警察は最後まで両親にA少年逮捕を告げなかった

警察は最後まで両親にA少年逮捕を告げなかった

『「少年A」この子を生んで……』を読んで  A少年が逮捕されて以降,俺様の心の片隅には,この少年の両親は,息子の無実を 信じていないのだろうか? 何故,自分たち一家を敵対視するマスコミに向かって, 抗議もせず,姿も見せないのか疑問に感じていた.                 マスコミの執拗な報道に,否応なく息子が犯人なのだと信じざるを得なくなって, 沈黙せざるを得なくなったのか? 然し,当時の報道では,何が何でも強引に息子を かばう親馬鹿な母親のエピソードが語られていた.                 有田芳生などは,自分が,この母親を以前から知っていたかのように『これはもう 有名な話で…』などと,テレビ番組の中で,この母親を非難していたが,もし本当に 言われるような母親なら沈黙を守るのも不思議だ.                 それこそ,その馬鹿な母親は,なりふり構わず,息子の無実を訴える行動に出て, マスコミ報道を裏付ける,自ら墓穴を掘る一面があってもおかしくはなかった筈だ. 然し,親と子が隔離された82日間の謎が残される.                 最近,『「少年A」この子を生んで……』(文藝春秋刊)を読んだ.やはり両親は 自分の息子の無実を信じていた.もし息子と面会したおりに,それを訴えられたなら いかに世間からののしられようと戦い抜いたと….                 だが,A少年は全所帯に行われると噂された一般的な事情聴取かと思われる様子で 連行され,それに平行して何も知らされぬまま母親は別の署で事情聴取され,父親も 自宅で目的も明かされない事情聴取を受けていた.                 夕刻近くなって母親も帰宅したが,一般的な雑談程度だったと話す.とても自分の 息子に何らの容疑が掛かっているとは思えなかった….更に,何も理由を聞かずにと 他の息子を親類に隔離させ全ての窓を閉めさせた.                 その直後,唐突に家宅捜索が始まった.一体,誰に何の容疑が掛かっているのか? それに合わせて,外が騒がしくなるが,様子は分からない.テレビでは容疑者逮捕の テロップが流れる.父親は初めて事情を知った….                 両親は,最初からA少年が容疑者として事情を聞かれる前提を全く知らされない. テレビのニュースで初めて自分の息子が容疑者になったと知った.テレビの視聴者と 全く同じ時間帯である.非常に異常な展開である.                 然し,外見的には,早々と少年の弟は家を離れて隔離され,窓は完璧に閉ざされ, 明らかに事前に息子が容疑者として逮捕されたために,逸早く取られた家族の素早い 対応の様相に見える.警察が実にうまく仕組んだ.                 警察は,少年を事実上,連行するのに,両親に明確な理由を一切明かさずに裏側で 巧みに重大犯罪者の出た家の様相を作り上げた….家の周辺をマスコミに囲まれて, 何が起きたかといぶかる中,テレビで事態を知る.                 マスコミが,犯人と決め付けて周囲を囲んでから,初めて自分の息子が犯人として 逮捕されたことを知らされる.目の前にいる警察官からではなくテレビからである. これではパニックに陥り,抗弁のしようすらない.                 朝から,警察が出入りしているにも拘わらず,A少年が容疑者であることを,全く 一言も知らせず,事態はマスコミに発表され,令状に基づく家宅捜索が開始された. 誠に異常な形態で,一家は世間の批判に晒された.                 マスコミの取材攻勢から一家を守るためとの口実はもっともらしいのだが,それは マスコミとの接触が分断された意味を同時に持っていた.自分の家を拠点に,誰にも 迷惑を掛けずマスコミと対峙するゆとりも消える.                 然し,当時の状況では,警察が一家を誘導して家を離れた状況は分からなかった. マスコミの取材攻勢に耐えきれなくなって,自らの意思で家を離れて身を隠した…. 自然にそう思えた.警察の思う壺でもあったのだ.                 家の中では,瞬く間に押収品が段ボールに詰められ,父親は,それを指さすように 指示される.それが次々に写真に撮られる….果たして,指差したところを撮られる 写真は何の証拠になるのか? 常々疑問に思う….                 ここで疑問なのは,鑑定も済んでいない筈のガラスの器に入った物質が示されて, 『猫の舌だ』と警察が父親に説明したという.更には,犯行ノートとされるものが, バラバラとめくられ,警官に「これ」と示された.                 例えば,ノート一冊が単体で示されて,わざわざ父親に示される.普通は,無数の 段ボールの中の一つになってしまうのではないのか? 然も,そこで示されたものが 後日,マスコミの報道で詳細に報道されて行く….                 これを読んで,ふと,なぜ『犯行ノート』なのかという疑問が湧いて来る.内容は 犯行というより,聖なる儀式に通じるもので,例えば『実験ノート』的なタイトルが 想定されてくる.内容とタイトルが合わないのだ.                 