『熱帯林保全のための全国市民会議』開催さる!!


 『熱帯林保全のための全国市民会議』(以下全国会議)が5月31日、6月1日の2日間にわたって東京・総評会館で「パプアニューギニアとソロモン諸島の森を守る会」(以下パプアの会)とSCCの共催で開催された。会議ではセッション1で「これまでの自治体キャンペーンを振り返って」をテーマに各地のキャンペーナーからの報告により、これまでのキャンペーンの評価、課題などを話し合った。セッション2では「国産材利用の現場から」林業家や地域材の活用をめざした市民グループなどからの報告を受け、熱帯林の保全と国産材の活用問題を考え、セッション3では「今後のキャンペーンに向けて」をテーマに環境基本条例や環境基本計画によるアプローチ、住宅金融公庫、学校家具キャンペーンなど新たな熱帯材使用削減にむけた取組について話し合い、今後のキャンペーンの方向性を探った。

セッション1

報告1「キャンペーンの経過と課題〜東京都を例に」(SCC・浦本氏)  

 キャンペーンを始めたのは90年ごろからである。このキャンペーンが欧州ではかなり成功していること、どこでもできること、市民に近いことなどの理由から、自治体に対して公共工事で使用される熱帯材の型枠の使用削減を求めていく運動として取り組んできた。SCCでは90年から東京都に対しての働きかけを始め91年10月に都が一番に熱帯材の削減方針を発表し、その後各地でも自治体が熱帯材の削減方針を発表するなど運動は盛り上がっていった。94〜95年には少し運動が鎮静化してきている。最近、関西のグループで調査したところ、全国で約160の自治体が何らかの熱帯林使用削減策を実施していることがわかった。
 6年にわたってキャンペーンを行ってきた結果、問題点として、(1)代替品のほとんどが複合合板、(2)評価の方法がまちまちで総量(絶対量)の削減につながっていない、(3)削減のデータが不備で途中経過がわからない、(4)東京都では、最近では2000年以降は持続的な森林からの木材利用に努めると表現が変わってきてしまったことが挙げられる。(4)の問題はWTOとの関係から、熱帯材と他の木材との差別はこれに抵触すると言われている。
 実際に運動を行ってきて感じられたのは限界と可能性の両面である。つまり、やってみると結構成果がでるが、このキャンペーンだけでは熱帯林は守れないということ。このキャンペーンの上に今後は何か付加していかないといけないと思う。自治体キャンペーンを基礎体力として、今後はこれになにを加えていけばいいのか考えていきたい。

報告2「各地のグループから」

■JATAN名古屋 平井氏  

 88年に設立、JATAN、SCCなどがキャンペーンを始めたころからこのキャンペーンに取り組み、議員が参加していたこともあって良い結果を残せたと思う。学校家具について国産材のものへの転換を求める活動を91年12月から始め、 92年1月に県内の自治体に対してアンケートと資料を送付した。96年10月の全国一斉行動では県下の全市に要望書を提出した。
 当初、県側は県ではなく業者が使用していること、県の使用量は極めて少ないことなどを理由に反応は鈍かったが、92年には名古屋市建築部が熱心に取組み、研究会を設けて翌年複合合板の使用方針を出した。94年には県も複合合板に切替えることにしたが、現在もそこから先にはすすんではいない。これまでの活動を振り返って、問題点として、周辺の自治体への対応(岐阜,三重など)が出来なかったこと、アンケートから先に進めなかったこと、関連業界を巻き込めなかったことなどがあげられる。

■MOK森を考える神奈川の会 正木氏  

 93年に設立した。会員に議員がいた事もあり議会での質問をきっかけに93年 9月に県で熱帯材型枠の70%の削減を行うとの方針がでた。県下の市町村の現状を把握するために93年11月と96年にアンケートを行った。96年には県下の70%の削減達成を確認した。2度のアンケートから熱帯材の削減に取り組む自治体が増えてきたことがわかった。その内容は実態調査の実施、仕様書への記載、針葉樹の利用、建設関係への広報などで、県の施策を認識しているところが多い。全体的にはキャンペーンの効果が出ており、県の削減方針が県下の市町村に影響を与えていることから県をターゲットにするのが良いと思う。
 横浜市では「持続可能な森林からの木材の使用促進」するとしており、持続可能な森林については、明確な定義は無いがITTOの定義を適用するとしている。
 県では96年3月に環境基本条例を公布、4月から施行しており、環境基本計画もつくられている。MOKでは、調査を行っても会報の発行数も少なくマスメディアでもなかなか取り上げられない等、その成果の発表の場が限られているという問題がある。

