Falcon MC

■製品名:Falcon MC
■開発元:Spectrum Holobyte
■販売元:古いソフト(起動画面のクレジットやマニュアルによると恐らく1992年発売)なので、現在のスペクトラム・ホロバイト・ジャパンが発売しているかどうか不明(そういや、雑誌でどっかの代理店が今後マイクロプローズ/スペホロ製品をまとめて扱うという広告を出してたような気がする...)。購入当時の輸入元はクォリタスジャパン(パッケージに貼ってあるステッカーより)。
■購入価格:8400円(パッケージのプライスタグより)/Hyper Craft渋谷にて

●このシミュレーターについて
 空戦フライトシミュレーター草創期の名作"Falcon"のリメイク版、ならまだよかったのだが...。
 "MC"というのは"Macintosh Color"の略である。前作はまだモノクロ表示のMacしかない時代の製品だったので、それをカラー表示ができるようにしたもの、と一応はいうことができる。
 モノクロ時代のFalconは、ジェネラルダイナミクス社の戦闘機"F-16 Fighting Falcon"をかなりリアルに再現したシミュレーターとして高い評価を受けた。特に、表示される計器のひとつひとつが単なる絵ではなくちゃんと機能を果たすという点は、それまでの空戦系のゲームではほとんど見られなかったらしく、かなり話題をよんだようだ。

 徹底したリアリズム指向はマニュアルにも現れていて、機体の運動能力を示す図(フライト・エンベロープ・チャート)や速度の違いによる旋回半径の差を示す図、燃料消費率を示すチャートなどがフライトシミュレーターファンの心を揺さぶったものである(たとえ図から細かいデータを読み取るだけの知識はなくても「ここまでこだわっているのか!」という感動が確かにあった)。
 そのほかにも、空戦技術についての解説、地対空ミサイルの回避方法などが掲載され、プログラム自体にも訓練用のメニューがあるなど、かなり充実した製品だったと記憶している。
 しかし、これらのかなりの部分はFalcon MCには受け継がれなかったようである。
 Spectrum Holobyteは、当時すでにIBM PC互換機用にFalcon 3.0をリリース、大好評を博していた。そして、Mac用にも3.0を発売するというパンフレットを製品に入れていたはずである(確か、同社のカーレースゲーム"Vette!"に入っていた)。
 ところがようやく登場したMac用Falconは、まるで近年の日本車に見られる「コストダウンのためのモデルチェンジ」さながらの姿だった。ゲーム全体の構成などはモノクロ時代からほとんど変化していないうえに、マニュアルは簡素化され、肝心のフライト感覚もかなり嘘くさい製品になってしまった。


●実機について
 F-16 ファイティング・ファルコンは、高性能だが高価になりすぎたF-15 イーグル戦闘機を補佐するために開発された機体で、低価格に抑えるために「あれば望ましい」という程度の装備はすべて省き、本当に必要な装備/機能だけを採用した。とはいっても、単にカネをけちった安物ではなく、本機で採用された新技術も数多い。
 できあがった機体は空中戦用として最高レベルのものになっただけでなく、エンジン推力に余裕があったため多くの爆弾を搭載でき、地上攻撃機としても威力を発揮することになった。
 比較的安価なわりに性能が高いため米空軍以外にも多くの国で採用されているが、空中戦によし、地上攻撃によしという万能型のためかフライトシミュレーターの世界でも最も人気の高い機種といえる。
 なお、本機を開発したのはジェネラルダイナミクス社だが、すでに会社自体がロッキード社に売却されてしまっているため、現在では「ロッキードF-16 ファイティング・ファルコン」と呼ばれている。

#去年撮影した実機の写真1カットあります。ただしアングル悪し(Hornetも)

●ゲームの構成

・インスタントアクション
 離陸なしにいきなり空中戦を楽しめるモード。登場する敵機はMig-29(モノクロ時代はMig-21だった)。ときどき地対空ミサイルが飛んでくる。敵を撃墜すると少し間をおいて次が現れるので、うまくなれば延々と空中戦を続けられる。

・ミッション
 架空の戦場を舞台にした12のミッションが用意されている。おおまかに3つの段階があり、Mission 1〜4は敵の侵攻を阻止するもの、5〜8はこちらから逆に侵攻をかけるもの、9〜12は戦争の最終段階として戦略施設を破壊するもの、といちおう分けられているが、あるミッションをクリアしないと先へ進めないというわけではない。
 なお、すべてのミッションが地上攻撃を目的としている。派生的に空中戦が発生することはあるが、空中戦だけを目的としたミッションはない。