然も,両親は,その内容の一部を記憶しており,それが詳細に報道されることで, 両親をして,息子が犯人なのだと信じ込ませる心理作戦にも繋がる.然し,両親は, 息子が犯人とは思えず,息子に確認したいとした.                 然し,警察側は,マスコミがうるさい,当人が会いたがっていないなどの理由で, 面会を拒絶してきた.両親は,息子に事実の確認が取れないまま,疑心暗鬼になる. 警察は両親に被害者への謝罪を考えた方がという.                 然もこの時,警察は『この事件に関して誤認逮捕ということは絶対にありません』 このように強調して,両親に息子が犯人であると認識したことを発表させたがった? 然し,両親は,息子に確認するまではと保留する.                 両親が,自分の息子が犯人だと確信するのは,数ヶ月後….何度か息子に会って, 全く親である自分の方を見ようとしない態度の中に,漠然と,息子が犯人なのだと, 思い込むようになる.明確な心当たりは何もない.                 そんなA少年の態度から,俺様は次の想像をする.警察は,うまくA少年を騙して この事件の犯人は,実は,お前の親だと吹き込んだ.父親が,巧みに催眠を掛けて, お前に犯行声明を書かせた.筆跡が一致している.                 然し,両親を逮捕しては,二人の弟の生活が成り立たなくなる.ここは一つお前が 一家の犠牲になって,犯人として身代わりになって救ったらどうなんだ? ここで, A少年は,様子を見に来ない両親に不信感を抱く.                 最初に会った時に,両親に罵声を浴びせるA少年….自分を犯人に仕立てて平然と 自分の前に現れた….身代わりになっている自分の苦しみを考えようともしない…. その後,警察に少しなだめられて,態度が軟化…?                 A少年は,身代わりとして少年院送りになる決意をしたものの,両親を正面からは みることが出来ない….両親は,A少年に後ろ暗いところがあるから…と判断した? 然し,A少年は,平然としている両親が許せない?                 和歌山で起きたの毒入りカレー事件は,容疑者とされた夫婦がマスコミに,延々と 逮捕当日まで晒され続けたが,夫婦は,それなりにマスコミとの交流を計っていた. 神戸の事件がもしあのようであったとしたなら….                 マスコミの前に姿を現さない両親は,それだけで世間に悪いイメージを与えた…. 親も息子がやったという心当たりがあったからこそ,身を隠したに違いないんだ…と 俺様の周辺からもそんな憶測が聞かれた位である.                 然し,先のように,警察とマスコミに取り囲まれるまで,両親は何も知らされず, 家宅捜索が始まってから,初めて自分の息子が容疑者として逮捕されたと知った…. その時には,あたかも逃げ隠れする一家であった.                 両親は,息子に事実を確認するまで冷静に態度を保留した.何度も息子との面談を 申し込んだが断られ続けていた.最初の理由は,マスコミの取材攻勢だったが,次に 息子が会いたがっていないという理由が加わった.                 ずっと後になって面会の希望があれば取り計らうと警察が申し出たと言う.両親は 当人が自分から会いたがるまでは…と態度を保留したという.両親は,A少年が言う 『僕はやっていないっ!』の言葉を待っていた…?                 逮捕後,少年が二ヶ月以上も両親に会えない事態を,何も問題にしないマスコミの 感覚というのもおかしなものである.逮捕後,すぐにA少年が両親に面会出来ては, 冤罪作りが出来ない警察側の事情があったと思う.                 両親は,自分たちが警察に話したことが,いつの間にかマスコミで流されることに 強い不審と戸惑いを覚えたという.この本が出版されたことをマスコミが取り上げて 話題にもなったが,この異常事態は伝えられない.                 我が妻は,SONYのICF−M800Vなる古い3バンドラジオを抱えながら, 家事で家の中を移動しながら,テレビのサッチー騒動にずっと聞き耳を立てている. 図らずも,ここでマスコミの体質が表に出てきた.                 早い話,局側の方針に逆らって行動した者は,即座に番組から降ろされてしまう. 渡部絵美がサッチーの悪口を言ったことで番組を降ろされてしまった? その番組に 未だにサッチーは出演している.一局だけが擁護?                 新聞で確認するとTBSの『快傑熟女』という番組だ.ここの出演者はサッチーと 仕事をしているのに,一切,サッチーについては語らない.渡部絵美を除いては…. 彼女のように番組を降ろされたくはないのだろう.                 考えてみれば,テレビの出演者なんて,掃いて捨てるほどいる.局の方針に従順で 一切,逆らわない人間だけが生き残れる仕組みのようだ.局や番組の方針で,叩くと 決まれば,擁護する人間は出演出来ない仕組みか?                 否応なく耳に入る音声に,忘れられたようなタレントがサッチー叩きに登場する. 古い話を蒸し返させて新たな被害者を次々に生み出している.然し,人気は叩かれて 維持される側面もあり,全部がサッチーの味方か?                 