■A SEED Japan 武井氏  

 96年12月に、自治体キャンペーンをやってみようということになった。A SEEDは学生の団体なので、全国の学生の関心を高めるためパンフレットを作り80団体へ郵送し、4団体(大学)からの協力を得られた。今年もSCC、MOKなどと協力して自治体キャンペーンを行って行きたい。
 熱帯林についてはワーキンググループでフィリピン、マレーシアでスタディツアーを行い東南アジアでの熱帯林の状況を日本に知らせるためにシンポジウムも開催する。

報告3「対自治体アンケートの結果について」(関西熱帯木材使用削減委員会・ 南氏)

   この委員会は大阪、神戸、奈良、京都の4団体が集まり昨年発足し、2年間の活動期間で自治体、住宅、家具の3つの部会で提言をまとめていくことになっている(アンケート結果の詳細はアップデイトNo.28,29参照)。昨年春に関西の自治体を対象にアンケートを実施し、約80%の回答を得た。削減に取り組む自治体が多いのは大阪府下の自治体で、ウータンの活動の成果と思われる。町村レベルでは、きめ細かい施策が行われているが、熱帯材の削減と言うよりも、地元の木材の活用のための施策が多く、学校家具のように問題意識は違うが結果的に熱帯材の削減につながっているものもあった。96年秋にはSCCと協力して全国のアンケートを行った。地元の木材を使った住宅に対する補助はかなりのところで行われているが、京都のように実績ゼロのようなところもあり、流通問題もあってうまくいっていないケースがあった。家具、建築廃材につい ても問題にしていくべきだろう。

 この他に、自治体の熱帯木材の不使用条例等はWTOの協定に違反するのではといった疑問や、木材貿易と熱帯林の持続的経営は両立しうるので自治体の熱帯材ボイコットをしないように働きかけをする決議をITTOが昨年11月の会議で採択していること、情報公開制度を活用したキャンペーンの可能性などが話題となった。

まとめ

1. 自治体キャンペーンでうまくいった点  
・県(府)への働きかけの効果が大きい。
・葉書キャンペーンにより活動が拡がる。
・しつこく働きかける。        
・他地域の情報を共有できた。  
・アンケートには啓蒙の効果もある。  
・各地の情報を全国にまわす。  
・議員の協力者を得る。
2. これまでのネックとなっていたこと  
・削減量を定量化できなかった。    
・WTOの協定違反になる。  
・自治体の担当者が直ぐに変わる。   
・使用禁止を求めるのは困難。  
・地元産材利用の助成金が活用されていない。
・国産材の利用促進は熱帯木材の使用削減には 必ずしも結びつかない。  
・建設業界の体質。         
・日本の工業製品輸出に依存した体制。
3. 今後へ  
・情報公開制度の活用


セッション2「国産材利用の現場から」

■「林業の現場と国産材合板生産の現状」(野尻林業・野尻氏)

 なぜ、国産材が使われないのか考えてみると、品質が保証されていないこと、コストが高いことなどがあげられる。国産材はJAS規格という規格はあるが、これはあって無いようなもので、一方外材はJIS(工業規格)に近い寸法精度とキチンとプレーナーをかけたものとして入ってくる。今の日本の大工さんはキチンとした規格材でなければ使ってくれなくなっている。林業の破壊はサラワクだけでなく、日本の山も息ができないほどの状態になっている。近くの群馬の山とかを見てほしいが、山頂付近の森林はほとんど枯れてしまっている。日本の森は、ほとんどが人工林で、手入れをしないと荒れてしまう。私は日本の林業を保護していけば、熱帯林の伐採分はカバーできると思っている。日本の林業はサイクルがあり普通35〜55年、吉野では80年で再生が出来る。私の持っている森林は百何十町歩もあり、FSC(木材認証制度のひとつ)の第一号として手をあげており、この内の8町歩を申請するつもりだ。日本の林業では直材しか使わないが私は逆に曲がった材を曲がったまま使う方法を考案して、国産材の利用度を高めていこうと思っている。曲がる、腐る、ネジレるといった欠点を改質することで使用できるようにしていく。
 合板については、公共工事で使われる物については新栄合板でスギで作った合板を製造しており、3×6判で1900円/枚で販売しており、東京中央市場(浦安市)、大阪木材市場などでも扱っている。しかし、国産材を合板にして使うのには、限度がある。それは外材に比べて細い、取引の量もコストも違う、スギはヤング係数が低く強度も低いなどの理由からだが、私は18ミリ位の板として使用すればいいと思っている。型枠や基礎を打つ時にこの板を使っているが、 十分使えるものだと思う。

