土を塗るなど自然素材にこだわって化学物質を極力排除しています。
 「みなさん、こういった家が造れることをあまり知らないようですね。少し勉強すれば自然や健康に良い家が建てられるんです。日本人だから日本の木で造るのが良いと思いますね。この家に入って木を見ていると気持ちが素直になります。この家は買うのではなく建てるという感じがはっきりわかります。無垢材は傷が付きやすいものですがそんなことも気になりませんね」西本さんは笑顔でこう話します。家族の方々もとても満足していて、上棟祭では感動のあまり娘さんが涙ぐんでいたといいます。この家は坪単価80万円しますが2世帯住宅ということもあり、あまり高いとは感じていないそうです。家造りとはその人の人生観が現れるものでしょう。環境を破壊しない家を造るということは、私たちの生き方そのものが問われているように思えます。

● 問い合わせ先

自然住宅・住まい方推進ネットワーク
田久保美重子(携帯電話)090-3126-4877
関東事務局 埼玉県所沢市上新井1188-5-1004
TEL 042-929-0229 FAX 042-923-3800
信州事務局 長野県塩尻市広丘吉田501-5
TEL 040-180-7317 FAX 0264-34-3243

モクネット
丸橋かほる 埼玉県狭山市水野660-73
TEL/FAX 0429-59-3831


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