草の根が見放しつつあるITTO
〜私たちの税金は無駄遣いされていないか?〜

松江和子


 第19回国際熱帯木材理事会(ITTC)が、昨年11月16日〜18日の日程で、横浜市内で開催された。今回のITTCは、熱帯材の生産および資源国20カ国と輸入国22カ国などが参加して行われた。一方、90年代はじめまでは、10をくだらない各国の環境保全団体や先住民族団体などのNGOがITTCにオブザーバーとして参加するのみならず、会場近くに『NGOルーム』と称するさまざまなNGOがITTC期間中の各国の動きや自らの提言について意見交換をしたり、即席の情報誌などを発行するための場所を設けたり、理事会の総会での発言の機会すら与えられるなど積極的に参加していた。しかし、今回は環境保全団体が数団体、先住民族団体からは全く参加がなかった。サラワク・キャンペーン委員会(SCC)も93年第15回ITTCまでは、各国代表が集まる総会で声明を発表する(サラワク・アップデイト18号9ぺージ参照)などして参加してきたが、それ以後今回に至るまで参加していない。なぜ、このように、NGOの参加が激減したのだろうか。
 国連貿易開発会議(UNCTAD)の主催によって、8年以上の国家間の交渉の末、1987年に正式に設立されたのがITTCで、熱帯材の輸出国、資源国と輸入国の協議の場と意志決定機関である。そして、ITTCの指示の下で事務局を担っているのが国際熱帯木材機関(ITTO)である。これらの組織の規約に相当するのが国際熱帯木材協定(ITTA)で、その目的の中に貿易や拡大のみならず、生産者や消費者にとって公平な価格の設定や熱帯林とその遺伝資源の保全もかかげていた。そのためNGOや先住民族団体は設立当初はITTAに積極的に参加し提言していったのである。1990年、91年には、サラワクの先住民族も代表団を送り、横浜で開かれたITTA総会で各国政府代表者のもと発言している。この時、SCCも参加し、輸入国の市民として、先住民族の土地や資源に対する権利を保障することなどを提言している。しかし、ITTOができて何年たっても、熱帯林破壊はとどまるどころか、あちこちで先住民族の人権を侵害しながら進行していった。そこで、1992年10月に、地球の友や世界雨林運動などのNGOが中心となりSCCを含む18の世界のNGOの賛同のもと『ITTOの設立からの5年間に関する評価』を行い、意見書を提出した。この中で、『公正な木材の取引協定を主な役割とすること。』や『熱帯材のみならず、あらゆる種類の木材を協定の対象とし、公平な価格決定、マーケティング、割当の条件の確立を保証すること』などが提案された。これは、ITTOが熱帯林保全のみならず、公平な木材価格のの樹立すらできなかったばかりか、ボリビア、チマネス・プロジェクトでそこに住んでいた先住民族と全く協議を行わないままプロジェクトをはじめたり,ITTCで決議されたことが『…するように呼びかける』といったように、拘束力のない表現で、その決議に対して次回のITTCで評価されたことがほとんどないなど、ITTOの在り方や力量そのものに対してNGO側が不信感を抱かざるをえなかったことが背景にある。多種多様な目的をかかげて何も達成できないで終わるのではなく、環境や人権に配慮しつつ、せめて公平な木材貿易をできるだけ早く達成することを提案したのである。そして熱帯材のみを対象にしていたのでは、その生産国が第三世界に集中するため南の国からは不公正な環境テロだと言われている。そもそも、熱帯材の価格はそれだけで決まるのではなく、温帯材や寒帯材とも互いに影響しあうものであるから、公平な木材価格はあらゆる木材を対象にしなくては確立できるはずがない。
 あれからまる3年たった今年のITTCで、NGOの提言は少しでもITTOへ届いたであろうか。熱帯林破壊のスピードは加速する一方である。貴重であるはずの熱帯材が安いからこそ、日本ではいまでも使い捨てのコンクリート形成用の型枠として利用することができる。相変わらず熱帯材のみを対象として西暦2000までに持続可能な森林経営が行われている木材のみを貿易対象とするための各国(生産国7、消費国10)からの中間報告があったが、具体的な方策のための合意には達さなかった。5年前から多くのNGOが2000年目標では遅すぎると提言していたにもかかわらず、今だに2000年目標実現のための具体的な青写真すら描けていないのはどうしたことだろう。多くのNGOがITTOに期待するのをやめ、国連持続可能な開発委員会(CSD)などITTO以外の国際舞台や直接各国政府や自治体、市民に働きかけることに力をいれている理由はここにある。
 最後に、神奈川県、横浜市、および日本政府は、ITTOへ資金提供しており、財政面では日本市民の税金がITTOに一番貢献している。このまま私たちは黙って納税だけしていればよいのだろうか?ITTCでの投票権は熱帯材の輸入量または輸出量と資源量に応じて加盟国に与えられているため日本が一番多くの投票権をもっている。にもかかわらず、ITTOへの日本の市民の関心が決して高いとは言えないのは、なぜだろうか。いずれにせよ、熱帯林保全や破壊に対して日本政府と市民が大きな影響力をもっていることには間違いないのではないだろうか。

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