【事例:住宅メーカー編】

 ここでは大手住宅メーカー2社に、熱帯材使用の現状やここ10年間ほどの推移、そして建設廃棄物処理などについて取材しました。2社とは、三井ホームと、住友林業。  三井ホームは、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)による住宅建設のトップメーカー。住友林業は在来軸組工法による住宅建設の大手メーカーです。

1. 90年代、熱帯材合板の使用が大幅に減った

 ツーバイフォー工法はアメリカから導入された住宅工法で、面で支える構造が特徴です。「ツーバイフォーでは全ての面が合板でできており、住む人は合板に囲まれて暮らしていると言えましょう」──94年版の住宅冊子には、この工法についてそう記してあります。  さて、同社の家づくりではどんな材を使い、また近年、何か変化はあったのでしょうか。三井ホーム資材部(構造躯体用材担当)の尾原千博さんに、お話をうかがいました。  構造躯体材のうち、合板を使う部分は、大雑把に言えば「床・壁・屋根」となります。「そのうち、今も熱帯材合板を使うのは、床だけ。以前は壁と屋根にも使っていましたが、既に針葉樹合板やOSB*に代替しました」  同社の構造躯体材(壁・屋根、床材の合計)の中で熱帯産材の占める比率は,約26.5%(98年)、つまり4分の1です。そのほかは、「大体20%がロシア材原料の合板、30%ほどがカナダ産の合板、20%ほどがカナダ産OSBといった割合でしょうか」と尾原さん。  8年前の90年には、構造躯体材の43.3%が熱帯産の材だったそうで、それが半減した形になります。時代をさらに遡れば、同社が針葉樹合板を使い始めたのは1980年前後。「それ以前は、構造躯体用に使う合板は100%、いわゆるラワン合板だったと思いますよ」

2. 環境への配慮と、コスト要因

 さて、ではなぜ三井ホームでは、熱帯材からカナダやロシアの針葉樹へ、合板原料を変換してきたのでしょうか。尾原さんによれば、「熱帯材に比べれば温帯針葉樹のほうが再生産が容易ということで、より環境にやさしいと思われる素材への切り替えを進めた」ことと、「コスト的な要因」の2つが主要因とか。  三井ホームのような住宅メーカーにとって、熱帯材には、今後の供給の安定性に不安があります。一方、国産の針葉樹合板(原料はロシア材など)は90年代に入り生産量も増え、価格も昨今はラワン合板に比べて若干安く、消費もかなり伸びました。三井ホームの原料転換も、この流れに位置づけられるようです。

3. 蓄積が進む、針葉樹合板使用のノウハウ

 ラワン合板は、針葉樹合板に比べて表面が平滑なことは、広く知られています。三井ホームの構造躯体材のうち、壁にだけは今も熱帯材合板を使う理由も、客の足に直に触れる床は「平滑性への要求が特に高いから」。床材の針葉樹合板の上にフローリングを敷くと、合板表面に節があるため、ときに段差ができてしまうことも。合板表面の節の存在は、ラワン合板にはない、針葉樹合板の特徴です。「建設途中で現場を見に来るお客様の中には、合板に節があることを気にされる方が、割とおられます。たとえその合板が、工事が終われば壁の中に入って見えなくなる部分でもね。これは、日本人の特殊性かなと私は思うんですよ。合板には節がないという思い込みはね」  また、業界で「壁倍率」と呼ばれる面材としての強度が、ラワン合板は針葉樹合板よりもやや強く、そのため細長い敷地など条件の厳しい立地の場合、壁面に使う合板の種類によって設計が若干左右されることもあるとか。  それでもラワン合板は今後、特別の用途にしか使わぬ方向になるのではと尾原さんは言います。針葉樹合板利用のノウハウも既に蓄積され、「ラワンでなければ困る」部分は、構造躯体に限ればほとんどないとのことです。  以上は、構造躯体材の話。一方、同社の内装材を担当する資材部の小宮茂年さんは、「アバウトに言えば、内装材の5割近くは、熱帯産材を使っているのでは」と話されます。使う場所は、例えばドア枠、床と壁の間の巾木、出窓のカウンター材など。  内装材の場合、コストを下げるために、客の目に触れない部分は木材からMDF*など工業製品的なものに代替させてきた経緯があるそうです。しかしその一方で、客の目に直に触れる部分には、以前にも増して昨今こそ「木のホンモノ感」が求められるようになってきた面もある。その中で、熱帯材を使うか他の材を使うかは、木の適性と同時に、やはり市場価格をにらみながら決めてきたと小宮さんは言います。

2F床に使われている熱帯材合板

4. 2×4工法の寿命とは?