■「埼玉県西川材活用の現場から」(素木の会・吉野氏)

 合板の不使用ということではなく、日本の文化として暮らしの中でもっとムクの木を使って欲しいと思い、飯能市で設計事務所をやっている。県の林業事務所と林業家、都市の住民が一緒になり「西川木楽会」という会をつくり、今年から東吾野のユガテという場所で1ヘクタールの林地を30年契約で借り、4月に70人で900本の檜を植え、残りは欅などを植えていこうと思っている。「素木の会」は92年に一本の木から住まいを考えようとつくった会で、森−木−人−匠というサイクルを一般の施主と一緒につくっていこうという活動をしている。いま、「木楽里」という木工施設をオール西川材で建設しており、ここでは合板は1枚も使っていない。
 住まいに使う木材の量は大変多く、プレハブで0.5立方メートル/平方メートル(床面積)で木造はその倍以上になる。木造住宅を建てることは、CO2の固定と言うことでも意味があり、使うことで味がでるものだ。歴史、文化、安全性、コミニュティ、美しさの5つを考え住まいの勉強をしている。もう少し山をみて山がもたらす水の問題、ダイオキシンの問題など足元を見つめなおすことが大事なのではないだろうか。

■「学校家具キャンペーンから」(にっぽんこどものじゃんぐる・大武氏)  

 96年6月に地元の木材を使って学校家具を製作する木工業者が集まって日本ウッドワーク連盟の設立総会を開催した。連盟のメンバーは城北木材加工(松本)、天竜ウッドワーク(天竜)の他、青森、新潟、島根など。5月には松本市内で国産材の学校家具を導入した3小学校の視察を行ったが、使用によりネジが緩むもの、天板のキズなど問題のある製品もあった。学校家具は公共事業の一つで新規参入は困難なこと、現在価格だけで決定しているので構造的に弱いものでも採用になるなどの問題点を感じた。学校家具を単に学校の備品としてしか捉えていない教師が多く、子供たちの教材となることをもっとアピールしていく必要があると思う。

■「M&K 間伐材ボードの生産の現場から」(M&K・阿部氏)

 コンクリートからでる有害物質が美術品に悪影響を及ぼすということで、それを吸収する素材の研究をしてきた。その中で比較的良かったのがスギで、その製品化を10年前にスタートした。しかし、コストが高くなり公共物件で国立博物館、現代美術館などその機能を生かせる現場で大量に使用してもらっているが、どうしもコストが下げられず、それがネックとなっている。それを打開しようと県産の間伐材を使ったボードを県の事業に使ってもらうようなシステム作りを進めている。


セッション3「今後のキャンペーンに向けて」

■「シンボル的な建物へのキャンペーン」(パプアの会・辻垣氏)

   イグナチオ教会(麹町)の建て替え工事を事例に紹介する。建築面積3052平方メートル、延べ床面積7332平方メートルの地下1階、地上4階の規模で全型枠使用量は23000平方メートル。信徒から環境問題を含めた発注者側のコンセプトを伝えられ、93年にコンペを行ってから95年の基本設計までに通常の3倍の期間を要した。(1)打ち放し型枠の削減によって4965平方メートルの型枠を削減(この量は10棟分の住宅の使用量に匹敵する)、(2) 合成樹脂型枠はコストが高く部分的に使用、 (3)プレキャストコンクリートはほとんど使用なし、(4)デッキプレートは551平方メ ートル使用、(5)仕上げ材、家具などについては特記仕様書で「熱帯材は一切使 用しない」としたことで熱帯材の使用は無し、(6)フロンを使わないガス冷暖房の導入などを行った。デザインの段階でプレキャストにするとか型枠の使用量を減らすことも出来たと思う。

■「環境基本条例及び環境基本計画の可能性と熱帯材利用の総量削減の可能性」(ウータン・西岡氏)

