
国産材の使用と熱帯材の削減
〜建築家の立場から〜
熱帯材の使用削減策のひとつとして、国産材による代替が可能かという論議がある。その用途は実際には異なることが多く、直接的には代替材とはなりえないケ−スが多い。パプアニュ−ギニアとソロモンの森を考える会(以下パプアの会)の代表であり、建築家でもある辻垣正彦氏に、その活動と型枠合板(コンパネ)だけでなく、住宅の分野での代替の可能性などについて聞いた。(聞き手−吉永卓)
友人の建築家から南太平洋の問題に取り組んでいるグル−プがあり、家具や建築などについて分かる専門家に参加して欲しいという話をきいて95年から参加して、4年になる。私は静岡県出身であることから、天竜の森林組合の建物等も幾つか手掛けてきた。その中で県の林政課の人や林業関係の人と話をして、日本の森林のこと、間伐材の問題などについて知り、出来るだけ国産材を使おうとしてきた。住宅だけでなく、幼稚園などでも出来るだけ間伐材を使おうと思ってやってきた。そんな中で天竜の横山川産業の人とも知り合い、今度、同社などとトムハウス協同組合という国産材を使った家作りを行う組合を設立した。全国でこうした活動をする人が増えてきているが、お互いが孤立してやるのではなく、ネットワークを組んでいくことが市民への情報提供にもなるし、大切になってきている。
私は建築家としては建築という形に残るものを作り表現していくことが役目だと思っている。建築は1回作れば何十年も持つもので影響力は大きいと思っている。最近、奈良県で賃貸マンションの設計を担当しているが、この物件ではまず施主を説得した。昨年の京都会議(COP3)や近年のアトピー問題などがあり、施主も環境問題について関心を持っており、前段階として森林への理解を深めてもらうことで理解してもらった。これからはそういう仕事しかしたくない。環境に配慮して、且つコストを上げないこと、例えば木材の部分ではコストアップになってもトータルではコストアップにならないよう、構造でカバーすることができる。関西でこうした物件が出来ることで、建設会社や職人にも環境問題を考えるきっかけになるはずだ。20世帯位の物件だが、もちろん入居者にも理解が得られるようになっていくだろう。
型枠については、内側にM&K社を使用、断熱性能の高さを証明して公庫の融資対象にもしてもらった。外側は型枠に熱帯材を使わないことを特記仕様書で記載して、九州の合板工場でつくっていたスギ合板を使うつもりだったが入手できず、ラジアタ松との複合合板にしようと思ったが、実際にはロシアのカラ松を原料にした合板になってしまった。ロシアでも原生林の伐採をおこなっているので、針葉樹ならいいという訳でないことで反省している。スギ合板を作っていた会社が倒産してしまい、当面はラジアタ松との複合合板を使用することで熱帯材を70%削減するようにしていきたい。
内部造作は吉野檜、下地材には天竜のスギも使用した。マンションといえどできるだけ木材を使用し、塩化ビニルは一切使用していない。
今度作ったトムハウス協同組合のように、国産材を使った住宅には非常に反響が大きいので、建築家ももっとアピールしていくべきだろう。岐阜の建築家の嶋田義博氏や秋田のモクネットなどのグループとも協力して、素材の部分でもっと共有できるものがあると思う。地元の木材を使った住宅に対して、自治体の行うものについては住宅金融公庫の融資制度の枠内で優遇できる制度がある。しかし、都市部で実際に住宅がたくさん建っている東京都、神奈川県などの自治体には、地域材を使った住宅への優遇制度はない。これはもう少し有効に活用できるものだと思っている。市民が行政に対して働きかけていくことで、こうした制度が作られ、それを利用していくのもひとつの手段だろう。例えば東京都の場合、都内の森林から住宅を作らなくても国産材であれば良いということでいいのではないだろうか。市民が住宅を身近な問題としてとらえ、市民運動に結びつけていけるような情報を提供していくことが大切だろう。
岐阜の嶋田義博氏は「岐阜+天竜」による国産材活用ネットワークで天竜スギの本箱のキットを発売しているが、これは従来のカラーボックスに代わる用途に使え、熱帯材の使用削減と国産材の活用を結びつけたものとなる。売上の5%をパプアの会にカンパしてくれるとの申し入れもあり、国産材の活用と熱帯材の削減を意識して行っていく良い例といえるのではないだろうか。トムハウス協同組合ではモクネット(秋田)、木の住まい(仙台)など国産材を使った住宅作りに取り組んでいくグループとネットワークを組んで活動していきたいと思っている。■
パプアの会
東京都品川区西反田6-10-14
イト−ピア五反田206 辻垣様方
電話 03-3492-4245
島田義博氏
岐阜県各務原市那加前洞新町1-191-1
電話 0583-71-4578
FAX 0583-71-4025