ここではフライトシミュレーターとゲームの違い、それにフライトシミュレーターをやるときに知っておいた方がよい機能や用語について簡単に解説します。初心者の方はここを読んでから各レビューを読むと、いっそう理解しやすくなるでしょう。
この後のレビューで点数化した評価項目は「グラフィック」「描画スピード」「シミュレーター度」「総合評価」の4つです。それぞれ5点満点です。
フライトシミュレーターの中身、力学的にどこまでシミュレートしているのかという点は公開されていません。また、グラフィックの優劣や描画スピードを公平に測る方法もありません。そこで、執筆者各人が「かん」「好み」で点数をつけています。結構アバウトってことです(^^; 「思い入れ」で点数が高くなっていたり、逆に「嫌いだから」点数が低くなっていたりする場合もあります。しかし、けして不正確というわけではありません。なぜその点数になったか、理由を明記してありますので、よくお読みください。
検索はいつでも「コマンド+F」でできますので、評価を読んでいてわからない言葉が出てきたら検索してみてください。
なぜこれらの点を評価項目としたのかは、この後の文章をお読みください。
フライトシミュレーターとゲーム
ゲームの世界からシミュレーターの世界に入ってくると、かなりとまどうことになります。たとえば、ゲーム感覚では上に上がりたいときには上のキー、テンキーなら8キーを押すと思います。ところが、フライトシミュレーターで8のキーを押すと、逆に下がってしまいます。
「なんじゃこりゃあ!」と叫ぶのは、ま、最初はこのあたりでしょう。たぶん。
なぜこうなるかというと、フライトシミュレーターでは現実をシミュレートしているからで、8キーは操縦桿を前方へ倒す、つまり機首を下げる動作だからです(なお、どのフライトシミュレーターもテンキーは操縦桿かというと、そうではないです。念のため)。
フライトシミュレーターは難しい、マニアックだ、変態のやることだ、お前なんか友達じゃないといわれるゆえんは、「現実をシミュレート」している点にあります。現実の飛行機がスイッチを入れてすぐ飛んで……なんてことはあるわけがなく、エンジンをかけ、エンジンオイル、マグネットのテスト、舵翼のテストを終え、タキシングで位置につき、天候と機体重量、滑走路の長さを考えてフラップを出すかどうか決め、フラップをセットしたらスロットルを開けてV1(機首上げ開始速度)に達するのを待ち、上昇計・高度計・対気速度計をモニターしながら機首をそっとあげて離陸し、ギアを引っ込め、V2(安全上昇速度)でフラップをクリーンにして予定高度まで上昇し……。
覚えなくてはならないキー操作はたくさんあります。航空力学の基本を理解していないと、離陸・着陸もままなりません。なぜかというと、現実の操縦がそうだからです。
フライトシミュレーターとゲームの最大の違いは「飛べりゃいいじゃん」なのか、「現実そっくりに飛行機を飛ばしたい」なのか、ということです。ゲームなら操作が難しかったら誰もやらないでしょう。しかし、シミュレーターはもう一つの現実です。現実に向かって「難しすぎる」と文句を言っても通用しません。それはちょうど「つらいんだよ、俺だって」とか「あの部長はなんにもわかっちゃいない!」とかいうのと同じで、気は晴れるかもしれませんが、そんなことでは現実は揺るぎもしません。つらくてもがんばらなくてはいけないし、部長は根気よく説得しなくてはなりません。それがフライトシミュレーターです。
え〜と、これだとシミュレーターなんかやりたくないという人ばかりになりそうですが、魚心あれば水心(?)。どこまで現実をシミュレートするかというのは各ソフトによって異なっており、ごく簡略化された、ゲームに近いシミュレーターも存在しますので、初心者はそこから入るのがいいでしょう。
え? どれが簡単なのかって? そういう方のためにこの「Flight
Review」を作ったのです。各ソフトのレビューを参考に、自分で選びましょう。
それに、一度基礎を理解してしまえば、後は機体(ソフト)によって操縦の癖があるだけで、基本的には同じです。最初の壁を越えられるかどうかがフライトシミュレーターを続けられるかどうかのポイントになるでしょう。一人でつまってしまったら、「推薦図書」を参考にするとよいです。HPCJに入会するのも効果があります。
レビューでは、シミュレーター度として、どのくらいリアルな飛行が再現できているかを評価項目の一つとして取り上げました。
描画方式(グラフィック)と描画スピード
フライトシミュレーターはもう一つの現実だと書きましたが、ではどこまで仮想現実の「見た目」にリアリティがあるのでしょうか? ざっと描画についておさらいしましょう。