 環境基本条例及び環境基本計画の策定段階で熱帯材の削減、型枠の総量削減などといった項目を入れるように働きかけていくことが必要だ。環境基本計画の中に熱帯材の削減の項目を入れているのは千葉県だけで、現在多くの自治体で環境基本計画を策定していることもあり、早急に対応していく必要がある。一度決まってしまうと見直し期間が3年又は5年など長いので、行政の一人歩きで策定されないよう働きかけていく必要がある。
 熱帯材使用の総量削減については、4月に大阪府下の45自治体にアンケートを行い25自治体から回答を得た。型枠の使用量の総量削減については79%が必要と認識しているが、実際に取り組んでいるのは1自治体だけと進んでいない実態がわかった。間伐材合板については100円/枚程度の価格差なら70〜80%の自治体が 使用しても良いとしており、同額または10〜20%高なら良いという回答が2自治体であり、環境保護のためのコストアップを少しは受け入れるようになってきている。
 また、パプアの会の松本氏からも環境基本計画等について次のような意見が述べられた。93年に環境基本法ができ、状況が変わったことが認識されるべきである。一般に地球環境問題の認識として先ず地球温暖化、オゾン層、酸性雨などの問題があり、そのあとで森林保全という順になっている。埼玉県の例をあげると94年に基本条例、96年に基本計画を策定し環境配慮方針という更に細かい規定も出来ているが、熱帯林の問題はほとんど入っていない。県レベルで の見直しの際にこれを入れるよう働きかけていくとともに、市町村でも基本方針を策定するところが増えているので、自分の住んでいる市町村に条例等があるか調べること、内容をチェックし骨抜きにならないよう監視していくこと、 熱帯林以外の市民団体と協力して働きかけることなどができると思う。
■「住宅金融公庫におけるキャンペーンの可能性」(パプアの会・辻垣氏)  

 住宅金融公庫に関するキャンペーンは、個人住宅について、ただ熱帯材の使用を削減することだけではなく積極的に国産材の良さを生かしていこうというものである。その理由は、(1)公庫利用が持ち家の55.4%と高いこと、(2)在来工法が減少傾向にあり、2×4工法など合板を多用する工法が増えていること、(3)国産材の自給率が22%と低いこと、(4)日本の林業は人工林で再生のサイクルを守っていること、(5)公庫にはふるさと住宅割増融資や地域優良木造住宅の割増融資(200万円)+利子補給などの制度があるが、東京、神奈川、大阪など住宅が最も多く建設される地域にこの制度がなくキャンペーンの対象と成り得ること、などである。実際には100戸の融資枠のある県でもその利用率は1〜2%と極めて少ない。公庫としては「国産材を50%以上使え」とはWTOの協定との関係があって言えないが、各自治体レベルでは可能で、下地材に合板を使わなくなれば大きな効果がある。

■「学校家具の可能性」(MOK&SCC・尾端氏)  

   学校家具のスチール机の天板、イスなどに熱帯材が使われており自治体キャンペーンと同時にできるキャンペーンとしてテーマにあがっているが、その需要規模を推測し熱帯材削減にどの程度の効果があるものなのかを考えてみた。川崎市では普通教室で注文生産の学校家具を使用している。仕様書を入手したところ、実質的には国産材が使われていることがわかった。鳥取市では県産材を使ったものに対して1/3の補助を出して新設の2校で使用している。製品は県内の業者のカタログから注文している。価格はスチール製の3倍、古くなったものとの交換は平等性を損なうことから出来ないとしている。群馬県でも県産材の使用にたいして補助がある。学校家具の使用量を個人的に試算してみたところ、1学年130万人で小中高で1560万組の学校家具が必要になり、天板はおおよそ1枚0.005立方メ−トルで全体で8万立方メートル、10年で交換するとすれば年間8,000立方メートルで国内の合板需要量の900万立方メートルの0.1%に過ぎない規模となる。このように、学校家具における需要量はそれ程大きいものではなく、また、民間への波及効果も見込み難いため、私たちキャンペーナーの少ない力で取り組むべき課題であるかという疑問もある。しかし、交渉相手が同じ自治体であることから、公共工事に関する交渉時に付け加えて要望していくことは今後も有効なことであろう。


 以上2日間にわたって報告、討論された内容をもとに今後のキャンペーンの方向について話し合った。これまでのキャンペーンに加えて、(1)環境基本計画などの策定時に熱帯林問題を盛りこむ働きかけ、(2)国産材の使用拡大のために公庫への働きかけ、(3)イグナチオ教会のように象徴的な建物をターゲットとした活動、(4)建築物の耐久性の向上や型枠使用量の総量削減、(5)家具キャンペーンの具体化、(6)ロシア材など代替材の動向の把握、(7)マスコミの活用など多角的 なアプローチを行っていく必要性が示された。

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