5.私たちにできること<提言> ←目次 ホーム↑
これまで、家具をとりまく現状をみてきた。これに対して、私たちにできることはどのようなことがあるだろうか。まず、大量消費、大量廃棄の生活スタイルを改め、更に、利用する材料を環境に配慮したものに替えていく必要があるだろう。この章では、製造者、業界団体、国、消費者がそれぞれできることを考えてみる。
(1)製造者が利用する材料を替える
a)管理された森林から得られた木材の利用
1章でみたとおり、家具の材料の約3分の2は熱帯材である。熱帯地域の森林伐採のほとんどは原生林のもので、森林管理の方法は確立しておらず、行われてもいない。また、ロシア(シベリア)や北米大陸(アメリカ、カナダ)の北西部などでも原生林や自然林の破壊が問題になっている。これらの地域から伐採された木材は、森林の管理、再生に必要なコストを無視した安い価格で取引されている。また、外材には防虫剤、白蟻駆除剤、防腐剤、CCA注入剤(ヒ素、クロム、銅)くん蒸処理の臭化メチルなど人体への有害物質が含まれているものもある。
生態系を維持する立場からは、原生林や自然林を伐採するだけの木材は利用せずに、適切に管理された森林の木材を利用することが望ましい。この点、国内の植林地では概して持続的な林業を営んできた。また、地元で生産されたものであれば、保存のための化学物質を使用する必要もなく、伐採の過程で、地元の住民の意思を反映したものであるかどうかや、原生林や雑木林の伐採で貴重な種の生息地や生態系を破壊してはいないか、再生産のための植林や間伐など森林管理が適切になされているかどうかを消費者自身が確かめることができる。伐採の問題を海外におしつけることもなくなる。以上のことを考えると、管理の行き届いた森林から得られた国産材を積極的に利用することが好ましいことであると言えないだろうか。元来、日本も木材の輸入を自由化するまでは国内で生産された木材を使ってきたはずである。
家具には、一般に広葉樹が好まれるようだが、植林されたスギやマツなどの針葉樹の利用はできないだろうか。針葉樹は、合板にすると反り易いとか狂い易いという評価もあるようだが、アメリカやカナダでは針葉樹の合板しかない。日本でも、カラマツ、アカマツ、スギ、エゾマツなどの国産材による針葉樹合板が生産されている。このうち、スギやカラマツなどは、植林木としての蓄積も多く、持続可能な管理、生産が可能なものである。
集成材は小径木なども利用でき、代替材になる可能性があるのではないだろうか。近年、森林組合や林業を基幹産業とする町村で、スギやヒノキの集成材の生産が取り組まれている。間伐材を利用した台形集成材工場も、森林組合を中心に11ある。林野庁も国産材の加工場設立を支援している。
間伐材の利用は、資源の有効利用と言える。利用できるものは、できるだけ利用していきたい。林業白書(平成5年度)によると、国内森林の約7割を占める民有林における間伐材積は394万m3で、このうち47%の187万m3が未利用のままである。しかし、このうち利用可能なものがどれだけあるかは不明である。また、細い木材を加工するのに手間がかかるため、必ずしも安くはならないという話も聞く。
ゴムノキはどうだろうか?ゴムノキは樹液の分泌が終わる30年で更新され、、マレーシアのゴム園では毎年900m3が伐採され、5割強が燃材として利用されている。木材加工場に利用されるのは1割に満たない(「木材の知識」)。しかし、量は少なく、日本がすべて利用できるものでもないだろう。
木材は基本的には再生可能な資源で、化学製品と異なり生産の過程でもエネルギー消費量が少なく、人体への有害物質も出さない。土に還るのでごみ問題の観点からも好ましく、炭素を固定する機能もあるので、乱伐したり大量消費、廃棄したりさえしなければ、環境面では非常にすぐれものと言えよう。適切な利用の仕方を考えたいものである。
b)パーティクルボード、繊維板の利用
合板の家具への利用は椅子やテーブル・デスク類から収納家具まで多岐にわたっている。その中でもっとも多いのが収納家具でシステムキッチンなどの設備機器への利用も考えると相当量になる。収納家具用としてはフラッシュパネルの表板、裏板、框(かまち)組の鏡板、箱組の背板や仕切板など広面積の部位である。その他にも引出し部材、棚板などに使われている。