MACのフライトシミュレーターは「MicroSoft Flight Simulator」に始まりました。もともと「MicroSoft
Flight Simulator」はApple ll用に作られ、それがMACに移植されました。この時すでにワイヤーフレームを脱却し、ポリゴンであったことは驚きです。
フライトシミュレーターは対気速度、運動角、迎角などを元に、計算します。さらに外の景色(他の飛行機、山、建物など)がどう見えるのか計算し、画面上に描きます。計算の量は膨大で、特に、ある視点から外の景色がどう見えるかという計算はかなりCPUパワーを喰うようです。
そこで、CPUが非力な時代には、外の景色を描くのに最も計算量が少なくてすむ描画方式、ワイヤーフレームを採用していました。これは、建物なら建物、山なら山で、その物体の輪郭線だけを描く手法です。たいていの場合モノクロで、カラーなど考えるべくもありません。カラーにするとそれだけCPUパワーが喰われるからです。
1枚の絵を描くだけならいいのですが、フライトシミュレーターでは飛行機は常に動いています。当然、動いて見えるほど画面の書き換えが速くなくてはなりません。1秒間に何枚画面を書き換えているかは、「描画スピード(フレームレート)」と言い、なめらかな動きに直接関係します。これが遅いと、操作から画面書き換えまでにタイムラグが生じ、まともに飛ばすことができません。右に操縦桿を倒したのに機体が反応しない。実は描画スピードが遅いせいなんですが、それに気づかず操作量が足りないのかとさらに操縦桿を右に倒す。機体はいきなり裏返しに入ってしまう。描画スピードが遅いとこんなコトが起こります。だからこそCPUが非力な時代には徹底してCPUパワーに気を使ったのです。ちなみにフツーのアニメーションは1秒あたり24コマ画面を書き換えています。
ソフトによっては、その角度からは見えないはずの線(たとえば山の向こう側の線)は表示されない(陰線処理といいます)ものもありました。
やがてCPUに余裕が出てくると、今度はワイヤーフレームに変わってポリゴン処理という手法が出てきました。ポリゴンになると輪郭線だけでなく、きちんと機体の表面、山の表面が描かれるようになりました。当たり前ですが、陰線処理もされています。
初期のポリゴンは計算量を少なくするために、機体や山、建物の形がきわめて単純で、今の基準からいえばリアリティがありませんでした。最近のポリゴンは凝り過ぎとも思えるほど形状を再現しており、かなりのリアリティを生んでいます。
MicroSoft Flight Simulatorは最初からポリゴンだったと書きましたが、書き込みは少な目で、見た目のリアリティはそれほどありません。
描画方式で現在最も進んだ方法はテクスチャマッピングです。これは、ポリゴンの上に、さらにテクスチャ(生地)を貼る(マッピングする)手法で、たとえば機体表面にリベットのテクスチャを貼ると、見た目のリアリティが非常に上がります。有名なのがFlight Unlimitedで、これは地面にもテクスチャを貼っており、しかも本物の航空写真を使っています。そのおかげで現実に空を飛んでいると錯覚するほどリアリティがあります。ただしこの手法、ただでさえ画面書き換えが遅いと言われているMACには少々重荷で、パワーのあるマシン(速いマシン)でないとなめらかに飛ぶことはできません。
MACでは、現在の主流はまだポリゴンです。
描画スピードは操縦性に大きく影響を与えるので、レビューでも評価の指針の一つとして取り上げています。これが速いシミュレーターほど快適に飛べると言っていいでしょう。
描画方式は見た目のリアリティを決定づけます。レビューでは描画方式にはあまりこだわらず、見た目のグラフィックがどれだけリアルか、きれいかを基準に評価しています。
視界の切り替え
飛行中、特に軍事物のシミュレーターでは、敵機を発見するために頻繁に周囲を見回す必要があります。モニタは狭いですから、通常は正面だけしか映っていません。左右や後ろ、上などを見るためにはあたりを見回す動作=視界の切り替えをしなくてはなりません。
この視界切り替えの方法にもいろいろあって、主流を占めているのは、キー入力と視界が1対1で対応している方式です。たとえば、右の矢印→を押すと、90度右を向いた視界に切り替わるわけです。シミュレーターによっては後ろ↓と右→を組み合わせると後方45度の視界に切り替わったりする、コンビネーションが使えます。
別の視界切り替えの方法に、パンニングがあります。
