コラム:アメリカ住宅事情

アメリカでは建て替えないで住み替えている

以前、京都に住んでいたとき、「町屋」を中心とする伝統的な町並みがビルやマンションの谷間で汲々としている様子にやるせなさを感じました。懐かしい街角を2,3年ぶりに訪ねて見ると、まるで別の場所のように様変わりしているのも、東京では当たり前のこととなっています。日本の家屋はどうしてこんなに頻繁に建て替えられるのか、考えさせられます。

一昨年、二十年ぶりにロスから南100キロほどのラグに・ビーチに、祖父母の昔の家を訪ねました。子供のころは夏休みに、よく遊びに行き、海水浴の後、芝生のホースで砂を洗い落としたものでした。今は知らない人が住んでいますが、庭も家も昔のまま残っていました。祖父が亡くなった後、叔父が家を相続し、売って職場近くの家を買いました。退職後はまた家を売り、シアトル郊外に別の家を買い、自然の中の生活を楽しんでいます。

このようにアメリカでは、家は一生済み続ける「城」というよりは、運用する「資産」の性格が強く、ライフステージに応じて住み替えるのが一般的です。30年ローンを組んで家を購入する人も、返済途中で何度もローンを乗り換え、家を売って別の家を買います。住宅ローンの返済に費やしたお金(エクイティーと呼ばれる)をかなり自由に運用できるのです。古くなって傷んできた家を安く買い、日曜大工できれいにリフォームして高く転売する人もいます。また、家を売ったお金で終身ケアが受けられるコミュニティや施設に自分から入る高齢者も少なくありません。貯蓄率の低いアメリカでは、家のエクイティが何よりの「転ばぬ先の杖」なのです。家を転売しても資産価値が下がらないこと、資本利得税(キャピタル・ゲイン税)が安いこと、税制・制度面で家を資産として運用しやすいことなど、いろいろな要因が考えられます。土地や家への愛着がなくてそっけない感じもしますが、アメリカの特に都市部の流動的な雇用・生活形態にあったシステムといえます。

日本でマイホームを夢見る人は、今でも「一生住む家」へのこだわり、思い入れがとても強いという印象を受けます。しかし、単身赴任で家族が長年引き裂かれる状況などを考えれば、生活パターンと必ずしも合わなくなってきている面もあるのではないでしょうか。また、裏付けるデータが手元にありませんが、日本では、住居の新規購入は、(建売、注文住宅を含め)新築が大半だという気がします。他人が住んだ家を借りることはあっても、買うことは少ないのではないでしょうか。もともと、中古住宅が長持ちしないということもあるでしょうが、日本的な「清浄感」という文化的な要因も関係しているような気がします。

もう一つ、日米で大きく違うのは相続税です。アメリカの相続税は最高でも40%で一般的にかなり緩やかですが、日本の相続税は20-70%で累進性も強く、(主に地価が)高価な家ほど、壊して土地を売らないと税金が払えなくなります。この高い相続税は、貧富の格差をなくし、実質的な平等を実現した戦後日本の特徴的な制度ですが、残念ながら、家を壊して建て直す早いサイクルに拍車をかけているように思われます。

日本の住居・建築の建て替えサイクルが平均25年と極端に短いのは、湿気の多さ、増改築のしにくい建て方、耐久性のない建材、土地の狭さなどの物理的な要因のほか、以上のような様々な制度的な要因とも関係しています。今後、調査が必要です。アメリカの「ヤドカリ的」住まい方にも問題はあるかもしれませんが、日本でも「建て替えずに住み替える」ための、より柔軟な制度が整えば、生活にも森林にもプラスになるような気がします。

トム・エドワードソン(SCC運営委員)