 木材をはじめ多様な資源を大量に使って建てられる住宅が、一体、何年もつのか。昨今の建設廃棄物問題を見るにつけ、住宅の寿命の長さは、環境を守るうえで大切な要素です。「アメリカでは、築70年とか80年という住宅は珍しくありません。三井ホームは、基本的にはそれと同じ工法で建てていますから、基礎がしっかりしていて湿気などの条件がよければ、日本でもそのぐらいもつと思います」と、同社の小宮さんは話します。一方、同社の尾原さんは「個人的には100年はもつんじゃないかと思います」と、自信のほどを。  三井ホームは今年、創立25周年。日本の風土でこの工法の住宅がどこまで延命するかは、これから試されるところです。もちろん日米の住宅寿命の差は単に風土の差のみならず、アメリカでは建物の資産価値を見るのに対し、日本では古い建物への価値評価が低いという社会的な仕組みの違いもあり、それで日本の建物の寿命が短い側面もあるのですが。

5. 建設廃棄物の処理

 一方、新築現場および新改築にともなう解体現場で生じる建設廃棄物の処理に関しては、環境対策室長の高畠保彦さんに伺いました。  三井ホームでは現場で出る廃棄物の6種類(石膏ボード、木くず、廃プラスチック、紙くず、金属くず、その他)の分別を、昨年6月から始めました。こうした分別の後、例えば木くずの場合、梁や柱などの優良な木くずであれば、上質チップとなり製紙原料やパーチクルボード原料に回されます。合板のチップは低質とされ、ボイラー燃料に使われます。  98年度、東京都で三井ホームが自社調査したデータによれば、同社が都内で1年間に新築・解体現場で排出した廃棄物のうち、コンクリートがら5千余トンの99%、木くず3千余トンの9割が何らかの形でリサイクルに回されました(ただし木くずは、燃料として使われたものも含まれています)。  北海道から九州まで、同社の現場は全国に散らばります。それらの現場から出た廃棄物を運び込む中間処理業者は、毎年1回、同社各支店の社員が訪問し、処理状況を調べます。  さらには最終処分場のほうも、同社では抜き打ちで調査に行っているそうです。こちらは、頻度は決まっていません。「特に今はダイオキシン問題が深刻ですから、焼却設備などが妥当でない業者さんは、契約を中断したケースもありました」と高畠さん。  三井ホームでは社内の廃棄物処理規定として、以上のような適性処理ルートの確認と、中間処理業者の建設費用の支援、そして廃棄物の排出量自体を減らすことを決めています。排出量は、平成9年度と比べて20年度には2割減を目標に置き、梱包材を減らしたり、あるいは新築現場で出てくる石膏ボードの端材を石膏ボードメーカーに回してリサイクルするといったことを進めているそうです。石膏ボードは99年、従来の安定型処理物から管理型処理物に法律改正されたため、処理費が高くなり、リサイクル化が目されています。「燃やしてはいけないというダイオキシン対策の問題と、埋める場所はもうないという現状の双方が、廃棄物処理の値段を釣り上げています。下手をすれば不法投棄はどんどん増えるという危険な時代に入っています」と高畠さんは現状を語ります。「その中で私たち排出業者としては、処理業者を選ぶこと、さらには複雑に素材が絡んだような部材はなるだけ使用を減らす方向を考えています。表面にプラスチックを貼った木などは、最終的に燃やすしかないのでね」  そして何より、長く使える家を作ることが大切──と高畠さんはまとめてくれました。