■評価

・試用マシン
 Macintosh IIci(MC68030/25MHz、キャッシュなし)
 OS:漢字Talk 7.1
 コントローラ:Gravis MouseStick2×1

註:原稿執筆にあたってPowerMacintosh 7200/90でのチェックを試みたが、16色表示モードがないので起動は不可能だった。

●グラフィック 2点
 マシンパワーが低かった時代の製品なので、現在の眼で見て物足りないのはしかたないが、モノクロ時代のFalconに色をつけた程度で、リリースされた時点で見ても抜きんでたものではなかったと思う。
 解像度は、古いMacに合わせたためか(おそらく)512×384pixelの固定。したがって現在の多くのマシンでは、デスクトップ上のウィンドウ内にコックピット画面を表示してプレイすることになる。実用上の不都合はなくても、デスクトップのごみ箱やHDアイコンが見えているのでは雰囲気が削がれる。表示は16色でテクスチャマッピングはなし。

●描画スピード 3点
 [Detail]メニューで、遠距離/中距離の地表、水平線のグラデーション、山の表示、川の表現、地表物の詳細をそれぞれにオン/オフできる。試用したマシンではオプションをすべてオンにするとワンテンポずれて画面を描き換えるような重たい感じだった。遠距離の表示や水平線グラデーションあたりをオフにすればかなり滑らかに動くようだが、それでも爆撃照準などで機体をぴたりと安定させたいような場面でふらついてうまくいかなかったりする。
 なお、画面の美しさという点では、元のレベルがたいしたことないので、いくつかオプションをオフにしたくらいではさして気にならない。

●シミュレーション度 1点
 旋回中にジョイスティックから手を放しても高度を維持したまま旋回を続けられる、巡航速度の水平飛行からスピードを上げても上昇しない、逆に下げても下降しない、高度40000フィート/マッハ2から9G近い急旋回をしないとブラックアウトしないなど、素人眼にみてもおかしなところが多すぎる。
 武器の威力を最低にしていても、バルカン砲弾が命中すると必ず敵機が爆発するのも興醒め。

●総合評価 2点
 シミュレート度が低いから操縦はそれほど難しくないが、だからといってフライトシミュレーター初心者の練習用に適しているというわけでもない。理由はコックピットからの視界が前後左右に限られるからである。斜め前や斜め後ろが見えないため、離着陸の訓練に必要となる「地上の目標」の確認がやりにくいし、空中戦では絶対に必要な「頭上を見上げる」視界もない。
 また視界が限られているのとグラフィックの貧弱さとが相まって、ミサイルを撃たれた場合の確認が難しく、回避訓練にも向いていないように思われる。
 特に、難易度オプションでTWI(敵機が発するレーダー波をチェックして敵の位置を知らせる警報装置)をノーマルに設定している場合は、ミサイル発射警報が鳴っていてもTWIになにも表示されず、敵機を発見しようと旋回しているうちに銃撃によって撃墜されてしまうといったことが多い。
 敵機として登場するMIG-29は赤外線探知装置を持っているので、レーダーを使わずに照準できる。こちらのTWIに敵が映らないというのはこの点をシミュレートしたものと考えられるが、実際にプレイしている側としては、こちらの視界が限られているだけに、一方的になぶりものにされているという感じが強く、フラストレーションが溜まる。
 なるべくリアルに(高難易度で)飛びたいという人にとっては、訓練用シミュレーターとしての価値が低いだけでなく、ゲームとしての爽快感も乏しいといわざるを得ないようだ。
 古いソフトなので店頭で見掛ける機会も少ないと思われるが、すべてのフライトシミュレータを買い揃えることを目的としたコレクター以外は、もし店頭で見掛けても悩む必要はなし。無視してよろしい。

●対応コントローラ
 Gravis社製 MouseStickおよびMouseStick2キーボードおよびマウスでも飛行可能

●リプレイ機能
 コックピットから見た光景を再現するようないわゆる「フィルムリプレイ」ではなく、BlackBoxと呼ばれる機能がついている。この機能は、敵機と自機の飛行経路を再現するもので、機体の位置関係を客観的に分析するのには役立つ。その代わり、フィルムリプレイのように、「旋回中の自機から相手がどのように見えるか」といったことは判らない。
 なにはともあれ、モノクロ時代のFalconから受け継いだ数少ない美点のひとつ。

●対戦機能
 AppleTalk、モデム、ケーブル直結の3種による1対1の対戦ができるが、実際に対戦したことがないので詳細は不明。武装は選択できるようだが、ミッションのような状況設定はないようだ。

この項、Gizmo。

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