これらの合板のほとんどは木質ボード(パーティクルボード、繊維板)におきかえることが可能であり、すでに使われている。木質ボードだけでなくその二次加工品としてパーティクルボードの表面に合板や合成樹脂浸透紙を張ったりして使われていることも多い。欧州では合板よりもパーティクルボードの利用が多い。
木質ボードの原材料は100%がリサイクル資源であるらしい。合板、製材工場からの残廃材、紙パルプにならない低質チップ、間伐材や解体建物からの廃材などを利用している。現在こうした廃木材は3,000万m3/年と推定され、このうち4割近くが焼却、廃棄されている(日本繊維板工業会資料)。確かに未利用で廃棄される木材の利用はすばらしい。あくまで国産の間伐材や国内で発生する廃棄材を利用するならば良いと思う。しかし木質ボードの需要が増えて丸太から作るとか、輸入チップの方が安いとか、海外から間伐材を買うとかいうことになってくるとどうだろう?実際に、1993年のマレーシア・サバ州の輸出規制で合板価格が急騰したのを契機に、フラッシュパネルの替わりにパーティクルボードを利用するなど、パーティクルボードの需要が急ピッチで増えている。それに合わせてインドネシア、マレーシアなどからのパーティクルボードの輸入量が急増している。もともと合板だって細い丸太から広面積の板をとる工夫から始まったのだ。パーティクルボードの方が合板より歩留りが高いからと言って丸太から作ったとしても、合板より資源の有効利用ということになるのだろうか?そもそも大量の残廃材が出ること自体がよろしくないのだが、たぶん原料の安定供給が実現しないと木質ボードの価格が下らないのだろう。ただの大量リサイクルになってしまったら困る。
パーティクルボード、MDFは合板と同様に接着剤からホルマリンを放出する。JISによってその放出レベルが3段階に決められているが、室内に多くの合板、パーティクルボード、MDFがあれば総量としてのホルマリンの放出量はかなり高くなる危険がある。製造過程でのエネルギー消費や、大量に生産される接着剤の害はどうだろうか?これらは合板でも同じだが、チェックを忘れてはならない項目だ。
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接着剤から発生するホルマリンの問題 合板に使用された接着剤の量は48万 t、木質ボード(パーティクルボード、繊維板)に使用された接着剤の量は、合計16万tであった(木材需給報告書、窯業・建材統計年報)。どちらも1m3あたり80sが使用された計算になり、単純に比較すると単位体積当たりの使用量は合板も木質ボードも同じのようである。 ホルマリン濃度と知覚状況
(労働科学叢書・25・多田 治) 合板、集成材などの接着剤として使われる熱硬化性の樹脂から検出されるホルムアルデヒド(これを水に溶かしたのがホルマリン)は、国立がん研究所ではグループ2Aの発癌物質に指定されており、肝臓癌、前立腺癌、ぼうこう癌、脳腫瘍などが報告されている。また、かぶれやぜんそくを強くすることがわかっている。近年では合板を使った新築住宅の入居者から、「目がしみて充血する」「のどがひりひりする」などの苦情も出ている。 |
耐久性に関してはどうだろう。寸法の狂いはほとんどないであろう。しかし木ねじ保持力が弱いなど接合部位に弱点がある。吸湿による問題。強度がそれほどでもないのでたわむなどの変形がある。傷やシールをはがした後の汚れなどを塗装し直して補修することができない。また、使いこむと良くなるとは思えない。飽きがこないとも思えない。愛着をもてるとも思えない。問題点は多いようだ。
デザインの面ではどうだろう。新品ではかなり良いかもしれない。しかし古くなると、味があるというよりただ薄汚れたふうになってしまう。質感が劣るというのだろうか。パーティクルボード、繊維板そのものには面取りやレリーフ(装飾のための表面加工)などの細工はできない。フラットな仕上りでシンプルだが、没個性の大量生産品であるとも言える。しかし、無垢材や集成材と組み合わせると、デザイン・バリエーションがぐんと増す。また、壊れた部分だけ取り替え可能なシステムがあるとよい。DIY(Do