6. 住友林業も、熱帯材から針葉樹に合板原料を転換

 次は、在来軸組工法の大手メーカー、住友林業です。広報部の青木宝さんと、グリーン環境室の土井望さんにお話を伺いました。  在来軸組工法とは、柱と梁で家を支える工法で、日本の伝統的な住宅工法をもとにした家の建て方です。青木さんによると、一軒の家の建設に使う木材の約3分の2は構造材で、その部分には熱帯材は使われていません。 「もともとラワンは、限られた場所にしか使われていませんでした。使われているのは、下地としての合板の部分です。ただ、壁の下地も最近では石膏ボードに代替されています。手すりをつけるなど下地に強度が必要な場所に限って、今も合板を使います」と青木さん。同じく、押入れには一部、今も熱帯材合板を使っているとか。「ただ、押入れにも、温帯広葉樹で表面が平滑なシナ材合板に代替した場合もあります」  床の下地や屋根の野地板には、かつては熱帯材合板が使われていましたが、今は針葉樹合板を使っているそうです。「熱帯材合板から針葉樹合板への転換は、大体95年ごろから。品質的に大丈夫な部位から、替えてきました。表面の平滑性が必要な部位は、今も熱帯材合板を使っているのです」と土居さん。土居さんによれば、住友林業が少しずつ針葉樹合板に転換してきたのは、「ひとつには針葉樹合板のコストが手頃になってきて品質もよくなったこと。本当は品質でいえば熱帯材合板のほうがいいのだが、環境面に配慮して、転換してきた」とのことです。  また同社が使う針葉樹合板には、一部、ロシア材のものもあると思われるけれども、「基本的にはドイツ、オーストリアなどヨーロッパのものを取り上げていきたいと思っている」と土居さんは言います。  現在、住友林業が建てる住宅の柱の9割ほどは、集成材が使われています。ヨーロッパやカナダ製の、5枚の板を貼り合わせたような集成材で、小径木から高精度・高強度の木を作れるメリットがあるそうです。  一方、廃棄物処理については住友林業の場合、川崎製鉄と共同で、ガス化溶融炉を使った建設廃棄物のガス化処理実験を、99年に始めました。これは、リサイクルが困難な廃棄物を高温で処理し、燃料ガスやスラグ、メタル、混合塩、再利用水などにする技術で、ダイオキシン発生もほぼゼロだといいます。  同社の現場で排出される金属、コンクリートなどのリサイクル率は「9割以上」、木質廃棄物のリサイクル率は燃料化も含めて「ざっくり8割ぐらい」で、木質廃棄物のリサイクル率は今後、100%にしたいと土居さん。  排出事業者責任が厳格になってゆく中、建設各社とも模索が続いているようです。

7. 熱帯材合板から針葉樹合板へ、その先の問題

 以上、三井ホームと住友林業という、住宅大手メーカー2社の話を伺って感じられるのは、小さな成果と、大きな課題といったところでしょうか。  SCCを含め、市民の行動によって、熱帯林破壊の問題性は日本の人びとにかなり広く認識されるようになりました。両社の話からも、その成果が感じられます。  しかし、企業が材を熱帯材から他の原料に替えているのは、必ずしも環境への配慮が第一要因ではありません。熱帯材の供給が先細りで、コスト的に必ずしも安くなくなったことが、代替をうながしている面が強いという様子も、両社の話からは窺えました。 環境的に問題が指摘されるロシア材の使用が増えている点を見ても、熱帯材使用量の削減と、私たちのライフスタイルの見直しとは、まだ直結しているとはいいがたいようです。  それでも企業が取材に応じ、情報を開いてくれることに、新しい芽はある。そんな印象を、両社のお話からは感じました。

欄外註

*OSB(Oriented Strand Board) パーティクルボードの一種で、木片(フレーク)を方向性をつけて圧接成形するボード。1970年代半ばから針葉樹合板の競合材料として登場し、北米ではは合板をしのぐ構造材料になると見込まれている。
*MDF(Medium Density Fiber Board) パーティクルボードの一種。木材の繊維をくずして、それをまた固め直したもの。小径木などを原料とする。