いつでも叩ける生贄を用意して,暇つぶしにこれを叩いて喜ぶのが,テレビ番組の 一つの体質でもある.確かこの前までは,松方弘樹が離婚騒動で叩かれていた筈だ. 隠れた日本の危機など,まるで扱わぬ幸福大国だ.                 真理を追究する姿勢のかけらもない,テレビを中心にしたマスコミが作る流行には 距離を置いて接する俺様である.然し,世間はテレビを間違いない教科書と崇める. サッチーファンだった妻も,今は逆に憎んでいる.                 一体,いつからマスコミは,人を裁く権力を持ったのだろうか? 真理を追究する 姿勢のないマスコミが人を裁けば,取り返しのつかない過ちを犯す.一人の少年と, 一人の青年が完璧な異常犯罪者にされてしまった.                 マスコミによって育てられて開いた毒々しい花が,今度は見苦しいからと,これを 枯らそうとする….虚構の上に作られる砂上の楼閣の必然的な宿命の実体が見える. 無責任なお祭り騒ぎに,人は群れたがるものか…?                 不幸にして,マスコミの餌食になった人間には,もはや取るべき対抗手段はない. マスコミが訴えられて,例えば敗訴したとしても報道されなければそれまでである. 自分たちに不利なことは扱わないのがマスコミだ.                 この世を地獄だと考えてしまえば,正義を考える必要もない.石が流れて木の葉が 沈む世界なのだとすれば,冤罪も当然だし,マスコミの馬鹿騒ぎも,頭の悪い閻魔の お祭り裁判だと思える.冤罪で死ねば天国行きだ?                 おりしも1999年7の月である.ノストラダムスの予言が話題になるのは日本だけと 伝えた英文の記事もあった…? それだけここは他の心配事が見えない幸せな国で, 愚かな教団は予言を自らの手で実現しようとする?                 いずれは死んで去るこの世に,宗教の教義で自らの王国を築こうとする….何とも 奇妙な話だが,彼らは,地獄の中に楽園を建設しようとする.所詮,この世は永遠に 未完成な世界なのである.目覚めぬ教団ではある.                 この世を修行の場と考えるなら,この世での地位は最低レベルでいい.高い地位は 修行の妨げである.テレビ番組のレギュラー出演者となれば,その地位を守ろうと, 本音も語れぬ操り人形になる.真理は何も現れぬ.                 正常な感覚を持った作家なら,神戸小学生首斬り事件の真犯人が中学生だなどと, 頭から信じる前に,キッチリ事実関係を明らかにしようとする筈だ.然し,出版社に 飼われた哀れな身の上では,自らの考えは書けぬ.                 何しろ,出版社自体が冤罪に加担しているのだ.飼っている物書きを総動員して, A少年裁きのお祭り騒ぎを展開した.同じパターンで,様々な対象が槍玉に上がって 庶民に人を叩く快感を植え続けて真似をさせる….                 いじめの元凶は,マスコミが作り出しているとも言える.大きな者が小さな存在を 徹底していたぶる.組織の方針に逆らうと消されてしまう.サッチー叩きの番組は, 出演者の全てが叩きに加担する.反逆は許されぬ.                 一事が万事このように進行する.ひと頃騒がれた子供の世界で起きたいじめと全く パターンは同じである.テレビでは,連日,いじめと同じバターンで,標的にされた 人間を徹底して叩く.彼らはそれを正義だという.                 神戸小学生首斬り事件も宮崎勤事件も,それを裁いたのは真と偽の違いの分からぬ 未熟なマスコミである.彼ら自身,自分の無能力に全く気づいていない.これからも 数限りない犠牲者が生まれるのは目に見えている.                『「少年A」この子を生んで……』を読んだ著名人の数は,相当な数に上るだろう. 然し,両親がA少年が逮捕されたと聞かされたのは,目前に居た警官ではなく,何と テレビの報道だった異常事態を誰も問題にしない.                 もっとも,事件に疑惑ありとマスコミで言える者は一人もいない.それとも,全く それが異常事態だとは思わないのだろうか? 逃げ隠れするパターンを予め設定され 仕組まれたことに何の疑問も感じないのだろうか?                 日中,両親共,別々ながら長い時間,警察との取りとめもない会話をさせられて, ある程度の親近感を持たされる.マスコミに囲まれ,理由も明かされない家宅捜索が 始まる.これで事態を知って即座の反撃は無理だ.                 突然,マスコミという暴徒に追われて,警察が逃げ道を用意すれば従うしかない. 見知らぬ警察が来て突然息子が逮捕されるなら,その場で息子に問い質しも出来る. 警察は,A少年を人質にして対抗手段を絶った….                 もしマスコミが単なる暴徒ではなく理性ある報道機関だと言うなら,原点に戻って 自らが鮮明な血痕の映像と共に,現場の様子を映した事件を再検証するべきである. すっかり洗い流した血痕が,何故そこにあるのだ.                 年端も行かぬ少年が,突然,思いもよらぬ殺人の容疑で逮捕される事態に,両親が 82日間,全く事実の確認をする面会すら出来なかった.これが公正な取調べなのか? マスコミは,そんな親と子を徹底して叩いたのだ. ** 悪魔 **       ・目次に戻る