It Yourse1f)ショップで部品別に買うことができて加工が簡単なら自分でも修理できる。また部品の組合せで自分で作ることができれば楽しい。いずれにしても、できあいの安物の大量生産はよろしくない。大切に使う気にさせる家具を作ることが大事ではないだろうか。
ところで、家具メーカーは中小が多いので、代替材料の研究が難しいという声も聞いた。この点、国や自治体からの支援はできないものだろうか。
(2)表示制度等を改善する
家具の材料にどんな木材を利用しているかを表示することは、消費者が選択するための重要な要素である。しかし、現在の家庭用品品質表示法による品質表示は、消費者が選ぶ際の十分な判断材料になっていない。現在の問題点は、棚類やベッドなどに表示義務がないこと、材料の記載対象が表面材のみで心材の材料がわからないこと、「天然木」や「天然木合板」などの記載だけでは樹種がわからないこと、材料の生産地がわからないことである。例えば、材料に合板が使われていても表面につき板が張られていれば、表示は「天然木」になってしまう。このため、消費者が環境や地元の住民の人権に配慮して生産されたものかどうかを判断する指標にはなっていない。流通が地球規模になり、森林管理のためのコストを無視した不合理に安い木材が流通している現在、商品に用いられている材料に対して消費者が責任を持つ意味でも、早急な改善が望まれる。
また、ホルマリン放出量についての表示も必要であろう。これらの化学物質に過敏な反応を示す人もいる。
家具担当: 通商産業省生活産業局日用品課 03-3501-1705
品質表示法担当: 通商産業省産業政策局消費経済課 03-3501-1905
広く一般の消費者にもわかりやすく訴える方法として、エコマークの表示は環境面でより適切な商品の流通を促進するためのひとつの方法であろう。現在、家具などの木製品に対して、エコマークは間伐材や小径木材を利用したもの、および、廃木材を加工再生したものにしか認定されていない。これらは確かに木材の有効利用であり、その普及は好ましいものであるが、副産物の利用であることから、必然的に材料の量は限られている。実際、エコマークに認定されている商品はごく少数で、消費者に選択肢を与えるに至っていないことが大きな問題点である。
付録の「代替資源に関する原則」に示したような、生態系を破壊せず、住民の承諾が得られ、資源管理が地元住民に委ねられているなどの条件を満たしている森林から得られた木材や、成長量以下の伐採による木材などは、生態系破壊を招いたり、住民が反対したり、適切な資源管理のされていない伐採による木材とは区別すべきであろう。エコマークもこのような考え方を参考にした認定方法を検討してはどうだろうか。
また、マークの有無だけでは、マークの認定内容がわからないという大きな欠点がある。エコマークにはマークの下の部分に決められた環境保全上の効果を表す文字を記すことになっている。間伐材や小径木材を利用したものの場合は「木の活用」と記すことになっている。消費者にわかりやす/するために、この記載はより具体的に記載する必要があるだろう。
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エコマークの基準と審査
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消費者が独自に外見で判断する方法は一概に難しいが、いくつかの留意点はあげられる。例えば、たんすやテーブルなどは、材料が中空であればフラッシュパネルが用いられていることがわかる。表面に極薄の化粧板が張られていたり、プリント加工されている場合が多いので、心材の材料に何が使われているかを気をつける必要がある。食卓テーブルなどの甲板には集成材が用いられているものがよく見かけられる。表面に数cm幅のいくつもの平行線が走っていることで見分けられる。