これは首を振るように無段階に上下左右に画面が移動していく方式です。慣れるまではちょっと戸惑いますが、死角がないので便利だということです。ずっと同じキーを押していると、360度視界(首)が回り、エクソシストのようになります(^_^)。A-10
Attack!がこの方式です。この切り替え方式もCPUパワーを喰うようです。
なるべく死角をなくそうという試みは、超迫力の3モニタも編み出しました。これはモニタを3台つないで横に並べ、中央に前方視界、左右のモニタに左右の視界が映ります。まるでワイド画面のようで、病みつきになるようです。ただし、これもCPUパワーが…。
視界切り替えの方式については、レビューでは特に触れていません。
追加シナリオ、リプレイフィルム、対戦機能
現実世界をそっくり丸ごとコンピューターの中に構築することはもちろん不可能です。飛行機に乗ってどこまでも飛んでいくことが可能かというと、そうではなく、限られた範囲の地形データが入っているのが普通です。たとえば、MicroSoft
Flight Simulatorでは北米の地形データが付属しており、この中で飛び回ることになります。
しかし、たとえば日本の空を飛びたいと思ったら、別売りの「追加シーナリー(シナリオ)」を買ってくればいいのです。
軍用ものの場合、シナリオが違うと、参加する作戦が違います。従って、地形データを買うというより、新しい作戦を買うという感覚になります。
残念ながら追加シナリオ方式を取っているフライトシミュレーターは限られています。レビューでは追加シナリオがあるものについては一言触れるようにしています。
追加シナリオが平面的に世界を広げる機能だとすると、「リプレイフィルム」は時間的に世界を広げる機能といえます。
リプレイフィルムは、その名の通り、自分の飛んだ飛行経過を記録しておき、後で繰り返し見ることができる機能です。リプレイフィルムでは機体を外部から見たり、ズームや見る角度の変更など、自由に設定できるものが多く、後で自由に自分の飛び方、景色を楽しむことができます。描き込みの美しいフライトシミュレーターでは、まるで映画やニュースのワンシーンを見るようで、好きな角度でスクリーンショットを撮り、ポスターにして楽しむ人もいます。
フィルムをファイルとして保存できるソフトでは、そのファイルを友人同士交換することもできます。うまい人の飛び方を見るのは勉強になるので、ドッグファイトの学習などに大いに役立つ機能です。
リプレイ機能はソフトによってかなり幅があり、残念ながら採用していないものもあります。どの程度のリプレイ機能なのか、レビューで触れるようにしています。
さて、ドッグファイトの話が出たところで、軍事物フライトシミュレーター最高の楽しみ方、「対戦機能」を最後に紹介します。コンピューターの操縦する機体の動きにはパターンがあり、これを撃墜することはある程度のスキルのある人なら比較的簡単です。
ところが、人間同士の戦いになると一筋縄には行きません。接近するときからすでに心理戦が始まっています。長距離から牽制のミサイルを放って、それをよけようと旋回しているスキに絶好の位置に回り込む……。
この人間同士の対戦を実現するのが対戦機能です。MACをアップルトークやEtherNetで直結するLAN接続、ARA(アップルリモートアクセス)で電話回線を通じて接続するARA接続、インターネットを通じて接続するIP接続などがあります。
接続方法の解説を始めると長くなるためレビューでは割愛していますが、対戦機能の有無については触れるようにしています。
速いマシンは良いマシン
ここまで読んでこられた方は、シミュレーターを楽しむためにはCPUパワーが必要だということにお気づきと思います。お気づきでない方にいいますが、CPUパワーが必要なんです! なんです んです ですぅぅぅぅ。結構重要なことなので、ちょっとエコーをかけて強調してみました。
シミュレーターを決めて、それからどのマシンを買うか考えるというラッキーな方には、「いっちゃん速いマシンを買いなさい」とアドバイスします。最近のシミュレーターはパワーPC(PowerMac)推奨となっていますし、中にはパワーPCオンリーという非情なソフトもあります(;_;) この傾向は現在進行形なので、パワーPCの人も油断をしていてはいけません。パワーPCでも重いソフトがあるのです。
遅いマシンをお持ちの方は、特に描画スピードが3点以下のソフトに注意しましょう。
これでレビューとフライトシミュレーターの基本的な点の解説を終わります。レビューを読んでわからない言葉があったら、またこのページを読んでみてください。