2章でもふれたとおり、家具メーカーには小規模なものが多い。製造者が直接販売しているところならば、使っている材料について詳しく聞くことができるだろう。
| 家具の手入れと補修
塗装されていない家具 |
(3)消費者が長持ちする家具を選ぶ、家具を長く使う
家具を選ぶときに、どのような樹種、材料を使っているかを調べるほかに、構造の弱いもの(特に棚類)などは選ばないとか、引っ越しの時に捨てられ易いものは買わないなどに気をつけたらどうだろうか。壊れない、そうじがしやすい、修理しやすい、愛着をもてることなどが、長持ちする家具の条件ではないだろうか。
古い家具にはしっかりしたものが多く、手入れ次第で長く使うことができる。自然の汚れなら、かえって風格を感じさせることもある。
今後、有用な木材資源が減少していくことを考えれば、捨てない、長く大事に使う、修理して使う、安易に買わないなどの基本的姿勢を持つことや、消費自体を考え直すことが大切なのではないだろうか。
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住まいの間取りと家具 「造付け家具にすると熱帯材の使用は減らないだろうか?中だけ作ればいいのだから側板、背板、天板、底板つまりまわりの構造材が節約できて材料(熱帯材)の使用量が減るのではないか?」というテーマを頂いた。たいていの場合、造付け家具の設置は、あらかじめふつうの置き家具のような箱物をつくってきて所定の場所に置き、建物とのすきまをフィラーという細い板でふさぐという方法をとる。そうすると置き家具と同じかそれ以上の量の材料を使ってしまう。材料も熱帯材合板がとても多い。残念ながらこの質問には「否」と答えるしかない。しかし「造付け家具って何だろう」と考えていたら、住まいの間取りと家具、暮らしぶりの関係が少し見えてきた。 |
(4)リサイクル家具を利用する
捨てないことの方が大事なのは論ずるまでもないが、リサイクル家具の利用もひとつの方法であろう。リサイクル施設の建設は全国に広まっている。役所の清掃局などに問い合わせてみよう。また、役所の不用品交換の掲示板を利用することもできる。リサイクルに出す場合は、受け取る側の気持ちになって出すことも考えたい。
| 戦前日本の住まいは和室中心だった。当然暮らしも和風だし、家具も和家具がほとんどだった。お父さんが気張って買った書斎用の机と椅子も洋間がないので、縁側などに置かれていた。もちろん家は簡単には建て直せない。多少裕福な家は玄関脇に洋間を増築して接客用に使っていた。戦後大破した都会では皮肉にも日本の住まいはいきなりゼロから出発するチャンスを得た。生活改善の為のスローガンとして「食寝分離」が提唱されテーブル・イスで食事をするダイニングキッチン(DK)が登場した。しかし当時は手ごろな値段のダイニングセットがなく公団のDKにはテーブルとイスが付いていた。その後DKは一戸建てにも広がり洋家具の需要が増し、比較的安価な家具もでまわるようになった。安い熱帯材の合板の大量生産がそれを実現した。住宅面積が広くなってくると個室を持つことが可能になった。「プライバシーの確保」も大事な目標だった。あこがれのベッドで寝ることもできる。自分の椅子や机、たんす、物も増え収納家具も欲しくなった。暮らしは椅子座中心の洋風になり、住まいの中の家具も増えていった。 しかしなぜか和室は消えてなくならなかった。接客空間として復活している。床の間も押入もしっかりある。戦前とは逆に洋の暮らしをして和でもてなす。和室はよそゆきになってしまったが、家の中で靴を脱ぐことは依然変わらないし、こればかりは変わるとも思えない。狭いシングルベッドの上よりも畳の上で大の字で寝る心地よさは捨て難い。最近ダイニングセットの高さが以前より低めになった。天井があまり高くない日本の家、畳の部屋との相性からいっても椅子は低めの方が落ち着く。洋の家具が日本の住まいにいくらかなじんできたようだ。住まいの間取りと家具と暮らし方は後になり先になり共に変化してきた。これからも変わり続けるだろうが、3歩進んで2歩さがり、時には5歩ぐらいさがってみながらいくのがちょうどいいのではないだろうか。 |